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7インチ盤専門店雑記406「Holly Days」

12月5日に亡くなったデニー・レインですが、初期ムーディ・ブルースとポール・マッカートニーのウィングスでの活動以外はあまり情報がありませんでした。…ジンジャー・ベイカーのエア・フォースにもいましたけどね、未聴です。何はともあれ、ウィングスの主要メンバーです。ポール&リンダ・マッカートニー夫妻以外には、彼だけが10年間通して在籍したことになります。とりわけ1978年の「ロンドン・タウン」というアルバムはフォーキーでロック寄りの音を期待するファンからは残念がられるのですが、あの辺がデニー・レインの音かと思われます。何はともあれ、大名曲「夢の旅人 Mull Of Kintyre」は共作者として彼の名前もあります。

1985年にリリースされた「Japanese Tears」と同内容の「Weep For Love」

1980年には、日本で逮捕されたポールを揶揄するような「ジャパニーズ・ティアーズ」という曲もありまして、ウィングス解散の直接の原因になったかと思われますが、80年代のポールの名盤「タッグ・オブ・ウォー」や「パイプス・オブ・ピース」にも参加していますから、人間関係まで壊れたわけではなさそうですけどね。まあ相手がポール・マッカートニーですから、何を言っても分が悪いですね。ウィングス解散後もそれなりに活動はしておりましたが、やはり10年という年月は長いのでしょう、ウィングス絡みのイベントやらでしか目にしなくなりましたし、特段ヒット曲やヒット・アルバムがあるわけでもありません。そこは80歳過ぎても精力的に活動を続ける化け物と比較してはいけません。

ただこのアルバム、スルーしてはいけません。ポール・マッカートニーやリンダさんも含め、ウィングスの面々が参加しております。何とヘンリー・マックロウまで一曲参加しています。そしてムーディ・ブルースの最初のヒット曲「Go Now」を再度録音しておりまして、それだけでも、英国ロック好きは聴いておいて損はない内容です。…ま、3枚組ライヴ盤「Wings Over America」でもやってますけどね、いい曲です。

ヘッダー写真は彼の名義になっている1976年のアルバム「Holly Days」です。プロデュースはポール・マッカートニー、写真はリンダさん、スコットランドのハイランドにあるトタン屋根のボロいルード・スタジオで録音されています。4chでベーシック・トラックをポールが録音し、デニーが仕上げたものですが、2人ともマルチ・プレイヤーですから、どちらがどの音というのは区別がつきません。そして曲はバディ・ホリーのカヴァーです。「Holly Days」とは何とも上手いネーミングです。実にシンプルな内容ですが、案外ウィングスの本質が見え隠れするもう一枚のウィングスのアルバムと言っても過言ではないものです。30分もないミニ・アルバム的な印象の盤ですが、何だか愛すべき一枚です。

R.I.P. Denny Laine

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