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るろうに剣心 The Beginning 感想


るろうに剣心 The Beginning の感想。
言葉にすると安っぽいけれど、
それでもこの興奮を綴りたい。

この先多少のネタバレを含みます

𝖳𝗁𝖾 𝖡𝖾𝗀𝗂𝗇𝗇𝗂𝗇𝗀 

本当に素晴らしかった。
佐藤健さんの所作、歩き方、階段のおり方𝟣つとっても、どこまでも抜刀斎。
これは“佐藤健が演じている抜刀斎”じゃなくて、抜刀斎自身じゃないか、と思う瞬間が何度も何度もあった
𝖳𝗁𝖾 𝖥𝗂𝗇𝖺𝗅 のパンフレットのインタビューで佐藤健さんが「僕の中に剣心が生きている、いる。だから、剣心ならこんな時どういうんだろう、とか自分で考えたセリフもあった」と仰ってたけど、本当にそうなんだと思う。
彼の中に確かに剣心が生きている

佐藤健さんは、役者としても1ファンとしても“るろうに剣心”に本気で惚れ込んでいるのがめちゃくちゃに伝わってくる、そして彼の“るろうに剣心”への理解が半端じゃない。
脚本に書いてあることを体現。じゃなくて、
如何に、この大好きな、素晴らしい作品を伝えるか体現するかやり遂げるか。
それこそ命懸けで俳優生命かけてでも、これを演じきりたい、表現しきりたい、やってやる。
言葉にすると簡単だけど、
それがひしひしと伝わってくる。
本当にほんっとうに本気だから。だから、観客にあれだけ響かせる。
例えばアクション、表情、所作、喋り方、なにもかも剣心と抜刀斎は全く違う。同じ人物であり違う人物。二重人格のようであり、二重人格ではない。剣心の優しさの上に、抜刀斎の残酷さがある
それを体現しきっていた、本当に尊敬しかない。

有村架純さんの、巴としての透明感、色気、ミステリアスな部分の表現。。縁と再会したときのミステリアスな女性じゃなくて、パッと一瞬で普通の姉に切り替わり。彼女以外の巴は正直考えられない。

高橋一生さんの桂小五郎も、殺陣がない分“剣心が従うほどの男”をだすには難しい役だったと思う、けど高橋一生さんの桂小五郎は、あれなら従うのも納得。巴に話をする時の笑顔や、細かい表情。めちゃくちゃうまかった。

沖田総司は、今までの沢山の新撰組の時代劇や物語で勝手に出来上がったイメージが誰しも頭にこびりついてるから難しかったと思う、
笑顔でちゃらちゃらしてて、けど剣の腕は組で1、2を争う
そのイメージを否定せず、そして
殺陣のシーンもめちゃくちゃうまかった。

北村一輝さんの辰巳も驚いた。
“悟っている人間像”がよく出ていたし、
声のだし方も数々の修羅場くぐり抜けてきた経験値がよくでてて、ラスボスというか、
本当にしっくりきた。蹴りの重さもよくでてた。

他にも、江口洋介さんの落ち着き。清里殿の、あの一瞬での、“伝説の人斬り抜刀斎が何度も思い出してしまうような、生きる執念”の表現力。新井赤空の中村達也さんの存在感、俺の刀で新時代を開くとか、いい意味でのぶっ飛び具合の表現はびっくりしたし、Blankey Jet Cityのドラムってことにパンフで気づいて目を剥いた。
Blankey Jet City。流石です。。

そして、監督/脚本の大友啓史さん。
構成。作品への理解。リスペクト。ただただ脱帽。
どのシーンも素晴らしすぎて、全てを語っていたら間に合わないので、1番に感動したところを。
原作では、剣心の左頬の十字傷は偶然で生まれる。巴の小刀が宙に舞い、それがたまたま剣心の頬を傷つけて落ちる。
けれど、実写ではあの傷を2人の意志を感じさせてつける。次の文章はパンフレットから丸々引用

「巴は、十字傷を刻む行為によって、剣心に「十字架」を背負わせた。そして、背負わされた「十字架」を剣心はきちんと受けとめ、引き受けた。ふたりの共同作業によって、十字傷が生まれたことを表す「手を重ね合わせる」という行為を僕はとても大切な描写だと考えています」

そして、このシーンに関して佐藤健さんが
「あの形(左頬に手を重ね合わせる姿)は愛し合っている巴と剣心の象徴なんじゃないかと思っています」
とコメントしていて、主演と監督の理解の一致が素晴らしすぎる。

他にも、大友監督の考え、意思が沢山綴られてます。パンフレット、映画観られたら必ず買ってください。必ずです。お金かける価値があるパンフです。今まで、パンフレットを熟読したことなんて銀魂しかなかったけれど、るろうに剣心のパンフレットは一言一句逃さぬよう隅々読み倒した。
それくらいパンフレットから本気が伝わってきたんです。というか、もうみんな観て。そして買って。そしてるろうに剣心という深い深い深海に身を沈めて。味わって。まじで。

これ以上長ったらしくするのも悩むところだけどこの興奮を書ききります。とにかく書かせろ。

この先「」はパンフレットの引用。

エグゼクティブプロデューサーの小岩井宏悦さん
「僕らには「作りたい」という強い欲求がありましたお客さんを選ぶかもしれない暗く悲劇的な『The Beginning』を作りたい。」
「これまでプロデューサーとして、サスペンスや少女コミック原作など徹底して当てることにこだわってきた僕が初めてとったリスクでもあります」
「お客さんは過去の経験に基づいて、あれがいい、これがいい、と指差すことしかできない。僕らはお客さんが想像していなかったものを提供して初めて「こういうものが観たかった」と言ってもらえるのです。」
脱帽。正座したい。
観終わったあと、思ったのは、まさに
「こういうものが観たかった」
待っていたのはこれだったんだ、と深く思った。
これは私の仕事に関してもそうで、
提供をする仕事人というのは、お客さんに想像していなかったものを提供して、初めて仕事したと言えるのではないか。

アクション監督の谷垣健治さん
斬ることと、打撃を加えることで倒すことの違いを巧みにだしていた
「斬るってどういうことかみせてやる」
「『The Final』が、「こんな剣心見たかった」だとすれば、『The Beginning』は「こんな剣心見たことない」ですね。」
漫画でも見たことない剣心だった。確実に。
漫画だと、描きで随分と変わるけど、気づかない部分も正直多かった。(もちろん難しいことなのだろうが、、、。)けれど、The Beginning は、実写ならではの剣筋の差をめちゃくちゃ難しいのにでてて、佐藤健さんにも、谷垣さんにも脱帽。

撮影監督の石坂拓郎さん
どんな色にこの場面を仕上げて、どんな風に観せるか。撮るか。
「情念に満ちたこの映画に相応しい紫色をザラザラとした画調に乗せていきました」
そんな意図に全然気づかなかったし、ただ映画に引き込まれていった。それだけなんの違和感もなしに、ずっと入ってきた。
「『The Beginning』を観終えると、また1作目から観たくなってしまうというループ感が、結構うまくいってるんじゃないかと思います」
ほんとにそう。パンフ読む前に、1作目からみたいって、思わず口にしてた。

照明の平野勝利さん
照明もそう。なんの違和感もなし。
映画にぐいーーーーーーって引き込まれていく。
剣心と巴の農村のシーンで、光を優しくしていったりして、心を表現する。
表情を観せるため、シャープに見えるように配慮したり。
「時代劇の型に嵌ることなく、オリジナリティを出せるように努力しました」
これは、平野さんに限らずだけど
時代劇であって、でも違う、オリジナル。
それが各々で表現されている。

装飾の渡辺大智さん
作り物じゃなくて、ほんとに江戸時代末期の暮らしの営みを表現している。
あの時代に人がどうやって生きていたのか。
必要なものは何か。考え抜かれてる。
農村での暮らしを表現するために
柿を盛岡まで取りに行って、形の悪いやさいや川魚を譲ってもらい、保存食を学び、作る
だから、作り物感なんてひとつも無い。
そこまでするのか。この作品への完成への熱意、これも渡辺さんに限らず、ただただ脱帽。どころか土下座すらしたい。

美術の橋本創さん
「リアルな歴史をベースに「本格的な時代劇」をコンセプトにしました」
本格的〜!なんてならなかったし、それどころか、本物だと本気で思った。
大抵の時代劇は、役者さんの着物も袴も、部屋の造りも浮く。全然そんなことないと言うのは一体全体どういうこと。
馴染みきってるし、タイムスリップして撮影してきたのかとかなり本気で思う。
剣心と巴の家も、1から作り上げて、燃やしてる。
リアルな生活感を出すように心がけたそうだが、本当に現実感がすごくでている。

録音の湯脇房雄さん
いままで、てっきり撮影の時にカメラが声を拾っているのだと思い込んでたけれど、マイクをつけて声を別にとっているのを初めて知った。
「祇園祭のシーンでは紙吹雪をまくジェットファンが回っていて、何も聞こえませんでした。しかも剣心も巴も小声でひそひそ話しますから。それでも、何があっても録らなければいけなかった」
「音という材料を集めて、映画のリアルをどう作り上げるかというのが、僕らの仕事」
音量、聞かせるセリフの調整は録音の仕事だということも知った。巴の最期のセリフは聞かせないで感じさせる、という意図の調整。技術的なこだわり。素晴らしい。

編集の今井剛さん
他のインタビューから察するに、大友監督はワンシーンを何度も撮るそう。
だから、色んな角度の同じシーンがある、
そしてその切り替え、調整、繋ぎ合わせを編集が行うそうなのだが、巧み。
役者さんの横顔のカットの使い方も、彼らの心情がよく出るようにでてくる。
回想シーンも、どのカットをどう回想にするかとかめちゃくちゃ難しいと思う、それを絶妙なバランスで完成させている。

VFX スーパーバイザーの小坂一順さん
(VFXが分からなかったので、Wikipediaより
コンピュータグラフィックス、または合成処理によって実写映像を加工することである)
例えば、出血の加工。
剣心と抜刀斎の違いを表現するため、畳や壁に飛び散った血をより残酷に見えるように合成したり、斬られた時に、血だけではなく着物の布も飛び散るようにする、など、そこからも“人斬り抜刀斎”が浮かび上がってくる。
だから、新撰組も人斬り抜刀斎だと気づく。もちろん太刀筋、斬られた人数もあるのだろうけれど。
そんな彼が苦労したシーンがラストの巴の最期のシーンだそう。降っている雪、積もっている雪、血飛沫と染み込む血の美しいコントラストと静けさ。
特に、巴が倒れてから雪に滲む血は何度も何度も修正に修正を重ねて、血のにじむ形やスピード、色に徹底的にこだわったそう。
たったのワンシーン、けれど、ほんとに大事なワンシーンにめちゃくちゃに時間をかけて、表現する。同じ作業のようで、どんどん良くしていく。
相当な思いと、根性と熱意がなければそれはできない。これも小坂さんに限らずだけど、2時間17分という作品の、ワンシーンワンシーンに、どれだけの熱意を、情熱を捧げたのか。理解しきれる日など一生来ない。けど、その背中を追いたい。

スーパーヴァイジングサウンドエディターの勝俣まさとしさん
「背景音を構築した後にディテールを隠したり削ぎ落としたりして、田舎の村の静けさを完成させた」
確かに、田舎らしく小鳥の声だったり、風の音、炎の音、全てを拾っていったら、剣心と巴の静けさもへったくれもないし、削る音も増える。
けれど、削るだけだと奥行は芽生えないし、音が平たくなってしまう。風の音10種類以上の異なる風を吹かせ、奥行をだし、そして静けさをだすため削っていく。そのギリギリのラインをよく完成しきれたなと、本当に尊敬してやまない。

衣装デザイン / キャラクターデザインの澤田石和寛さん
「これまでの時代劇と決着をつけていく作業」
幕末を舞台とし、時代劇の真新しさを探し、漫画に添い、そしてリアリティを求め、よくよく表現していると思う。ブルーグレイトーンの毛を使った新撰組、グレイッシュトーンの薩長。対立していることや、赤の剣心と青の巴の対照、様々なとこに思考が巡らされている。
新撰組の衣装も、世の中で羽織もののイメージが勝手に出来上がってしまっていて、どうするか難しかったと思うけれど、るろうに剣心に良くあっていた。衣装やキャラクターのデザインによって、今までのるろうに剣心との違いが大幅に決まると思う。そして、巴の着物選びも難しい。
けど、違和感も全くなかったし、各々のキャラクターにピッタリハマっていた。素晴らしすぎる。

音楽の佐藤直紀さん
「るろうに剣心の音楽を作るというのは本当に大変。命を削る覚悟。」
それだけ、現場の真剣さがあったはずだし、彼自身のるろうに剣心への想いもある。
The Beginningは、るろうに剣心であり、るろうに剣心ではない。“Beginning”であるからこそ、全く違うような、けれどるろうに剣心の作品を作り上げなければならない。
今までの雰囲気とは別物の音楽を作りあげ、今までるろうに剣心で使ってきた楽器も使う。
その落とし込みかたがちょうどいい所にすとんと落としている。音楽もバッチリマッチしていた。
音楽の主張をしすぎず、世界観にマッチさせる。めちゃくちゃ難しいはず、素晴らしい。

助監督の田中愉さんが、
「振り返れば自分の人生を変えた作品になっていた。もう二度とできない。命懸けだったから。」
これは、田中さんに限らず全員そうなのだと思う。命懸けで、魂を削り、そしてたくさんの方々の意思、思想、考えをまとめあげ、るろうに剣心という作品が、初めて完結する。

すごい。本当にすごい。
尊敬なんて言葉じゃ足りない。

るろうに剣心という作品に携わった方々から、
仕事に対する姿勢も学んだ。
私の中での仕事人として尊敬しているのが、
漫画だと空知先生で
音楽だと竹原ピストルさんだとしたら、
映画はるろうに剣心だ。

漫画だと、フィクションだから、絵だから。で納得できることを、如何にリアリティを追求して出すか。考え抜く。
しかもそれが、監督だけの独走じゃなくて主演、助演、アクション監督、撮影監督、証明、装飾、美術、、、何百人と関わってるであろう映画関係者全員の、仕事、本気。
この作品を完成させたい、作品への気持ち、それだけを込めるとただの趣味になってしまう
簡単に口にしていいことではないかもしれないけれど、これだけ全力をかけたからこそ、たくさんの労力を費やしたからこそ、人気を得なければいけない。それが仕事だから。この難しいラインをここまで仕上げたのか。これは、1つのエンタメ、作品としてだけではなく仕事人としての道を選んだ私に、仕事へ向き合い方という背中の感動を与えてくれた。


“るろうに剣心”という作品。
産んでくださった、“和月先生”
そして、映画“るろうに剣心”を作り上げた方々。
ほんとうに、ほんとうに、ありがとうございます。追いつけなくても、それでも仕事人としてのその背中を私はハッキリとみました。
精進します。
本当にありがとうございました。

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