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清澄白河カフェのキッチンから見る風景 : 人格形成

自分の生年が1960年(昭和35年)であるということが、自分の人格形成に大きな影響があったということを、あらためて認識させられております。今自分がGINGER.TOKYOというハコをつくってやっていることは、明らかに時代の要請などではなくて、自己実現の延長、パーソナル・ブランディングそのものなんです。ということは、自分という人格が形成された時代の情報発信をしていることが自己実現であり、自分自身を見つめ直す機会でもあるわけです。結果的に日々楽しく過ごしておりまして、ストレスの多い時代と言われる現代において、生きづらさを感じないでいられる、あまりメジャーではない方策の一つなのかと思うわけです。

音楽好きではありますから、とりわけレコード関連の情報ばかり発信しておりますが、もちろんそれは我が人格の一部を成すもので、生きてきた時代がそうさせているとも思うわけです。若い頃にインプットしたもので形成された人格は簡単には変われるものではありません。

昨今、生き方や働き方という部分で自分がやっていることを面白がってくださる方が増えており、そのこともあって、自分自身を見つめ直すことを繰り返すはめになっております。音楽以外には本好き、クルマ好き、猫好きといった程度ですが、猫好きは最近のことですから、本好き、クルマ好きの部分が気になります。

本は多読派で、とにかく文字情報が好きです。村上春樹や本屋大賞にノミネートされてくる作家さんの小説は大抵好きです。気分屋なので特定の作家さんに拘る傾向は薄く、小説もエッセイも雑誌も含め、文字情報は何でもオーケーです。何度も書いておりますが、20歳30歳40歳50歳51歳52歳の年に年間365冊読破を達成しております。52歳は400冊超えでした。前職で若手職員の希望者を集めて勉強会のようなことをしておりましたから、50〜52歳の時分は加速してしまいました。

クルマはヨーロッパ車を中心に、小型の楽しいクルマが好きでした。ルノー5、旧型ミニ、シトロエンAX、新型ミニなどなど、現在は旧型プジョー208といったあたりです。時々狂って、マツダ・ロードスターやプジョーRCZのようなものにも乗りましたけどね。

何でそういう趣味になったかというあたりが、実は今回書きたかったことの中心です。自分自身の生まれた頃は戦後の高度経済成長期ですが、多感な十代がまんま1970年代となるわけで、成人になる頃はジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた時代なんです。雑誌等で物欲を煽られながら育ち、成人になる頃は「世界一の経済大国だ、ホレ、買え、買え」と消費意欲を刺激されたわけです。まさか自分自身がそんなに早く自分のクルマを買うことになるとは、十代のときには思いもしませんでしたが、大学に入った頃(自分は頭が悪かったことに加え、具合が悪かったこともあり、21~25歳が大学生です)には現実味を帯びてきました。しかも当時でも珍しい、飯付きガソリン付き時給1万円という家庭教師のバイトに就いてからは、可処分所得が一気に増え、大学生がクルマに乗るのは当たり前という思考にならざるを得ませんでした。実際同級生の半分以上はクルマを持っていました。そういう時代だったんです。今の若い方たちにはご理解いただけないでしょうが、…明らかにバブルですね。

さて、そこで参考にしたのが、カー・グラフィック(CG)という雑誌でした。文化を感じさせる記事に加え、文字が多いことやデータ重視という部分が自分の好みでした。そしてまず購入したのが、三菱コルディアGTです。これは叔父が三菱の社員で、無利子ローンが使えたことで、トータル30万円ほどお安く買えたからでした。あえてミラージュに行かず、コルディアにしていたのは、他人様とは違うものを選ぶ性格が既に出ております。シフトレバーが2本ある2×4=8速というヘンな機構にも憧れました。兄貴が最初に買った中古の日産サニーが事故車であることを告知されておらず問題になりまして、最初がそれだったもので、我が家では新車がよろしいのではという家風がありました。

それでも趣味は「中古でいいからヨーロッパ車に乗ってみたい」という方向に行くわけで、CGの古本を買い漁って、研究しておりました。そして運命的な出会い、ヘッダー写真のCG1980年4月号を手にしてしまったのです。心を奪われたのは「ヨーロッパの小型ファミリーカー 最も安いクラスの輸入外国車を集めて」という特集記事でした。5車種の乗り比べです。この中に気になる3台が含まれていたもので、もう隅から隅まで、繰り返し読みましたよ、ホント。40年近く経った今でも、この記事を憶えているわけですからね…。3車種とはVWゴルフ、ルノー5、フィアット・リトモです。フィアットは本当はX1-9が気になっていたのですが、ルノー5が本命でリトモも気になりだしていましたから、もう自分のためにあるような記事でした。

ただし、世の中は好景気真っただ中、バブリーな時代でした。トヨタ・ソアラなどの高級車がどんどん出てくる中、ターボだ、ツインカムだと謳い、ボーイズ・レーサーと言われる小型でハイパワーな危ないクルマも流行っておりました。…かっとびスターレットとか、三菱・ミラージュ・サイボーグとか、ホンダ・シティ・ブルドッグとか、ドーピングしたような車種もありましたよね。その一方で、ベーシックな赤いファミリアが大流行し、ホンダ・シティのスノッブな世界観にも憧れたものです。この辺は完全なアンチ・バブルです。

自分の場合は、こんな時代だから安い輸入車を下駄グルマにしようという思考です。結果として、次に購入したのは新型のルノー5、シュペール・サンクと呼ばれたものでしたが、まあボロくて、ボロくて、この上なく楽しいクルマでした。そんなわけで、自分のライフ・ステージと時代の有り様がうまく噛み合い、音楽好きで本好きでクルマ好きなヤローが出来上がるわけです。

結局、現在に至るまで、この感覚を引きずっておりまして、クルマは小さいものがよし、文字の多い雑誌がメインの情報源、信頼できる情報源を持つことがイチバンといった感覚です。…もちろん、年間365冊のウチにはCG12冊も含まれております。一日で読み終わる雑誌ではありませんでしたけどね。しかも広告や中古車情報とかが面白くて、随分楽しませていただきました。学びの多い雑誌でしたねぇ。アウトプットしまくり人間は、当然ながらそれなりにインプットもしてきましたよというわけです。学校の勉強だけが人格形成に資するインプットじゃありませんぜ。おそらく年齢が行ってからは、その他のインプットがもの言う気もします。…楽しい老後のためにも、趣味は大事です。


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