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【東京六大学野球】RC27で見るプロ入りに必要な成績(野手・2023年版)【ドラフト】

 こんにちは、宜野座パーラーです。今オフシーズン中も自由研究として、(もう年が明けて1ヶ月くらい経っちゃいましたが)何本か書いていこうと思っています。ここでは2022年版に引き続き、「RC27」という指標に着目し、東京六大学の野手がNPB入りするためにはどの程度の成績を残す必要があるか、2023年ドラフトの結果を加味したアップデート版を書きました。

1.これまでと変わらず、RC27「6」以上がひとつの目安。近年は守備力がウリでも一定以上の打撃力が必要か

 本記事では2022年版の対象(2010年以降のドラフトを対象。社会人や独立リーグ経由でのNPB入りは指名漏れとカウント)に2023年ドラフトの結果を反映して分析しました。もっとも、NPBに限らず独立リーグを志望する選手もプロ志望届を提出する必要があるため、「プロ志望届提出=NPB志望」と言い切れないところもありますが、ここでは独立リーグを志望しプロ志望届を提出した選手であっても、便宜上は指名漏れとしてカウントしています。

 2023年は、野手では4選手がプロ志望届を提出し、上田希由翔(明大ー2023年ロッテ1位)と廣瀬隆太(慶大ー2023年ソフトバンク3位)の2選手が指名されました(図表1)。2022年版の記事では、RC27の指標の定義上、(RC27では守備力を織り込むことができないため)守備力に定評があればRC27「4」以上でも指名の可能性ありと結論付けましたが、2023年ドラフトでは、5.27を記録した熊田任洋(早大ートヨタ自動車[予定])が指名漏れしました。報道によればいわゆる「順位縛り」があったようですが、遊撃手というポジションを加味すれば、5.27は十分NPB入りが可能な成績だったと思われるだけに残念でした。

図表1:2023年ドラフト結果(野手)

 図表2はNPB入りした野手のRC27のランキング、図表3はRC27を1区切りにしたプロ入り率の推移です。2023年ドラフトで指名された上田、廣瀬のRC27はそれぞれ5位、19位に位置し、十分な結果を残しNPB入りを決めたと言えます。全般的なRC27の目安としては、やはり従前通り「6」がひとつの目安でしょう。6以上であれば約60%、8以上であれば約80%がNPB入りしているためです。一方で、2022年版の記事で捕手や二遊間のように守備力も特に重視されるポジションの選手については、「守備力に定評があれば」と条件付きで可能性ありと結論付けたRC27「4」以上「6」未満のゾーンの評価ですが、2023年は熊田が指名漏れしたものの、それでも約40%がNPB入りしているという結果は変わらないので、やはり可能性自体はあると言えそうです。しかし、熊田に限らず近年の指名漏れの例を見ると、朝日晴人(慶大ー三菱重工West、RC27=5.96)や瀬戸西純(慶大ーENEOS、RC27=4.42)など、二遊間の選手であってもNPB入りのために求められる打撃力のレベルが上がってきているのかもしれません。

図表2:NPB入り野手RC27ランキング(赤字は2023年指名選手)
図表3:プロ志望届提出人数とプロ入り率(野手)

2.RC27とは

 この記事で取り上げている「RC27」という指標についてですが、2022年版の記事に書いているので分量の都合上、割愛させていただきます。詳しくは以下の記事の「2.下準備:RC27とは」をご覧ください。

3.成績面では最終学年に大きく差がついた上田と廣瀬

 ここからは、2023年ドラフトで指名された2選手の通算成績を振り返ります(図表4、5)。

図表4:通算成績(上田希由翔)
図表5:通算成績(廣瀬隆太)

 ロッテから1位指名を受けた上田は、1年秋からレギュラーに定着し、打線の中軸を担いました。決して長距離砲の4番打者ではありませんでしたが、歴代4位の通算74打点を記録するなど、勝負強さが随所で光りました。RC27は通算で8.53と、図表2では5位にランクインしています。出塁率.404、長打率.513と、出塁能力、進塁能力ともに欠点が少なく、総合的な得点能力(=出塁能力×進塁能力)の高さを誇りました。

 一方、ソフトバンクから3位指名を受けた廣瀬も1年秋から主軸として出場を続け、歴代4位タイの通算20本塁打を記録しました。4年春までの量産ペースから歴代トップ(23本塁打)の更新も期待されましたが、ラストシーズンで失速したのは残念でした。4年時にやや成績を落とし、通算のRC27は6.87。大砲タイプなのである程度はしょうがないとしても、打率.260、三振率21.4%と確実性を欠いたことがマイナスに響きました。

 以上のように両選手のタイプが異なるので単純な比較は難しいのですが、3年秋終了時点のRC27は上田が7.65、廣瀬が7.37とそう大差がなく、総合的な打撃能力という意味では近しい成績を残していました。これが最終的にはRC27で1.5以上の差がついたわけですが、その要因を少し振り返ります。

 上田はRC27を3年秋終了時点の7.65から、最終的には8.53にまで伸ばしました。各指標が総じて向上しましたが、なかでも出塁能力の寄与が大きいと見ています。特に3季連続でリーグ優勝を決めた4年春は、3本塁打、12打点を記録するだけでなく、打率.372、出塁率.518、四死球率23.2%とチャンスを演出する打撃も多く見られました。

 一方、廣瀬のRC27は3年秋終了時点で7.37、最終的には6.87でした。特に4年春は5本塁打こそ記録しましたが、打率.192、6打点に終わり、一発以外での貢献があまり見られないシーズンとなってしまいました。3年秋までは試合を決めるような一発も多く見られただけに、数字以上に苦しんだ最終学年だったのではないでしょうか。

4.熊田は最終学年で駆け込みのアピールも一歩及ばず

 次に、惜しくも指名漏れとなった熊田の成績を振り返ります(図表6)。熊田は1年春の開幕からショートのレギュラーに抜擢され、4年間ほぼフルイニングで出場を続けました。3年秋にセカンドにコンバートすると打率.342、3本塁打と大活躍。再びショートに守備位置を戻して迎えた最終学年には春秋ともに打率3割台中盤を残すなど、打線の中軸を担うまでに飛躍しました。

図表6:通算成績(熊田任洋)

 通算成績で見れば、苦しんだ下級生時代の分も含まれるため、見栄えのよいものではないのが正直なところです。しかし、3年秋以降のアピールは目覚ましく、RC27は3年秋終了時点で3.74でしたが、最終的には5.27まで大きく改善しました。参考までに3年秋以降の3季分のみの成績で集計すると、RC27は9.70となり図表2の一覧でいえば堂々2位にランクインするほどでした。

 ここからはいちアマチュア野球ファンの邪推なので、ゴシップ記事を読むように話半分で読んでください。早大→トヨタ自動車のルートとなると、相当に早い段階で内定が出ていたものと推測されます。報道によれば「3位縛り」(ドラフト3位指名までならプロ入り)があったようですが、縛りがあろうがプロ待ちを許容した条件だったならば、プロ入りを目指す熊田の意思が最大限尊重された条件だったと言えるでしょう。社会人野球のスカウティング目線では、おそらく3年春の活躍度合いが最も重視されたのかもしれないと個人的には思いました。

 いずれにせよ、社会人野球の名門チームに進み、内野の要として2年間活躍を見せれば、文句なしでNPB入りできる選手でしょう。

5.社会人経由では指名解禁の山田・齊藤に注目

 最後に2024年ドラフトに向け、大学時代に指名漏れも社会人経由での指名が期待される選手を取り上げます(図表7)。1人目は指名解禁となる社会人2年目の山田健太(立大ー日本生命)です。2022年ドラフトではドラフト1位候補とまで言われながらも、指名漏れに泣きました。立大時代は1年春からレギュラーとして出場を続け、4年時にはキャプテンとしてチームを牽引しました。日本生命に進んで迎えた1年目の2023年はセカンドのレギュラーとしてプレーしました。都市対抗、日本選手権、主要JABA大会(予選を含む)のほぼすべてでスタメン出場し、打順は6番ないし7番と下位がメインでしたが、打率.365、1本塁打、15打点を記録しました。社会人1年目としては及第点の成績でしたが、NPB入りには正直物足りないところでしょう。特に、都市対抗や日本選手権の本戦で強烈なインパクトを残す必要があるでしょう。

図表7:2021年卒業以降の主な指名漏れ野手

 もう1人は同じく社会人2年目の齊藤大輝(法大ー東芝)です。タイプとしては強打の右打ち内野手で山田と被る部分も多い選手ですが、山田がスラッガータイプなら、齊藤は足も活かせる中距離タイプといったところでしょうか。法大時代は主にセカンドを守りましたが、社会人1年目の2023年は主に3番ファーストで出場しました。都市対抗、日本選手権、主要JABA大会(予選を含む)の成績は打率.358、1本塁打、13打点と、齊藤もそこそこの成績は残しました。特に日本選手権は大阪ガスを相手に初戦敗退でしたが、5打数3安打4打点と持ち前の勝負強さを発揮しました。

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