「だけ」
「先輩、怒らないで聞いてくださいね」
「スノボって、足に板ををはめて上から下に行って、何が面白いんですか?」
忘れもしない、この質問。
私はこの無神経な質問をした者だ。大学4年生のとき、研究室のひとつ上の先輩が、中古でたっかいスノーボードを購入したと言うので、疑問に思ったのだ。
「じゃあ俺も聞くね」
「酸素ボンベつけて海の中見るのの何が面白いの?」
スキューバダイビングのためにアルバイトをしていた私にとって、この答えは衝撃だった。傷ついた。気づかなかった。恥ずかしかった。人間はすぐ自分のことをすぐ棚にあげ、盲目になってしまうのだと大いに反省した思い出。
あの日から私は、人の夢中になることに何も言わないようにした。
あんまりに理解できない時は、ちょっとだけかじってみるようにした。ゴルフとか、ダーツとか、サウナとか。やっぱり好きになれないんだけど、自分と異なる部分がある人ほど好きになった。
「だけ」の世界。
服も誰かにとっては「着るだけ」
車も誰かにとっては「乗るだけ」
旅行も誰かにとっては「行くだけ」「見るだけ」
でも大好きな人にとっては
その「だけ」が愛しくてたまらない
自分の「だけ」を
気の済むまで
みなさま、良き週末を。
励みになります。