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低Naの補正予測式 (Edelmanの式)

循環血漿量が減少している低Na血症で、等張生理食塩水でも予測式よりNaが改善するのはなぜ?

研修医の先生に表題のような質問をいただきました。
低Na血症は最も頻度の高い電解質異常であり、内科医なら一度は頭を悩ませたことがあるでしょう。

重症度や症状に応じて、緊急治療の適応があれば3%生理食塩水 (3%NaCl, 513 mEq/L) などの高張生理食塩水を投与し、病態によっては等張生理食塩水 (0.9%NaCl, 154 mEq/L)を投与することがあります。

生食投与後にどれくらいNaが改善するか?臨床医としては正確に予測したいですが、有名な予測式として Edelmanの式があります。

$$
\Delta[Na]_{血清} \; (1L投与毎) = \frac {([Na]+[K])_{輸液}-[Na]_{血清}}{TBW+1} 
$$

TBW = Total body water
男性なら体重*0.6, 女性なら体重*0.5 (高齢者なら男性 体重*0.5, 女性 体重*0.45)

pocket manualより
例えばNa濃度 110 mEq/Lで 70kgの男性の場合
3% NaCl 1L投与すると Na 9.4 mEq/L改善する計算
0.9% NaCl 1L投与すると Na 1 mEq/L改善する計算

となります。この通りに行かないことが多いので実際にはこまめにNaをフォローするわけですが、この式において0.9%NaCl であてはめると1L投与してもせいぜい 1 mEq/L程度の改善に過ぎないです。

しかし、研修医の先生が見た症例では 0.9%NaCl 1000ml投与後に Na が 6mEq/L改善していました。これはなぜでしょう?

式をみると補正に用いた輸液以外のIN/OUTの成分が入っておらず、これらを無視していることがわかります。
実際に同じ輸液を投与していても尿中Na排泄が多いか少ないかでNaの変化具合は変わりますよね。

また、この式はvolume statusも考慮できていません。循環血漿量が減少していると、有効循環血漿量を増やすためにADH分泌が亢進します。しかし、循環血漿量が改善するとADH分泌が抑制されて希釈尿が流出します。

研修医の先生が見た症例は循環血漿量が減少している症例だったので、0.9%NaClの投与で循環血漿量が改善したことにより、予測式よりも改善が見られたのだと考えられました。



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