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139) 健康食品や美容関連商品は高価なほど良く売れる

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術139


【自由診療では、安いところに患者が多く集まるわけではない】

インフルエンザの予防接種(ワクチン)の時期になりました。
インフルエンザの予防接種は自由診療であるため、価格は各診療所においてバラバラです。多いのは1回3000円から4000円くらいですが、2000円くらいのところもあれば、6000円以上のところもあるようです。高齢者など一部の人は自治体から費用負担があります。私の場合は高齢者(65歳以上)なので自己負担は2500円でした。
 
安くしているところは注射液原価にわずかの手数料で患者さんへのサービスのつもりでやっているはずです。当然、安いところに行く患者さんの方が多いはずですが、平均よりも高いところへ行く患者さんも結構多いということです。
 
インフルエンザワクチンはどこで注射しても、成分は同じで効き目に差はないはずです。国内には4社のメーカーがインフルエンザワクチンを製造していますが、使っているウイルス株は同じなので、基本的に効果に差はありません。
 
しかし、安い価格で注射しているところは粗悪品を使っているのではないかと、間違った判断をする方もいるようです。つまり、医療機関では同じものを使っていても、安いところよりも高いところのものを信頼してしまうという患者心理が働くようです。
 
インフルエンザワクチンを注射していても、インフルエンザにかかることがあります。そのとき、1回5000円のクリニックで注射を受けた人は運が悪かったとあきらめるだけですが、1回2000円でワクチン接種を受けた人は、粗悪品を打たれたのではないかと疑うかもしれません。
 
つまり、患者さんへのサービスのつもりで価格を安くしても、必ずしも感謝されるわけでは無いという現実があるのは確かです。

そのため、健康食品や美容関連の商品の販売では、価格をやや高めに設定するというのが、この業界の常識になっています。同じものでも、高いものほど良く売れるという現実があるからです。

この戦略は、特に日本で有効です。日本人は高いものほど良いと考える人が多いようです。私自身、インターネットの通販でサプリメントを購入するとき、同じような製品が多く並んでいるとき、最安値のものは避ける傾向があります。「悪かろう安かろう」という考えを意識するからです。



【値段の高いものが効くと思う心理】

高価なものほど品質が良く効き目がありそうな気になります。人間のこの心理をついて、安いものでも高く売った方がよく売れると、健康食品や美容関連製品などではわざと法外な価格にしている場合もあります。
 
また、入手しにくい希少なものほどひょっとしたら良く効くのではないかと期待感をもたせます。少ししか採取できない希少な薬草を、高級な包装で販売していると、非常に高額でも購入してみたくなります。
 
しかし、高価なものほど効くわけではありませんし、希少だから効くという根拠もありません。単なる錯覚です。しかし、このように高いものほど効くのではないかと患者さんが思う心理は治療現場においてはよく経験されます。
 
「値段の高いものが効くと思う心理」はプラセボ効果と関係しています。
プラセボ(プラシーボ, placebo)というのは「偽薬」という意味で、偽の薬であっても薬を飲んだという暗示によって治癒効果が現われることを「プラセボ効果」といいます。

プラセボ効果だけでも30%とか40%もの人の症状が改善することが知られています。このようなプラセボ効果の存在は心理効果や暗示作用が、体の治癒力に強く影響することを意味しているのです。
 
米国のデューク大学のダン・アリエリー教授らは、値段の安い偽薬(プラセボ)よりも高い偽薬の方がプラセボ効果が高いことを証明しています。

痛みを軽減すると偽って偽薬(実際はビタミンC)を投与するときに、その偽の鎮痛剤を1錠2ドル50セントと言って投与した場合と、1錠が10セントといって投与した場合では、その偽薬の鎮痛効果は、1錠2ドル50セントと言って投与した場合の方が明らかに高かったという実験結果を報告しています。(JAMA. 299:1016-1017, 2008)
 
つまり、価格が高い方が、期待感が大きくてプラセボ効果も大きく現れるということのようです。この研究でアリエリー教授は「人を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に贈られるイグ・ノーベル賞医学賞を2008年に受賞しています。


図:偽の薬であっても、薬を飲んだという暗示によって治癒効果が現れ、これをプラセボ効果という。プラセボ効果は、薬に対する期待感や、治療を受ける安心感、医師に対する信頼感などによって高くなる。さらに薬の値段が高いほどプラセボ効果が高くなる。漢方薬や健康食品も高価なものほどよく売れるのは、これと関連している。
 
 
プラセボ効果は、心が治癒力を誘発することを示唆している非常に重要な現象ですが、科学的な検討はほとんどなされていません。臨床試験を行うときプラセボ(偽薬)を投与する対照群を設けた二重盲検試験が必要なのは、偽薬でもプラセボ効果で薬効が現れるためです。つまり、プラセボ効果の存在は西洋医学も認めています。しかし、西洋医学ではプラセボ効果の原因を説明できません。

それは、プラセボ効果が、目にみえない心理的作用であり、再現性のある現象ではなく、客観的に評価できないために、西洋医学のパラダイムの中では対処できないという理由にすぎません。


一方、東洋医学では「心が治癒系に作用する」という解釈でこの現象を簡単に理解しています。
 
このようなプラセボ効果の存在は心理効果や暗示作用が人間の身体の状態にいかに重要な影響を与えるかを示しているのであって、気持ちの持ち方も治癒系に強く影響することを証明しているのです。「病は気から」という言葉があるように、自然治癒力はこころと切り離して考えることはできません。
 
患者さんが、その薬に期待感を持てば、プラセボ効果は高まります。たとえ、薬効成分が入っていなくても、信じて使えば期待感によるプラセボ効果で3~4割の人に治療効果が出てきます。

そして、この期待感は高額なほど高まります。したがって、高額なほどプラセボ効果が強くなるので、健康食品や美容関連製品などは価格が高いほど効果が出やすく、リピートも増えるため良く売れるという結果になります。
 
特許の切れた薬がジェネリック(後発)医薬品として安く売られていますが、安いということを強調して宣伝するのは、効き目を弱めているのかもしれません。一般に、ジェネリック医薬品は先発品に比べて効果が落ちるという意見もありますが、安い薬という理由もあるかもしれません。安価だと患者の期待感が低下するためです。
 
また、全く効果がない健康食品でも、「価格が高い」という理由だけでプラセボ効果を強めて、実際に効果を発揮する場合もあります。この場合は、製品の成分ではなく、価格が有効性の原因となります。
 
つまり、薬や健康食品などの効果には、薬効成分による薬理作用に加えて、期待や安心や信頼によるプラセボ効果も加わっているのです。価格が高いとプラセボ効果は高まるという点も重要です。(下図)


図:医薬品や漢方薬や健康食品・サプリメントや化粧品などの効果には、それらに含まれる薬効成分による薬理作用に加えてプラセボ効果も含まれる。プラセボ効果は、期待感や安心感や信頼感によって高まるが、価格もプラセボ効果に関与する。



【期待感や安心感や信頼感をもたせるのも薬効の一部】

健康食品の宣伝は誇大広告が多いのですが、その内容があまりに事実からかけ離れているとウソになるのですが、適度な誇張は効果を高めている可能性があります。

がんの患者さんが健康食品やサプリメントを選ぶときの最大の基準はその広告に記載されている内容に、どれだけの期待感を持つかにかかっています。期待感を持てばもつほど、たとえその健康食品の効き目が弱くでも(あるいは無くても)、プラセボ効果の存在で、ある程度の効果は現れるのです。
 
多くのがん患者さんが、多くの健康食品を利用しています。その中には単純な食品に過ぎないものも多いのですが、非常に効果を実感されている方も多くいます。そんなものが効くわけが無いと心の中では思っていても、プラセボ効果が現れている可能性もあるので、その主張や感想は尊重しています。

多くの医師は、そのような効果はプラセボ効果だと言って簡単に否定するのですが、プラセボ効果の方が本物の医薬品よりも自覚症状を改善したりQOL(生活の質)を高めることがあることを認識して、その効果を利用することも大切かもしれません。
 
そのように考えると、多少誇大な宣伝や、やや高めの価格も、あながち悪いとは言えないかもしれません。プラセボ効果を高める効果があるという点では、誇大広告や価格の要素も無視できません。
 
病気の治療において、プラセボ効果をうまく利用できることには重要な意味があります。信じられる薬ほど、薬理作用以上の効果を発揮することができるからです。
 
漢方薬は、2000年以上の経験の重みをもっており、まだ解明されていない未知の作用もあります。人によって効き目は異なりますが、薬が合った場合には劇的によくなることも知られています。そのような事実が漢方薬への期待感を高めています。
 
がんなどの難病の治療においては、まったく方法がない、頼るものがないという不安感があると、病気の進行は早まることが知られています。このような不安感や絶望感は免疫機能を弱めることが精神神経免疫学の研究で証明されています。ひょっとしたら自分には劇的にきいてくれるかもしれないと、期待をもてる薬があることはそれだけで、QOLを高め、免疫力を高めることになるのです。

がんに効くかもしれないと宣伝されている健康食品を、多くのがん患者さんが利用している理由は、この点にあります。
 
また、治療する医師も、その医師が漢方薬に懐疑的な気持ちで処方していたら、プラセボ効果も低くなります。漢方治療が効くと信じている医師からの説明を受ければ、信頼感や期待感によってプラセボ効果が高まると思います。
 
効果を高めるために品質を追求すると費用が高くなります。しかし、値段があまり高いと続けるのが大変です。一方、あまり安いとありがたみも無く、プラセボ効果も無くなります。

できるだけ効果のあるものを、できるだけ安くという目標は、本来なら最も評価されるべきですが、価格が効果に影響するというプラセボ効果の存在によって、必ずしも正しくないかもしれません。

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