見出し画像

アーサー王学会へ行こう!

 こんにちは、吟遊詩人の妙遊です!
 さて、いきなりですが。

「アーサー王学会」の話をしよう。

 ご興味のございます方はどうぞ。

 ご案内する内容に従って、ピーという音の後に、該当の番号をプッシュしてください。

 そもそも全然なにもわからんという方は「1.前置き」を。

 トールキン好き、妖精さん好き、ガウェイン卿好きは「2.中英語朗読会」を。

 早く実際の様子を読みたいという方は「3.アーサー王学会」を。

 ピーーーーーー
(目次の該当のところをクリックしてください)

1.前置き


 学会といえば、研究者さんが研究者さんたち相手に研究発表して、それに対して意見がばんばん飛び交う、研究者さんたちの集まり……(すまん、私もそれくらいしか知らぬ)

 で。アーサー王伝説にもあります。
 学会が。
 一体何を研究するんだ、エクスカリバーの攻撃力の測定でもするのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、さにあらず。
 アーサー王を主題にした中世ヨーロッパの文学がイギリス・フランス・ドイツ・イタリアなどヨーロッパ中にあるので、その文学を研究されてます。

 あと、現代のゲームについても研究されてるのをお見かけします。
 私が初めていった回(コロナ禍よりさらに数年前)では、FGOのアルトリアとかランスロットがバーンとスライドに出てきてて、「即刻研究の対象にされとるやん……」と思うなどしました。
 研究者、なんでも研究する……
 文学には限らないようです。

 とにかくアーサー王に関する研究発表がもりもりされていて、特に中心は圧倒的に中世ヨーロッパの騎士道華やかなりしころのアーサー王文学(および言語)についての研究。
 英文学、仏文学、独文学、北欧文学の先生などいろんな先生が集結しています。

 (ちなみにエクスカリバーの攻撃力の研究は見たことありませんが、エクスカリバーがいろんな中世の文学作品にどう登場しているかは、「エクスカリバーの変遷」小路邦子(書籍『続 剣と愛と:中世ロマニアの文学』収録)にございます。エクスカリバーに詳しくなりたい方はご覧あれ)

 アーサー王学会は、正式名称は国際アーサー王学会。フランスで創設された学会です。
 今回のレポートは日本支部の大会です。国際学会は3年に一回、来年ありますね。
 国際学会はちょっとお金かかり過ぎるので私は行けませんが(次の次あたりお金貯めて行ってみたいなぁ……)行った先生の報告をお聞きしたいです!よろしくお願いします!!

 ちなみに私がアーサー王学会に行くようになったきっかけも一応お話ししておきますね。
 その昔、アーサー王伝説のガウェイン卿にハマったとき。

「なんでネットやら本やら、アーサー王伝説に関するデマを流しまくるのーーーー?!ヤダ!!ちゃんとした話が聞きたい!ウワーン!!」
となったからです。

 アーサー王伝説、皆言いたい放題いうので、デマが流れやすいんですよ。まあいいのです。現実の戦争や政治に関することとかじゃなければね。伝説だしね。伝説はもともとは流言飛語でしょうし。うんうんうん。
 でもね、私は人前で神話や伝説を語ってる関係上、お客様からいろんなご質問くるんですよ。そして「昔の文献にはこう書いてあるよ」という案内をお客様にするときに、間違ったことをお客様に言いたくないんですよね!そこはね、ちゃんとしたいよね!!くそう、私の仕事を邪魔するんでないわ、デマども!!(落ち着いて)
 デマを駆逐するには、専門家の先生にお聞きするのが一番。というわけで学会の門を叩いたわけです。

2.中英語朗読会

 で、今回も行ってまいりました。アーサー王学会。
 今年は神奈川県の日吉の慶應義塾大学日吉キャンパス。学会は毎年12月、学会に所属されている先生方のどこかしらの大学で開かれます(去年は龍谷大学)。

 さて学会の前に。
 となりの教室で、中英語の朗読会があります。
 諸事情あり(マジで諸事情あり)(先生には事前通知ずみ)途中から参加してまいりました。

 主催は慶應大学の高橋勇先生(中英語やトールキンに詳しい先生。最近出た『ユリイカ2023年11月臨時増刊号 総特集=J・R・R・トールキン』の執筆陣。BBCドラマ『魔術師マーリン』の監修もされてます)。
 その高橋先生が「中英語の朗読会開きましょうか?」と開いてくださいました。ありがとうございます〜〜!!

 中英語。中世の英語。ミドルイングリッシュ。たとえばアーサー王中世文学の傑作『サー・ガウェインと緑の騎士』も中英語。
 他にも中英語でいろんな中世ロマンスが書き残されていますし、一番の有名どころではチョーサーの『カンタベリー物語』が中英語です。

 さて教室前に着くと、もう朗読会がはじまっています。結構人がいらっしゃいます。そうだよね、みんな中英語の朗読ききたいよね!!

 こそこそ入っていったのですが。
 即行で見つかりました。

高橋先生「あ、もう資料ないです。ほかの人と一緒に見てくださいね」

(……私は時期はずれの転校生なのか?!)

 出鼻をくじかれ、ヨタヨタと席に向かうと、一緒に見るの、伊藤尽先生なんですが!!なんで学生側にいるんですか!!先生じゃないんですか!!(信州大学の伊藤尽(盡)先生。中英語や北欧の言語、トールキンに詳しく、エルフ語の本を出されています。最近は『指輪物語』の最新版の編集協力にお名前がありました。すごく忙しそう。中英語の朗読がめっちゃ上手い。そしてアーサー王関係の場では、緑の騎士的なファッションを極めようとなさってるのか全身緑!すぐに伊藤先生だとわかります。ファンタジー!!)

 はからずも一緒に見ることになった伊藤先生。
 今ココを読んでますよ、とペン先で示してくださったり。私にもわかるようにメモを書き込んでくださったり。大変お世話になってしまった。
 ありがとう存じます、ベルシラック殿……

 さて本題の朗読会。
 まずは中世ロマンス『サー・ローンファル』から。
 わたしが小さい頃から好きな妖精譚じゃないですか!!こないだ大阪でライブでやったばっかりですよ!!hooooooo〜〜〜!!ありがとう、高橋先生!!

 ここで『サー・ローンファル』のあらすじ。
 アーサー王物語モノで、アーサー王妃が悪役。主人公のローンファル卿にコナをかけてきます(不倫ですね)。
 王妃からの恋の誘いにローンファル卿は「"私の恋人の侍女の一番器量が悪い人"ですら、貴女より美しいです!(そして私の恋人はもっと美しいです!)」と言い返してしまう。

 怒った王妃の策略でローンファル卿は死刑になりかけます。しかしそこは円卓の騎士たち。友を庇ってくれます。「その王妃より美しいという恋人を連れてきて、美しさが証明できれば卿は無罪」と決まります。

 そしてローンファル卿の美しき恋人、妖精の国の王女様トリアムールが、アーサー王の宮廷に現れて、その美しさを証明するのでした……
 あらすじ終わり。

 朗読会に戻りまして。そのトリアムールが、シャラーン✨✨と登場するシーンの朗読です。

 中英語の朗読をお聞きしてると、やっぱり現代英語とはなんか違う……なんかこうモッタリとしてるんですよね。
 たとえばクリームなら、ピン!と角が立ってるホイップクリームは現代英語。
 カスタードクリームのちょっと硬めのをたっぷり木べらですくったらモッタリしてちょっと落ちにくい……みたいな感じが中英語。
 ですかね!!(お菓子作り好きしかわからない例えですまない)

 なかなか中英語を読んでる人はふだん周りに一人もいないので(それはそう)いっぱいお聴きできるのが嬉しい……
 こういうのは、いっぱい聴いて慣れるのが一番ですからね。

 あと朗読だけじゃなく、高橋先生は内容についての解説もしてくれます。

「(トリアムールが乗ってる)馬の鞍、宝石とかビカビカついてますね、なかなかこういうのは現実には……いや、正倉院ならあるかもしれない?」
「(トリアムールが腕に)鷹をとまらせてますけど、普通女性は鷹狩りしないはず……?男性的ですね」

(妖精さんすごいお金持ち……)
(ガラドリエル様みたいな感じ?!トリアムール)

 トリアムールの解像度が上がったひとときでした。
 正倉院に行ったら会える……(鞍に)

 次にガウェインの別れの挨拶。
 アレです(阪神の優勝?)。
 本『サー・ガウェインと緑の騎士』の最後に収録されている、城の主とのお別れの挨拶文っぽいアレ。

「ガウェインの別れの歌」'Gawain's Leave-taking'
 その元ネタが披露されました。

 「ガウェインの別れの歌」はトールキンが、特にガウェインに関係ない中世の詩を編集して「ガウェインが言ってるっぽい」感じに仕立てたものなんです。
 なんでも宗教色強い箇所は、ばっさりカットされてるのだとか。トールキンさん容赦ない。

 死への覚悟をあらわし、人たるものかくあれかしな態度を示した詩。良き……

 そしてこのとき、伊藤先生が鞄からヌッとなんか取り出した!!
 それトールキン&ゴードンの校訂本の箱入りの上製本では?!めっちゃくちゃ綺麗な状態なんですが?!

 無論、一緒に見ている机に出てきてるわけです。
 ガウェインのお別れの挨拶のシーンのところを開けてくれるわけです。

 いや、取り扱いが怖い……!!
 貴重書じゃないんですか?!!!それ!!(知らんけど)
 しかも、めっちゃくちゃ綺麗な状態なんですが?!

 怖い。
 万が一、手が引っ掛って落ちたりなんぞしたら怖い。
 しまって!伊藤先生、しまって!!

 プルップルしてたら、伊藤先生がスッ……としまわれました。

 フゥ〜〜〜!!
 よかったテレパシー通じた!!(知らんけど)

 それにしても素敵げなる本でした……

 コノトキノコトハ、ホカニナンニモオボエテナイヨ(すみません)。

 そのあとは『サー・ガウェインと緑の騎士』の朗読。

 そして確かこのあたりで不破有理先生が離脱!「昼ごはん食べますので!」と潔い離脱。かっけぇ✨(不破先生。アーサー王学会の副会長や会長をされたことがある。とにかくすんごい生気に溢れた元気な先生。パワフル。陽の方。眩しい。特にモードレッド像を中心に伝承を研究されていたり、出版文化を研究されてたり。最近は『「アーサー王物語」に憑かれた人々』という本を出版されています。)

 さて『サー・ガウェインと緑の騎士』の中英語朗読に戻りまして。

 これは冒頭ですね。
 ここの部分伊藤先生が朗読めちゃくちゃ上手いんですよ。頭韻がきいてる、頭韻が。

 そう、韻なんですが、一般的な韻って脚韻じゃないですか。

《例 オレは父ちゃんマジリスペクト
   おまえの母ちゃんマジエクソシスト》

 でも中英語は頭韻があるんですよ。

《例 頑強なる ガウェイン卿 我慢強く
   雷鳴轟く ランスロット 乱闘す》

 みたいな……?(日本語例ですまない)

 なんか頭韻の方がゴリゴリ硬い感じなんですよね。武骨感ある。
 脚韻の方は、ゆるり柳感。

 伊藤先生はその頭韻ガッツリ重い朗読。対して高橋先生はやんわり流麗脚韻っぽい朗読。

 で、で、私が伊藤先生の朗読がめちゃくちゃいいという話をしていたので、高橋先生が「なので交互に読みましょう」とおっしゃってくださり。
 高橋先生と伊藤先生が交互に読んでくださいました。

 ウフフフ、お聴きできて嬉しい……✨✨

 そんな風にして朗読会は終わりました。 

 あと途中、細かいところでいえば、中英語に特徴的で、現代英語にはない文字の読み方を教えてくださったり。

 さらには「これテキストの方が文字抜けてますね」「〇〇の版だとこうなってるんですよ」テキストの問題を指摘されたり。
 先生同士で「この単語どう読むんだっけ?」と相談されたりしてました。
 教室内で先生がインフレしてましたね……

 その後高橋先生から『ガウェイン卿とラグネル姫の結婚』の翻訳をいただきましたーー!!ありがとうございます!
 先にデータではいただいていたのですが、今回は紙版を😌
 高橋先生の翻訳はめちゃめちゃ注釈が充実してるので大変有り難いのです。
 この演目、絶対そのうちまたやりますからね。また細かく読ませていただきます、ウフフフフフフフ。

3.アーサー王学会

 さて。慶應義塾大学日吉キャンパスにて、アーサー王学会はじまりはじまり。

 今回、人多いですねー!!30人くらいいましたかね。大部分は会員の先生方ですが、一般の方もいらっしゃいます。たぶん私のライブにいらしてくださってた方も!いらっしゃる!

 前回の京都では、会員オンリーで実際に来てたのは9人くらいだったと思うので(zoomとハイブリッド。zoomはたくさんいらしてました)まだコロナ禍だなぁ……という感じで、ちょっと寂しい雰囲気だったのですよね。
 コロナ前はめっちゃワイワイしてたし、一般参加も多いし、一般参加も懇親会にもりもりいました。
 今回からようやく活気がでてきたなあ。

 紅茶もトワイニングやアフタヌーンティーティールームのティーバッグが置かれ(紅茶好きは紅茶を見ているのだ……)、コーヒーも置かれ、いろんな方の差し入れらしき茶菓子も満載。そのあたりも充実した感。
 茶菓子は余るとちょっと悲しい(前回そうだった)ので、遠慮なくいただきます。

 さてさて、どなたが来てるかあまり確認できないうちに学会開始で慌てて席へ。

 まずは岡本広毅先生(立命館大学の先生。映画『グリーン・ナイト』の監修、『ガウェイン卿の物語』の翻訳、『いかにしてアーサー王は日本で受容されサブカルチャー界に君臨したか』の編集など。最近はNews Picksで連載中。研究発表はガウェインが登場することが多く、ガウェインファンの我、狂喜)の研究発表。テーマは、

『J.R.R.トールキンのガウェイン像 ──"ofermod"と"chivalry"に着目して』

 絶対面白いヤツじゃないですか!聞くー!!
 でも岡本先生見当たりませんが!

他の先生
「岡本先生は今オーストラリアです」

 オーストラリアかーい!!
 え、zoom?
 zoomだ。
 ハイテクな世界になったのう(お茶啜り)

 気を取り直して。
 聴きませう聴きませう。

 その前に解説。トールキンは『指輪物語』の作者ですが、研究者でもあり。
 14世紀の作品『サー・ガウェインと緑の騎士』はトールキンが研究やら翻訳やら講演やらを手がけているものです。
 また10世紀の作品『モールドンの戦い』に関しても論文を書いています。解説終わり。

『サー・ガウェインと緑の騎士』と『モールドンの戦い』を同時期に手がけていたトールキン。

 どうも「行き過ぎた」騎士道はよくないと思っていたようで。

『モールドンの戦い』のお話は、敵であるヴァイキングに通られたら不利になる道を、自尊心を煽られた太守が通してしまい、それによって味方が窮地に追い込まれ、家臣が必死で抗する……というもの。

 負けるような愚かな真似を、自尊心のためにむざむざやってしまう、お馬鹿さんな太守!!という話ですね。

 そういう愚かな行き過ぎた誇りや驕りがofermod(オーヴェルムード……かな?)であるよう。面白……というか言葉の響きがイイ。

 で。その太守の家臣がかっこいいんですね。家臣は太守のせいで危機に陥るわけですが、

「我らの力の衰えし時に、心より勇ましく、決意はより堅く、魂はより誇り高くならん!」

沼田香穂里訳

 家臣の心映えが太守を上回る素晴らしさ!!

 この『モールドンの戦い』の家臣にことよせて、ガウェインの話に持っていく岡本先生。
 目のつけどころがシャープです。

 しかしちょっと期待してた「アーサー王を『モールドンの戦い』の太守に見立てる」というのはなかったですね……(アーサー王は自分が命を落とすかもしれない冒険に挑んじゃう癖があり、それをofermodとして断罪されるのでは??とワクワクしてた)(しかし我らが王への侮辱を、岡本先生控えられたのかもしれない)(しかしそれしきのこと、研究者が気にするだろうか)

 トールキンさんは見せびらかしのための過剰な騎士道が嫌いで、どちらかというと武骨武人派のようですね。実を取る。

 なにせトールキンの書いたアーサー王物語にこうありますからね。

最も優れていたのがガウェインで、その名声は
時代が暗くなるにつれて増し、忠義に厚く恐れを知らず、
無双の騎士たることを 何度も示し、
没落していく世界の 守りであり砦であった。

『トールキンのアーサー王最後の物語──注釈版』原書房  J.R.R.トールキン著 小林朋則訳


 これを初めて読んだとき、「ヨッッッッッシャ、トールキン先生ガウェイン上げの人ーーーーー!!」と思ったものです。
 岡本先生も今回の発表でこの箇所を引用されていて、大変嬉しかったです。

 それにしてもトールキン先生はフランスのチャラい方のガウェインを無視されてますね。
 そこらへんも紹介されていくのでクスッとしてしまいます。
 岡本先生の発表は面白いなぁ……。

 そんなこんなで研究発表終了。

 質問で『ホビット』や『指輪物語』への影響の話がちょこっとあったりも。

 発表を聞き終えて。
 私が個人的に思ったのは、トールキン先生も戦争経験者だし、変に誇り高過ぎて馬鹿な真似をする軍人に遭ったりして「クッ、この馬鹿が!」と思ったりとかしたのかなあ……と(あくまで私の想像です)。

 あと『ガウェイン卿と緑の騎士』でガウェインがめちゃくちゃ良い指輪の贈り物を断るシーンあるんですが、あれ、トールキン先生、好きだったりするのかな?とも思ったり。指輪物語も指輪を捨てるお話ですからね。

 ん〜想像が広がる😌
 いい研究発表でした……引き続き岡本先生の研究発表(及び論文)お聞きしたいですね。

 そしてここで、我、頭痛がひどくなってくる。

 なぜ……
 いや、アレだな、昼ご飯!!抜いたから!!
(あと脱水症状だったのかもしれない。紅茶は飲んでたけど、水を飲んでなかった)

 おかげで次と、次の次の発表は青息吐息でした。許したまえ……わずかに聞き取れたことを記します。

 次の発表は一條麻美子先生(東大の先生。『写本の文化誌』の翻訳をされています。)

 研究発表のお題は
「イゾルデの父はなぜ「アフリカ生まれのグルムーン」なのか?」

『トリスタンとイゾルデ』を著したゴットフリート・フォン・シュトラースブルクが、いかに野心的に作品を創っていたかを探る、研究発表。

 ゴットフリートは、一昔前のクレティアン・ド・トロワ、ハルトマン・フォン・アウエ(いずれもアーサー王ものの作品を残してる詩人さんたち)を超えるものを創ろう!!としたのでは?という。

 作者の野心、いいですね〜。向上心あるの素敵。

 クレティアンやハルトマンは「昔の物語世界-詩人が語る今」の二つの時しかないけど。
 ゴットフリートは「アーサー王の時代-アーサー王亡き後-詩人が語る時代」と複層的になっている。

 また、実在の人物を出してくることで、年代記の性質を帯びさせ、歴史小説のように。
 例えば、ほぼなにもしないけど、名前だけは実在人物のイゾルデの父がいたり。
(知ってるこれ、「物語の中で、本筋になんも関係ないのになぜか印象的にフツーのことが描かれていたら、現実にあったことがまぎれこんでることを疑え、というアレだ)。

 ゴットフリートが讃えるトマも歴史的な話をしてくれている……ゴットフリートもそれをやってるのでは。

 あとは、アーサー王がローマからの朝貢を蹴ることと、トリスタンがモロルトからの貢物を蹴ることが重ねられていて「アーサー王≒トリスタン」になっている……

 ……私の意識が受け止めれたのはここまででした、すみません!!
 たぶんすごくスケールのでかい話だったらしい。この後発表される渡邊先生もちょっと放心してらしたので……。

 そして渡邊徳明先生(日本大学の先生。よくアーサー王学会で研究の発表やシンポジウムなどに出られている。精力的。今回はトリスタンとニーベルンゲンの歌なのに、意識が遠くなっていてほとんど聞けず……無念&申し訳ないです)の研究発表。

 お題は
「『トリスタン』の作者性を巡る近年の議論について」

 もうほとんど意識がない我……トリスタンなのにトリスタンなのに!!

 社会的な名誉と内的な名誉について話されていたり、トリスタンとイゾルデは二人の世界という閉じたもので……みたいな話をされていたのですが、肝心の内的な名誉ってなんだろう?愛の喜び??みたいに疑問に思いながらお聞きしてたのに……体調が言うことを聞かない……ギブ……無念……

 元気だった方は、コメント欄に……渡邊先生のレポを……願います……。

 休憩時間。
 さすがに頭痛がガンガンガンガンするので、高宮先生の講演の間は、外で休み&昼食摂るべきか……

 ヤダーーーッ!!高宮先生の講演面白いのに!聴きたいーーーッ!!

 でも会場で体調崩すのはさすがにあかんし、撤退すべきか……
 とりあえず薬は飲む。飲んだ。

 さらに悩んでいると、椿侘助さん(私がアーサー王のガウェイン卿にハマり、追いかけ続けている前を爆走されてる我が先達。ガウェイン推し。ランガウェ推し。昔も今も爆走でアーサー王の中世文学を猛烈に読まれたり、内容の比較検討をされていたり。研究者の先生方がさすが椿さん、というくらいのつよつよ。『いかにしてアーサー王は日本で受容されサブカルチャー界に君臨したか』のコラム担当。)とお会いし。

 もう私は限界であることを伝えると「SOY JOYあるよ、食べる?」と。

 …………神!!!!!!!!

 パーシヴァルが、騎士様を初めてみてハワワワワワ✨✨となった気持ちを味わいましたよ。

 有り難く生きま……じゃなかったいただきます!!

 さてさて、ぐるりとあたりを見回します。
 渡邉浩司先生(中央大学の先生。『アーサー王神話大事典』を翻訳されている。私が初めて読んだ論文をお書きになった先生。めちゃくちゃ面白かったため、それ以降ずっと先生の論文やら翻訳やらを拝読中。言葉を選ぶセンス、テーマを選ぶセンスが抜群に良くて、毎回大変良き……さらには私が今年書いた書評二点は、渡邉先生のおすすめで書かせていただいたもの。おかげさまで今年めっちゃ活動をする気力が湧きました。圧倒的大感謝!!)いらっしゃらないな……ウッ、寂しい……

 小宮真樹子先生(近畿大学の先生。『いかにしてアーサー王は日本で受容されサブカルチャー界に君臨したか』の編集。スマホゲームのFGO関係でもコラムをいくつか書かれていたような。見かけた方も多いのでは。研究発表ではドラクエにみるアーサー王伝説要素をあぶりだされたり、ゲーム関係にも強い。もちろんゲーマー。ランスロット推し。アーサー王学会に初めて来たときにお世話になり、会員になるときにもお世話になった先生。面白いTシャツを着てらしたり、円卓ケーキやドラクエケーキを作られてこられたり、とにかくめっちゃ面白い。小宮先生の学生さんは幸せ者。)もいらっしゃらない……
 忙しいお方は参加できなかったりもありますね。

 大学の先生はお話をお聞きしてると目まぐるしくギュルッギュルにお忙しいので、本当大変そうです。どうかご自愛ください。

 さて高宮先生の講演!(高宮利行先生。『アーサー王伝説万華鏡』他多数執筆。アーサー王学会の会長を2回されてるとか。慶應義塾大学の名誉教授で、先生たちのさらに先生に当たる方のようです。高宮先生の峻厳なる指導も学会で目の当たりにしたことありますが、すごく厳しいけど、めっちゃ真っ当に指導されている。ハラスメントとかではない、完全に学問の上での(ただしめっちゃ厳しい)指導。これは慕われますわ……。ちなみにいつも気迫がすごすぎて、話しかけることができないのは私が骨なしチキンだからですスミマセン骨入れてきます)
 前にお聞きしたときも「おお、研究者の歴史!」という感じで面白かったんですよね。

 資料を読む元気はない(目が乾燥しておる……目を使ったら死ぬ……目薬持ってきましょうね、我……)ので、耳に集中。

 めっちゃめちゃ面白い。そして強い。ちょっと怖い。研究者たちの丁々発止。

 これ書いていいものなの?!書くとまずくない??!わからん!!書かんときます!!

 『トリスタンとイズー』のベディエさんとすかもでてきて、あらあらあらあら🩷と嬉しくなったり。

 あとは日本人研究者が世界でどう戦うか……なお話でもあったのかもしれません。そうか、そうやって切り拓かれたのか、という。

 お聞きしていてわかったことは。
「丁寧に仕事しましょう」
 ですね。

 すごく普通で真っ当。しかしそれを思いっきり貫き通すと強い。めっっちゃ強い。
 そういうお話でした。

 さてその後は休憩を挟んで情報交換フォーラム。

 私もここで吟遊詩人活動の報告をする予定。
 資料を全机に配布しにいきました。

 さて、その前に小路先生の舞台解説!(小路邦子先生。今回でバトンタッチなのですが、アーサー王学会日本支部の会長を務められていました。いつもお洒落。前回はヘイスティングスの戦いのHERMESのスカーフをされていました。わたしが初めてアーサー王学会に来たとき
はたしか、山田南平先生のアーサー王もの少女漫画『金色のマビノギオン』を皆様に勧めて回ってらっしゃいました。映画『キング・アーサー』の評もされてたことありますね。とにかくいろんなアーサー王ものをしっかり押さえられています。論文も面白いですよ。すでに文頭で紹介しました「エクスカリバーの変遷」は必見。例のごとく私は骨なしチキンなので話しかけていいものか躊躇うのですが……いつもサラッと話しかけてくださるので甘えてしまっています……ありがとうございます。がんばれ私!)。

 今年のアーサー王舞台3つ、総解説です。
 当然ながら全部押さえられていて、あと過去作との比較とかもされる。しっかりみちみち解説です。
 そのうちのちょこっとだけご紹介。

『キング・アーサー』はメレアガンの伊礼彼方さんのファルセットが素晴らしかったそう。あとエクスカリバー守ってるガウェインが良かったのだとか。

『エクスカリバー』は韓国版はモルガンの恨みつらみ深めで日本版はそうでもないらしい。あとアーサーが闇堕ちするのだとか。

『キャメロット』は有名なブロードウェイ作品だそうで、T.H.ホワイトの『永遠の王』が下敷き。ランスロットが原作では醜男だけど、醜男じゃなかったそうな(ランスロット醜男設定ってサトクリフだけじゃなかったのか)。
 映画版もあってトムという子がトマス・マロリー(アーサー王物語の最大手と言っても過言ではない中世イギリス作品『アーサー王の死』の作者)だそう。それがとてもいいのだとか。

 あとパンフレットや原作本もズラッと展示されていました。豪華〜!!

 そして私も吟遊詩人活動報告。
 7月からのアーサー王ものを手がけた件をご報告。
 書評は書誌情報に載りますが、吟遊詩人活動は書誌じゃないから載らないですからね。


 後は会員だけの総会。
 これは外に出されてないのでナイショ。
 新規会員にありえない方が入ってたのもナイショです。

 その後は懇親会。
 慶應大内のHUBで行われます。
 HUB結構好きなので嬉しみ。

 その前に事務的なことで辺見先生にちらっとお話(辺見葉子先生。慶應大学の先生。ケルトものの論文やトールキンものの論文を書かれていて、私は竪琴の研究を大変参考にさせていただいております……ものの、例によって骨なしチキンゆえ、お話が!できない!事務的な話はできるけど、それ以上はどうやって切り出したらいいものやら、皆目見当がつかない。うう……がんばれ骨だ、骨をいれるんだ……)

 そしてこのとき初めて作家のひかわ先生(ひかわ玲子先生。アーサー王ものだとアーサー王宮廷物語のシリーズを書かれています。この間SF大会で高橋先生を引っ張ってきてトールキン作品の朗読会を開催されていました。強い)とお話しました。
 なんというか……気風のいい方でした……!!

 そしていろんな先生方とお話お話。ようやくお話できて嬉しかったです!!

 さて、これでアーサー王学会のレポートも終わり。
「行こうかな、どうしようかな」と気になってる方の参考になれば幸いです!!

(私は結構な人見知りなので、そこは参考にしないのをおすすめします。)

 そして研究者の先生方、爆走でいろいろ書きまして失礼いたしました。
 「ここらへんの内容は伏せておいてね」「あ、解釈間違ってるよ、ソウジャナイ」というのがありましたら、どうぞDMやメールなどくださいませ。(特に発表者の皆さま)

私宛メモ
◎今後の課題◎
①レンバス、水、目薬を持参せよ。
②学べ。
③骨を入れよ。

 ではではお読みいただき、誠にありがとうございました!!
 吟遊詩人の妙遊でした。

 最後にちょっとライブのお知らせを。
 今年9月に『ランスロット卿ガウェイン卿』のライブをさせていただいた、中世ルネサンスブックカフェテューアさんにて。
 ケルト英雄譚『クー・フーリンとフェルディア』のライブを開催します!!

お聴き逃しなく!


浮き沈みはげしき吟遊詩人稼業を続けるのは至難の業。今生きてるだけでもこれ奇跡のようなもの。どうか応援の投げ銭をくださいませ。ささ、どうぞ(帽子をさし出す)