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清澄白河カフェのキッチンから見る風景 : カフェ遊び

純喫茶の歴史などを調べると、明治の頃からカフェ遊び的なものは盛んにおこなわれていたわけで、そこに蓄音器~電蓄やら、ライヴ演奏やらも絡んでくるわけで、音楽の楽しみ方にまで影響していたりします。またドゥ・マゴよろしく、文豪等が集まるカフェ―で展開された交流ネタも数多あり、いろいろ面白い遊び方が昔からあったわけですね。単なる飲食店で食事を楽しむというだけにとどまらないから面白いとも思いますが、様々工夫を凝らした店があったということなのでしょう。

ジンジャーは本とレコードという、実にオーソドックスな遊び道具がギッシリ詰まったおもちゃ箱みたいな店ですが、リラックスして楽しめない方々もいらっしゃったりするので、ちょいと心配になってしまいます。オーナーの顔が怖いからですかねぇ?カフェ遊びには慣れが必要なんですかね。

若いカップルで、カフェ遊びに慣れているか否かは結構大きな問題という気もします。清澄白河界隈はパブリック・スペースやショッピングモール的なものが少ない…というか無いので、おトイレ需要というものもありまして、その辺の事情に精通していると、余裕を持ってカフェなどを活用して用を足すことができます。どこに清潔なトイレがあるかは、モテ男くんの必携情報の一つです。お席に着くなり、腹立たし気にトイレに駆け込む彼女はちょいと気の毒だったりします。

先般好対照なカップルがご来店くださいまして、まあ彼氏はどちらもあまりカフェ遊びに慣れていない風なんです。それを微笑ましく見ている彼女と、呆れ顔で見ている彼女がおりまして、お二人の将来がどうなるかは一目瞭然でしたが、カフェのキッチンから眺めていると、案外その辺がよく見えてしまいます。

好対照の老夫婦という場合もあります。お会計で手惑うのはよくあることです。昨今いきなり決済手段が増えましたし、仕方がありません。こちらも観察するとまでは申しませんが、少し客観的に見る余裕を持つようにしております。現金以外の決済をやってみたいダンナさんと冷ややかに横目で見ている奥さんはよくいらっしゃいますね。「PayPayで」とおっしゃって、QRコードをスキャンした後に残高不足だったりした場合に、恥ずかしくて堪らないという顔をしている奥さん、もう少し心の余裕を持ちましょうよ。一方で慌てているダンナさんに「ほーら、無理するから」と笑いながらお財布を出してくる奥さん、あなたは素敵です。また、現金でのお支払いで金額が足りなかったりしたときに、「やだね~、ボケたふりして」などと笑いながら楽しそうにしていらしたご夫婦は、心から羨ましいなと思いました。

カフェ遊びって、たかだかコーヒーを飲んだり、お食事したりしながら、ちょいと会話を楽しんだり、本やレコードなど趣味的なアイテムで豊な時間を過ごしたりするだけですよ…。ところが、意外にスマートにできるか、できないか、個人差があるんです。緊張してしまうのは勿体ないという気もしてしまいますが、その一方で「ここはあなたの自宅じゃないんですけど」と言いたくなるお行儀の悪い方もいらっしゃいます。もちろん、店のスタッフが心から「ありがとうございます」と言いたくなるお客様もいらっしゃいます。十人十色です。

個人的には、ランチのピークタイムを少し外していらっしゃるお一人様の女性のお客様が、読む本を物色しながら「飲んじゃおうかな~、ハイネケン!」とか楽しそうにオーダーされる姿は、「いいね、人生楽しんでるね」とこちらまで嬉しくなってしまいます。スイーツのショーケースを覗いて、「コレ何ですか?」と訊いてくる嬉しそうな顔もいいですね。好きな瞬間です。

カフェ遊び、その人の心の大きさやゆとりが見えてしまう、なかなかに面白いものでもあります。コロナ禍もあって閉店する飲食店が目につきますが、カフェがない人生はつまらないですよ。支援しろとは申しませんが…、意識してお好きな飲食店を積極的に利用しないと、いつまでもあるものではありませんからね。

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