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FM84.0MHz Radio City presents "Saramawashi.com -The Vinyl Paradise" 097:フェスの季節に聴くライヴ盤特集イギリス編

さらまわしどっとこむ -The Vinyl Paradise-
第97回(2023年8月4日(金)20時~
(再放送:8月6日(日)19時~)

清澄白河にあるカフェGINGER.TOKYOのオーナー高山聡(あきら)がお届けする音楽番組です。
全曲アナログ・レコードでお届けします。可能な限り7インチ盤で、しかもフルレングスでかけます。
サーフェスノイズにまみれた1時間、ぜひご一緒に。

今週はフェスの季節に聴くライヴ盤特集の第2回、イギリス編です。前回に引き続き、ライヴ盤の魅力を語りながら聴いていきたいと思いますが、今回はそこに加えてアメリカとイギリスの違い等も併せて聴いていただければと思います。

1曲目
「Honky Tonk Women」Joe Cocker’s Mad Dogs & Englishmen (1970)

オープニングは、アメリカなのか、イギリスなのか、という点では微妙な一枚でした。イントロであの印象的なギターを弾いているのはレオン・ラッセルです。黒いレス・ポールを無表情に弾いている動画がありますね。何とも言えず格好いいです。結果的にアメリカにおけるジョー・コッカ―の知名度を上げることに成功はしましたが、イギリス本国よりアメリカで遥かに評価されることになり、ある意味アメリカン・マーケット進出の一つのお手本のようになったライヴ盤です。ブリティッシュ・インヴェイジョンとも違って英米の美味しいとこどりのような印象もあります。リタ・クーリッジがヴォーカルを務めた「スーパースター」とか、オリジナルのデラニー&ボニーよりいいかもと言いたくなります。

またこんな大所帯のツアーというのもデラニー&ボニー&フレンズ的ですが、メンツは凄いです。ドラムスが3人おりまして、デレク・アンド・ドミノスのジム・ゴードンに、ジョン・レノンやジョージ・ハリスンのバックアップなどで有名なジム・ケルトナー、それから、レオン・ラッセル人脈のシェルター・ピープルの中心的なドラマー、チャック・ブラックウェルまでおります。贅沢なはなしです。カヴァー・ソング中心のセットリストですが、非常に楽しめます。音楽史上でも非常に重要なライヴ盤だと思います。

2曲目
「Maybe I’m Amazed」Wings (Paul McCartney & -) (1976)

ポール・マッカートニーのウィングスが全米制覇記念のようななライヴ盤を1976年にリリースします。「ウィングス・オーヴァー・アメリカ」、アナログ盤で3枚組、「ヴィ―ナス・アンド・マース/ロック・ショウ」から始まり、ビートルズ・ナンバーはまだ少ない時期の素晴らしい記録です。若くして亡くなってしまうジミー・マカロックの記録としても非常に貴重な盤です。70年代前半、「ビートルズを解散させた男」ということで、マスコミからは散々な扱いを受けたポール・マッカートニーでしたが、70年代にも名曲を量産して実力で評価を覆していきます。ここでご紹介したのは「メイビー・アイム・アメイズド」ですが、ジミー・マカロックの名演もさることながら、ポールのソロ・デビュー盤収録曲でシングル・カットもされないまま大して評価もされなかったものですが、ファンの間では名曲だといわれ、フェイセズも早々にカヴァーして敬意を表したり、何かと物議を醸した曲でした。

3曲目
「Jealous Guy」Rod Stewart & The Faces (1974)

4曲目
「Hallelujah I Love Her So」Humble Pie (1971)

ヴェリー・イングリッシュなライヴ盤を2枚ご紹介しました。イギリス編で真っ先に当確となったのが、ロッド・スチュワート&ザ・フェイセズの名盤ライヴ「コースト・トゥ・コースト、オーヴァーチュア・アンド・ビギナーズ」です。こちらもカヴァー曲が魅力だったりしますが、ジョン・レノンの「ジェラス・ガイ」やジミ・ヘンドリックスの「エンジェル」などです。

また、アイドル的な扱われ方から脱却したくて新バンドを計画していたピーター・フランプトンにアドヴァイスしていたはずのスティーヴ・マリオットが、自分のバンドのスモール・フェイセズのゴタゴタで自分も脱退することになって、結局一緒に立ち上げたのがハンブル・パイです。こちらはスティーヴ・マリオットの趣味を反映した黒い選曲が魅力です。スタンダードなR&Bのセットリストだったりします。彼らの大名盤ライヴは「パフォーマンス:ロッキン・ザ・フィルモア」というタイトルです。

ロッド・スチュワート&ザ・フェイセズによるジョン・レノンのカヴァー「ジェラス・ガイ」と、ハンブル・パイによるレイ・チャールズのカヴァー「ハレルヤ・アイ・ラヴ・ハー・ソー」を聴きました。「ジェラス・ガイ」はダニー・ハサウェイのライヴもいいですが、こういうライヴ盤ではどれだけ曲を知っているかで楽しめ方も違ってきます。ハンブル・パイの方はエンディングが同じくレイ・チャールズの「アイ・ドント・ニード・ノー・ドクター」でして、こちらも人気があったカヴァーです。

5曲目
「All Day And All Of The Night」The Kinks (1980)

6曲目
「Little Queenie」The Rolling Stones (1970)

こちらもヴェリー・イングリッシュですが、この連中はカヴァーされる側でしょうか。キンクスの方はまあ、アレンジを全然変えないでやるわけですが、こういったリフ一発みたいな曲の魅力、これはもうライヴでは変えない方がいいかと思います。例えばエリック・クラプトンが「レイラ」のアコースティック・ヴァージョンをやったりしますが、あの曲こそあのイントロのエレクトリック・ギターがよくて聴くのに、もう本当に名曲を台無しにする人だなぁと驚きました。

私はストーンズに関しては60年代が大好きです。この「リトル・クイニ―」のザクザク刻む感じとか、堪らなく好きです。ライヴならではの魅力と申しましょうか、曲よりも演奏を聴かせるタイプの音源としてご紹介しました。60sのストーンズは、レコードも魅力ですが、それ以上にライヴ音源が魅力的です。ラジオ・ブロードキャスト盤は相当集めました。この人たちは未発表ライヴ音源もアナログでリリースしてくれるのが嬉しいです。短いブロードキャスト音源は10インチ盤でリリースしてくれますし、ライヴ盤を楽しむということを理解しているなと思います。

7曲目
「Summertime Blues」The Who (1970)

8曲目
「Lady」Beck Boggert & Appice (1973)

高山とライヴ盤の出会いは、ザ・フーの「ライヴ・アット・リーズ」です。海賊盤ぽい雰囲気のジャケットが魅力的です。あれが格好いいと言えるようでないとレコード・コレクターとは言えないでしょう。あの盤、あのジャケットのイメージから音が悪いと言われますが、少し引っ込んだ音ですけど、今ウチのお店でボリュームを上げて聴くと、結構いい感じで鳴ります。音の塊感が凄いです。今更にいい意味での騙された感がある盤です。その対極として、異様に音の分離がよ過ぎてライヴ感があまりない盤、しかし演奏は素晴らしいという盤をご紹介します。ベック・ボガート&アピスの「ライヴ」ですが、これ、ライヴ・イン・ジャパンです。如何せん貴重な音源です。せっかく分離がいいので、是非ともドラムスを聴いてみてください。

9曲目
「Shadows In The Rain」Sting (1986)

もう一曲、音質とか演奏とかで、「ああ、時代が変わった」と思わせた盤をご紹介します。スティングです。ザ・ポリースではライヴ盤をリリースしなかったわけですが、ソロになって、「ブルー・タートルの夢」が大ヒットしたら、86年にはいきなりライヴ盤をリリースしてきます。「ああ、こういうことがやりたかったのか」と思いましたけど、まあ演奏も音質も、それまでのロックのライヴ盤とは全然違うものでした。ある意味、80年代を代表するライヴ盤でもあるかと思います。

10曲目
「Solsbury Hill」Peter Gabriel (1983)

イギリスと言えばプログレ、テクニカルな連中が多いわけで、ライヴ盤も面白いものがあります。キング・クリムゾンの「USA」は音が悪くて、あまりそそられませんでしたが、エマーソン・レイク・アンド・パーマーは「展覧会の絵」や「ウェルカム・バック・マイ・フレンズ」とか、「イン・コンサート」「ワークス・ライヴ」などいろいろあります。イエスは「イエスソングス」や「イエスショウズ」があります。ピンク・フロイドは「ウマグマ」がライヴですけど、他にありません。いいライヴをやる人たちだけに残念です。それからジェネシスは素晴らしいライブの名盤を残してくれました。ピーター・ガブリエル在籍時の「ジェネシス・ライヴ」、脱退後の「セカンズ・アウト」、3人体制時の「スリー・サイズ・ライヴ」いずれも名盤です。90年代に入ってからの「ザ・ウェイ・ウィ・ウォーク」という名盤もあります。如何せん上手い人たちです。比較的にスタジオ録音の再現性が高いですが、ちゃんとその時代の選曲になっていますし、ライヴの面白さを見せつけてくれます。ただしここでは、ジェネシスから脱退して、80年代には大ヒットとなるピーター・ガブリエルのソロ「プレイズ・ライヴ」から「ソルスベリー・ヒル」をご紹介しました。

11曲目
「Aqualung」Jethro Tull (1978)

70年代のイギリスで、最も派手なライヴをやっていたのは、レッド・ツェッペリンでもなく、ディープ・パープルでもなく、ロ-リング・ストーンズでもなく、ジェスロ・タルだったと言われております。ラストはジェスロ・タルの名盤ライヴ「バースティング・アウト」から「アクアラング」をお時間までというかたちでご紹介しました。

次回はフェスの季節に聴くライヴ盤特集アンコールです。お楽しみに。
番組へのご意見やお便りをください。
voice@fm840.jp

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