白鳥修平

社会科学(広領域の、経済学、社会学、政治学)の独立研究者。書評者、読書家。経済学博士。…

白鳥修平

社会科学(広領域の、経済学、社会学、政治学)の独立研究者。書評者、読書家。経済学博士。趣味は「夕日眺めながら山頂読書」「行き先・ルートを決めないウオーキング・旅行」、登山、書道、数学難問解法探求、clubhouse聴き専。座右の銘「人生の本舞台は常に将来に在り」(尾崎行雄)

最近の記事

「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.13

付加価値生産高の総需要決定マクロ・モデルに基づいて、加速的インフレーションを分析した論考は古くから存在する。加速的インフレーションが定常インフレ率に収束するかどうかの安定性が、この分析の中でとりわけ重要な論点である。市場均衡が常に成立していても、長期の安定性は、一般的には保証されない。それを成立させる条件は、マクロ貨幣需要関数の性質(関数形)に依存している。  上記の初等経済学的分析では、現金・預金と証券の経済的関係は考慮されていない。この関係を考慮したモデルと分析が初等

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    • 「物価と名目賃金の循環構造」no.29

      実質賃金率と在庫ストックが生産と雇用の決定に影響する「加速的インフレマクロ経済モデル」を整合的に構築し、インフレ過程の短期的、安定性・不安定性を分析する。そのためには、財市場の不均衡調整変数が実質賃金率であるというケインズ的仮定を放棄しなければならない。財市場の不均衡を調整する変数は在庫ストックの変化である。実質賃金率と同様に在庫ストックの保有も、企業の生産にとってはコストであることは明白である。今日、海外生産と国内生産をフレキシブルに代替させているグローバル企業にとっ

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      • 「2024年4月桜」no.2 (吉野山)

         2024年4月4日、雨上がりの早朝、筆者は近鉄南大阪線で奈良県の吉野に向かった。近鉄南大阪線の出発点、大阪阿部野橋駅から、急行に揺られ揺られて、やっと吉野駅に到着した。もう、9時20分を過ぎていた。  吉野山に登る最初の山路は、商店街のような出店のオンパレードであった。元気な店員さんの呼び込みの声にうながされ、よもぎ饅頭やくずもちを食べながらの行程であった。  周知のように、吉野は、下千本、中千本、上千本、奥千本、を経て吉野山頂上に向かう。下千本から中千本辺りまで、にぎや

        • 「2024年4月桜」no1.

           兵庫県西宮市、北山貯水池、北山緑化植物園、辺りに咲き誇るさくらを紹介し、夙川を下る。定点観察を続けているが、年ごとに、変貌をとげているように思う。さくらにも気候変動の影響が明らかに表れている。温暖化が進むと、同じ地点でも一気に開花しないそうだ。それでもやはり、美しいと感じる。         もう、葉桜のようだ。   少し、ピンクがかって、よく手入れが行き届いている。この貯水池の花は桜に限らず、とても綺麗で楽しませてくれる。  貯水池から、山路を通って、北山緑化植物園

        「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.13

          「物価と名目賃金の循環構造」no.27

           総需要が生産量を決定するというケインジアン・マクロ経済モデルで、労働分配率が定常値に収束するかどうかを分析してきた。ケインジアン・モデルは、この連載記事no.15で、短期新古典派モデルは、no.16で取り上げて分析してきた。いずれも条件付きであった。それが、安定条件でその経済的意味が重要である。二つのモデルとも、あくまで筆者のオリジナルな構成であり、一般にケインジアン、新古典派と認められたものではない。  総需要決定モデルは、容易に実質賃金率、労働生産性を内生変数として組み

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.27

          「物価と名目賃金の循環構造」no.28

           2024年3月19日、日本銀行はマイナス金利付き異次元量的金融緩和の新金融政策を転換した。YCCも廃止した。金融政策の正常化に向けて歩みだした。その理由は、2013年初頭の政府・日銀共同の政策目標である2%のインフレ目標を安定的かつ持続的に達成することへの確信を深めたことである。すなわち、政策転換の条件が整ったと判断したということであろう。特に、物価と名目賃金率の上昇の好循環の実現をその条件としていた(隠れた潜在的条件は、株式市場の安定的上昇であったと思う。その証拠にETF

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.28

          「物価と名目賃金の循環構造」no.26

           金融的要因を与えれば、総需要が実質所得(生産量)を決定するというマクロ経済モデルは、ケインズ経済学のテキスト・モデルの中心にある。ケインズの古典的モデルが総需要=総供給・モデルによる実質賃金率と雇用決定のモデルであったことを考えれば、この総需要決定モデルは、ケインズ・モデルの需要サイドだけでマクロ経済を分析しようとしているのか、それとも実質賃金率が硬直的であるモデルのいずれかである。そこで、この後者の実質賃金率の短期的硬直モデルはどのように発展させるべきなのか、という問題

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.26

          「物価と名目賃金の循環構造」no.25

          物価上昇と名目賃金率上昇の好循環モデルを、総需要による生産量(=実質所得)決定モデルで分析できることを示すことは、この問題対する基本的な問題の中の一部にしか過ぎない。総需要決定モデルは、同時に雇用決定モデルでもある。総需要・総供給モデルが模索されてから久しい。短期および中期の政策の面からは、インフレ抑制政策もデフレを阻止することを目的としたリフレ政策もいずれも、総需要サイドへの作用を通じて政策目標を達成することを目指している。依然として供給サイドへの影響はブラックボック

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.25

          「金融財政政策雑感」no.24

           マンデル=フレミング・モデル(以下、MF・モデル)が仮定するように、内外債券収益率が瞬時に均等化すると仮定する。自由な資本移動と内外債券の完全代替が仮定される。この条件で、外国利子率が外生変数で、短期的に自国通貨建て予想名目為替相場が与えられれば、自国利子率が名目為替相場を決定する。MF・モデルは、この名目為替相場決定理論を、標準的なIS/LM・モデルに接合する。自国利子率を決定する分析装置は伝統的なLM曲線が使われて、モデルは所得、利子率、為替相場の同時決定モデルとなる

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          「金融財政政策雑感」no.24

          「金融財政政策雑感」no.23

          インフレ目標付き名目利子率誘導金融政策と財政政策の有効性を加速的インフレーションマクロ経済モデルで比較検討する。これまで、物価変動なしの最も単純なモデルで、この課題を分析して基本的な政策命題を提起したのは、マンデル=フレミングであった。その拡張、修正は歴史的に数多く試みられてきたけれども、依然として重要なことは、その淵源に潜む基本的な矛盾や非整合性であることは言うまでもない。単純なモデルだからといって、そのことを黙視することは非科学的な態度である。内生変数決定における矛

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          「金融財政政策雑感」no.23

          「物価と名目賃金の循環構造」no.24

           筆者は、これまで、開放マクロ経済分析のキー変数である名目為替相場について、データ・ベースを反映した定式化を重要な構成要素として分析してきた。名目為替相場変化率と内外金利(格)差との間には、相関があることは言うまでもないが、現実データ的には、タイムラグが存在する。それを無視し、同時決定の直接的影響を仮定してきた。その難点を回避し、理論的に興味ある論点は、内外金利差によって予想名目為替相場変化率が影響を受けるという定式化である。これまで、予想は為替相場についても適応的仮説を仮定

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.24

          「物価と名目賃金の循環構造」no.23

           数回に渡って需要決定マクロ経済モデルにおいて、インフレ率が定常値に収束する定常均衡の不安定性について分析してきた。定常均衡とは、実質為替相場が定常値に収束し、予想インフレ率が実現インフレ率に収束する状態と定義される。不安定であれば、加速的インフレーションが際限なく進行する。それを止めるために、総需要抑制政策を金融財政政策手段による引き締め政策で実施することが必要となる。  このようなモデルでは短期的には財市場の均衡が仮定されるが、市場は一般的には、短期でこそ不均衡の調整過

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.23

          「陋巷に立つ」歌集no.4

            筆者は陋巷と殷賑が混ざり合った街が好きだ。今回もそれにまつわる短歌八首を、その歌づくりのエピソードを交えて紹介することにする。考えひねくり回した歌は佳編とはなりえない。一気にリズミカルに出た歌が秀逸である。それは、J-Popと同じである。日本人には、どうも、五七五七七の31文字の韻律が深く刻み込まれているみたいだ。思いを率直に流れ出るような歌が良い。  分かりやすい歌だねと、ある知り合いの俳人から、馬鹿にしたような感想も聴いたことがあるが、それでもなおだ。難解な歌であるか

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          「陋巷に立つ」歌集no.4

          「物価と名目賃金の循環構造」no.22

           マンデル=フレミング・モデル(以下、MF・モデル)も、実質生産量の総需要決定モデルであると、筆者は考えている。この規定自体が、大きな論争に晒されているが、筆者の捉え方は、後述するが、こうである。  これまで、数回に渡って、総需要決定モデルで加速的インフレの不安定性について分析してきた。その最後を飾って、MF・モデルで、この課題を検討する。それは、いまだに、このモデルと分析結果が、政策論争の一方の陣営で確固とした地位を保っているからである。金融政策の財政政策に対する優位性、政

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.22

          「物価と名目賃金の循環構造」no.21

           金融政策が名目利子率を誘導し、その結果、市場名目利子率も政策の影響を受けて決定されるとするのが、テイラー・ルールである。需要決定マクロ・モデルで、LM曲線の代わりに、このテイラー・ルールを接合して、構成するという考え方が存在する。もちろん、テイラー・ルールが決定する利子率と市場利子率は本来異なるが、このルールで金融政策を運営する場合、究極的には、テイラー・ルールが決定する名目利子率に市場名目利子率が一致するとすれば、この新しく構成されたモデルで、加速的インフレ経済の安定性が

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.21

          「物価と名目賃金の循環構造」no.20-3

           インフレ抑制政策の中心は、総需要抑制政策である。そして、その中心的政策が金融引き締め政策である。インフレ予想を考慮して、開放マクロ経済の定常均衡の安定性について分析する。この場合は、名目為替相場の変動に内外金利格差のみが直接影響を及ぼす場合、貿易収支のみが直接影響を及ぼす場合、いずれも一般的には不安定である。  これまで、中央銀行は予想インフレ率がマイナスか低く、その影響が現実のインフレ率に十分に反映しないデフレの特徴に困難性を感じてきたが、インフレ経済構造が定着し、予想イ

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.20-3