潮風のブルース #22

#22 風の強い日に

風が強くなりはじめ、
波は次第に大きくなっていた。
私とユキは、
ヨシノリのサーフィンを眺めながら、
ポツリポツリと話し始めた。

ユキはヨシノリの部屋で
一緒に暮らしているらしい。
「私、あなたのこと知ってます」
ユキは私がヨシノリの部屋に
居候していたことを知っていた。
しかし、それは咎める口調ではなかった。

私が自分のこれまでの経緯を話し、
ヨシノリに感謝していると言うと、
「私も同じようなものだから」
そう言ってユキは小さく笑った。

詳しい事情は聞かなかったが、
ユキもまた家出をしたらしい。
一段と強い風が砂を巻き上げて
私たちを襲ってきた。

ユキは少女のような声をあげて
私のうしろに隠れた。
しばらく、私たちは砂の上でじゃれあった。
私は、不思議な連帯感を感じていた。
ユキとヨシノリに幸福になってもらいたい、
心からそう思った。

突然、ユキが不安そうな顔をして立ち上がった。
その目はヨシノリを探していた。
沖にヨシノリの姿はなかった。
ユキが海に向かってヨシノリの名を叫び始める。

波打ち際に、
一枚のサーフボードが打ち寄せられていた。
そのサーフボードに見覚えがあった。
私はその場にしゃがみこんだユキの肩を抱いて、
海にむかって目を凝らした。

その私の肩を背後からポンポンと誰かが叩いた。
髪を濡らしたヨシノリが
口に人差し指を当てて笑っていた。
許せない冗談だと思った。
私は思い切りヨシノリの頬を叩いた。 

私は二人を残し、
海に背を向けて歩き出した。

(#23に続く/全#30)

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2月17日(日) ちがさき上映犬ポチ主催上映会
『 ひ か り の 国 の お は な し 
   ~ あの世の学校からのメッセージ ~ 』
(午前)10:30~ (午後)14:30~ 
各回定員50名、鑑賞料無料、赤ちゃん大歓迎
茅ヶ崎南口徒歩5分ジャム・イン・ザ・ボックス
(予約) ぎんしろう 090-7271-0766
https://kokucheese.com/event/index/550456/ 
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