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清澄白河カフェのキッチンから見る風景 : 豚焼き職人

システム関連の仕事をしていた頃、ゴールデンウィークといえば、システムの入れ替えや停電を伴う設備点検などを実施する大事な日でしたから、休みという感覚が失せておりました。通電再開する時に過大電流が流れるので毎回いくつかの機器が壊れますから、警戒もしましたしいろいろ苦労もしていました。分かる人には分かる「-t/」まみれの時期でした。でもそれが当たり前になっていたので、苦にすることもありませんでした。遊びに行ってもどこも混雑していますから、休みをずらして取れるならそれもありかと思っていましたけどね。

飲食店経営というものも、他人様が遊んでいるときに働くべきものですから、ゴールデンウイークに休めないからどうの…という感覚はありません。昼休み時に飯が食いたいランチ屋はおりません。今年も日曜定休以外は営業する予定です。でもさすがにスタッフさんたちは休みたいんでしょうけどね。休んだらその分収入が減るのは厳しいですね。お店も休んだら売上は減りますが、その分人件費も抑えられますから、またちょっと感覚は違います。4月3週目あたりからゴールデンウィーク期間中のお席の予約も入り始めますし、もう完全に営業体制は整っております。

営業体制というのは、最近はゴールデンウイークでも暑い日がありますから、自家製ジンジャーエール用のジンジャー・コーディアルをいっぱい仕込んだり、冷たい飲み物が売切れにならないように工夫する程度ですけどね。食事系の仕込みは気持ち増やす程度です。以前は夏メニューに切り替えるのは6月からだったのですが、最近は5月はもう夏仕様です。冬仕様のシチューは早めに終了し、夏仕様のカレーが始まるわけです。バターチキン・カレーは通年ご提供しておりますが、キーマ・カレーは夏のみです。ジンジャー・ラム・カレーは気まぐれですが、夏中心です。ジンジャーもラムもカラダが温まると言われる食材ですから、本来は冬の方が向いているような気もしますが、どういうわけか、オーダーがあまり入りません。

何を提供するかは、最終的には店側が決めるものでしょうが、お客様が注文しなければ提供のしようがないもので、やはりお客様が決めるものという要素は多分にあります。ウチの食事メニューはこの9年でいろいろ試した20数種ほどの中から生き残った5~6種ですから、じっさいのところどれも人気があります。でも暑い日はタコライスやカレーに集中しますし、寒ければポーク・ジンジャーやシチューなどに集中します。パスタはどういうわけか固定客がいるようなもので、パスタをお好みのお客さんは必ずパスタを頼まれます。「他は試さないの?」と訊いたことも何度かありますが、「あのパスタを食べないという選択肢が思い浮かばない」などとおっしゃいます。

そもそも、テレビや雑誌やウェブ・メディアで紹介されるときは、ほぼほぼポーク・ジンジャー屋みたいな物言いなのですが、ウチで開業後まず人気になったのはパスタでした。パスタの次がバターチキン・カレー、ハンバーグ、その次くらいにOZ Magazineでポーク・ジンジャーが紹介されてからはポーク・ジンジャー屋のようになってしまいました。雑誌に載ったりすると、どうしても注文が偏りますから、しばらくの間は「豚焼き職人」に徹します。週末やゴールデンウイークなどの連休中は地方からいらっしゃるお客様も増えますから、ポーク・ジンジャー率がグッとあがります。当然、肉の仕入れ量を増やします。

地方からも一定の割合でいらっしゃいます。「Re : 東京」という昭文社のガイドブックに載っているからだろうとは思いますが、加えて加藤シゲアキ君のファンもライヴのついでか、地方からいらっしゃいます。また外国人の方は、台湾の村上春樹ファンの間で有名になっているということで、台湾の方が圧倒的に多いのですが、それ以外は何故かヨーロッパ系のお客様が多いという傾向があります。何か口コミでも載っているのでしょう。ここにきて、インバウンド需要は回復してきております。コロナ期間中は文字通り外国人客ゼロですから、結構痛かったと思います。

地元密着型の、ビジネス・パーソンのクイック・ランチを賄っているという店側の意向とは関係なく、こういった傾向は時とともに移ろいます。そういう部分は、他人事のようですが、ちょいと面白いなとは思います。…何度も書きますが、飲食店経営の自負があまり無いのは事実ですけどね。ここにきて、レコードの売上げが伸びております。この一週間ほどで100枚程度旅立って行きました。ゴールデンウィーク前に品出し補充したかったのですが、厳しいですね。ホント、なかなか思うようにならない商売です。

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