潮風のブルース #21

#21  再会の朝

朝の陽光が海に反射してキラキラと輝いている。
海面の小さなうねりが徐々に盛り上がり、
それが大きな波になって
漂うサーファーを飲み込んで行く。

サーファーは次々に立ち上がる。
光に包まれたヨシノリのシルエットが
白い飛沫から逃げるように滑っていく。
それはまるで、美しいスローモーション映像を
見ているようだった。
光の反射がにじみ始め
フォーカスアウトしていく。

「煙草ある?」
その声で目が覚めた。
海から上がったヨシノリが
私の顔を覗き込んでいる。 

どうやら私は、
砂浜で膝を抱えたまま眠ってしまったらしい。
私はバッグからメンソールの煙草を
取り出して差し出した。
ヨシノリが一本抜き取ってくわえる。
私がライターの炎を両手で囲って差し出すと、
ヨシノリの手が外側を取り囲んだ。

煙草の先端が赤く染まり、
煙が風に流されていく。
ヨシノリは横に座り、
火のついた煙草を私に差し出して、
「変わったんだね」と言った。

確かに、煙草を吸わなかった私が
今は吸うようになった。
夜街で働き、お酒も飲むようになった。 
気づかぬうちに私は変わったのか…
毎日の小さな変化は
自分では気づかないものかもしれない。

遠くでヨシノリの名を呼ぶ女の声がした。
振り返ると、パーカーを着た
ショートヘアの女が歩いて来る。
「彼女?」と私は聞いた。
ヨシノリは、イタズラが見つかった
子供のような顔をして笑った。

彼女はユキと名乗った。
私とユキは、ヨシノリを挟むようにして座った。
「来た」
そう言うと、ヨシノリは
ボードを抱えて海に入っていった。

(#22に続く/全#30)

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2月17日(日) ちがさき上映犬ポチ主催上映会
『 ひ か り の 国 の お は な し 
   ~ あの世の学校からのメッセージ ~ 』
(午前)10:30~ (午後)14:30~ 
各回定員50名、鑑賞料無料、赤ちゃん大歓迎
茅ヶ崎南口徒歩5分ジャム・イン・ザ・ボックス
(予約) ぎんしろう 090-7271-0766
https://kokucheese.com/event/index/550456/ 
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