銀波蒼

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銀波蒼

ファンタジー小説などを書いてます。 https://kakuyomu.jp/users/ginnamisou 代表作「神ひらく物語」

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月をうむ 1 

トタンの屋根に月が流れて落ちてくる とろとろ甘い月の蜜 てのひらでそっと飲み干した 心で照らす陰と陽 夢のしじまに月をうむ 第一話 満月の夜 まっくら森はいつも夜。朝も昼もおとずれません。  さわざざざざぁーんとうねる木々。枝葉のすき間は網のよう。ぽつぽつひっかかる星は、かすかな白い豆電球。満ちては欠ける月の灯は、心もとないカンテラです。  今夜は満月。  まっくら森が最も明るくなる夜です。  満月の夜は切りかぶだらけのぽっかり広場で大集会が開かれます。

    • 今日も埋もれるコンテンツ

      先も後もなく広まったもんがちシステム 突然、私の作品によく似た作品があるという連絡がきた。 ほほう、確かに、私が10年以上前に作った紙芝居によく似ているわ これは、エスペラント語、中国語、英語にもしてあるし、こちらで販売もしている。 だがしかーし! 誰も見ないし、売れもしない。 今の時代、結局宣伝力と数字だろう。 そしてみんながいいと思うもの、数字の多いものがいいとされ、それを選ぶことが良しとされるところもある。 ※そのよく似た作品の動画のことを言ってるんじゃないで

      • 神ひらく物語ー南多島海編ー(宣伝)

        南多島海編←こちらから勾玉の光はヒラクを未知の南多島海へと導く。 新たな海賊の仲間と共に奇想天外な冒険の旅が始まる。 神ひらく物語これまでのあらすじと概要 緑の髪のこども、ヒラクは、アノイ族の父と異民族の母の間に生まれ、アノイの地で育つ。 多神教と一神教の神との狭間で、ヒラクの中である疑問が芽生える。 「神さまって何?」 水の女神プレーナを信仰する母は、ヒラクが五歳の頃プレーナの地へ去った。 その後ヒラクは、神帝国から追放された美しい少年ユピと共にアノイの地で暮らすよ

        • 月をうむ 18

          最終話 月の女神 まっくら森はいつも夜。朝も昼も訪れませんが、青白い月の光を放つ月光花が咲く美しい夜の世界です。  月光花の近くでは昼の世界から訪れる人間の子どもの姿が多く見られます。森の住人たちは彼らのことを月の子と呼んで親しんでいました。 「最近はヒカリの姿が見えんのう」  物知りフクロウは思い出したようにモグラ館長に言いました。 「昼の世界のことに関してはだいぶ資料が整ったので問題はないと思いますが」  そっけないモグラ館長の言葉に物知りフクロウは文句を言いま

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        月をうむ 1 

          月をうむ 17

          第十七話 ママの秘密  目が覚めると、ヒカリは自分の部屋のベッドに横たわっていました。  起き上がってカーテンを開けると、朝の光に目がくらむ思いがしました。  とても長い夢を見ていたような気がするのに、目が覚めるとすべてが一瞬の出来事のようにも思えました。  少しして、朝食の準備をすませたヒカリのママがヒカリを起こしにきました。  ドアが軽くノックされた後、部屋に入ってきたママの姿を見て、ヒカリはとてもなつかしく思い、ママに駆け寄って抱きつきました。 「あらあら、ど

          月をうむ 17

          月をうむ 16

          第十六話 生まれた月  まっくら森に月が昇ります。  待ち望んだ満月です。  月の光は花となり、地上に降り注ぎました。    火花を散らしたような美しい青い光を放つ花弁です。  甘い蜜のような芳香が辺りにやさしく漂います。  月見草畑にいたこびとじいさんは、地上に落ちた花の一つを手に取りました。 「これは、幻の月光花だ!」  その花の輝きの前では、スズランランプの青白い明かりもぼんやりかすみます。 「しょせんはにせものの光か……」  こびとじいさんはスズランラ

          月をうむ 16

          月をうむ 15

          第十五話 月を産む  モジャリの体が大きくふくらんできました。  おなかの月は半月です。  モジャリは息をするのもつらそうでした。  住人たちは、ぽっかり広場にモジャリの様子を見に来ては、勝手な声援を送ります。 「モジャリ、えらいぞ。おまえはこの森の救世主だ」 「いつもこっそり月を飲んで腹にため込んでいてくれたおかげだな」 「おまえはこの森になくてはならない存在だよ」  モジャリは次第に不機嫌になり、ヒカリとも口を聞かなくなってしまいました。  やがてモジャリ

          月をうむ 15

          月をうむ 14

          第14話 月宿る 月が消えてから十日。  モジャリがおなかを痛めてから三日。  ぽっかり広場でウンウンうなりながら体を横たえていたモジャリは、我慢しきれずに叫びます。 「痛ぇ、痛ぇよぉ。腹の中を切り裂かれるようだぁ」  ヒカリはモジャリのおなかにそっと手をあてました。  モジャリのおなかの中からまぶしい光が放たれます。  モジャリのおなかの光は細い鎌のような形になっていました。 「……これは、三日月?」  ヒカリはぽつりとつぶやきました。  住人たちはモジャリのお

          月をうむ 14

          月をうむ 13

          第13話 会合 ヒカリが戻ってきたというので、住人たちは全員ぽっかり広場に集合しました。 「よく戻ってきたのう、ヒカリ。どうかわしらの仕打ちを許して、月を取り戻すために力を貸してくれんかのう」  物知りフクロウは猫なで声で言いました。  ヒカリはフクロウの言葉などまったく耳に入らないといった様子で必死に訴えます。 「モジャリを助けて。おなかが痛くて苦しんでいるの」 「ふん、月を飲みすぎた罰だろう」  こびとじいさんは憎々しげに言いました。 「月溜まり池の蓮の葉にた

          月をうむ 13

          月をうむ 12

          第十二話 地下図書館の古い本   その頃ぽっかり広場では、フクロウが険しい顔つきで思案に暮れていました。  地下図書館のモグラ館長が、月の子に関する記述と思われる古い文献を発見したからです。  それは伝説じみた過去の記録で、昼の世界と夜の世界の関わりについて書かれたものでした。  この箇所を読み、フクロウは、月を取り戻すカギを握るのは月の子しかいないのではないかと考えるようになりました。  そしてこびとたちにヒカリを迎えに行かせたのですが、その頃すでに闇の洞穴はもぬけのか

          月をうむ 12

          月をうむ 11

          第十一話 初月の痛み  どっぷり沼からぽっかり広場に戻る途中、モジャリは大樹の葉でくるんで抱きかかえていたヒカリを下におろして、急にその場にうずくまりました。 「どうしたの? モジャリ」  ヒカリは暗闇の中で気配を探りながら声をかけました。 「……何だかわかんねぇけどぉ、腹の中がチクチク痛むんだぁ」  モジャリはうずくまったまま、立ち上がれそうにありません。  深く濃く重い闇の中、ヒカリはモジャリがいなければ歩き出すこともできません。 「だいじょうぶ? 少しここで

          月をうむ 11

          月をうむ 10

          第十話 どっぷり沼の大ナマズ  闇の洞穴の近くに底なしともうわさされるどっぷり沼がありました。  そこには今や伝説となった大ナマズが住んでいます。  月の光も届かないこの辺り一体は深い海の底のようです。  それに比べれば、まっくら森の住人たちのすむところは、月の光の照る海の浅瀬のようでした。  大ナマズがそこにいると伝え聞いてはいるものの、確かめた者などいません。本当にそこにいるのかどうか、いたとしていつからいるのか、誰も何も知らないのです。  モジャリは、ごわごわの毛

          月をうむ 10

          月をうむ 9

          第九話 おとぎばなし  まっくら森の中でもひと際うっそうと木の茂る暗い暗い森のはずれに闇の洞穴はありました。森のルールを破る者を戒める牢屋です。  スズランランプにぼんやりと照らされたじめじめとした洞穴に一人ぼっちで置き去りにされ、ヒカリはしくしく泣いていました。  そこにモジャリがやってきました。 「ヒカリ、泣くなぁ。おいらがここから出してやるよぅ」  そう言うや、モジャリは洞穴の入り口に張りめぐらされた格子の枝をバキバキと壊しました。 「おいら、前はよくここに

          月をうむ 9

          月をうむ 8

          第八話 異変  空の月は鋭く細くなっていき、光もすっかり弱まって、暗い夜がつづきます。  ヒカリがまっくら森にやってきてからすでに十日はすぎました。  トタンの屋根に月が流れ落ちてこなくても、モジャリは毎日のようにヒカリのいるこびとの村にやってきます。  今では月を飲まなくても、もじゃりはおなかがいっぱいで、ヒカリのそばにいるだけで心が満たされていました。  やがて新月の日を迎えました。  そして異変が起きました。  闇に溶け出した月はついには消えてなくなります。

          月をうむ 8

          月をうむ 7

          第七話 半分の月 ヒカリがまっくら森にきてから一週間が過ぎました。  空に浮ぶ月はちょうど半分になっています。  ヒカリは毎日キノコ料理店でいっしょうけんめい働きました。  動物たちに生えたキノコを採るのはヒカリの仕事です。  牛の背中に生えたキノコを採るのは、小さなこびとにはたいへんなことでしたが、ヒカリなら牛によじのぼらなくても、かんたんにキノコを採ってあげられます。  今では森の動物たちともすっかり仲よくなりました。  警戒心が強い妖精たちも、愛らしいヒカリの姿

          月をうむ 7

          月をうむ 6

          第六話 月の宝石  モジャリは、また、こびとの村にやってきました。  満月の日から五日目の月は、まるい形ではなくて、レモンの形に似ています。  レモンの形をした月は、モジャリが飲んだ分だけ欠けてなくなっているように見えました。  モジャリは、きのこ料理店の窓にこっそり近づきます。  月の蜜より甘い蜜を味わわせてくれるヒカリにもう一度会いたかったのです。  けれどモジャリがいくら待ってもヒカリは姿を見せません。  モジャリはイライラ待ちかねて、窓をべんべん叩きます。

          月をうむ 6