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NovelJam2021 「Innocent」を読んで

NovelJam2021
M☆A☆S☆H著 『Innocent』を読んで

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正直、冒頭の数行を読んで後悔した。
なんて作品を最初の1冊に選んでしまったのだ。もっと楽しく水を飲むように読める作品が有っただろうに。
それでも私はこの作品を真っ先に読みたかった。
それは、表紙やプレゼンによるものもあるが、なによりも本作の著者のことを知りたかったのかもしれない。

彼のことは前回のNovelJam、またはブンゲイファイトクラブで盛り上がっている最中にTwitterでフォローした。
私は彼の言葉をタイムラインで読みながら彼の持つミステリアスな雰囲気を感じていた。その彼が「私小説」を描いたと言えば、私は手に取る他なかった。

冒頭、自身が自閉症であったことの告白から始まる。
自分が周りとは違うことを感じつつ”病気”ということを禁じられ、”普通”でなければならないというのは、なんて重い枷だろう。およそ多様性とはかけ離れた画一的価値観の世界。
でも自分も子供の頃はきっとそうだったな。自分が普通だと思っていたし自分と違う人間をおかしいと思っていただろう。
”普通”の人間などこの世にいないというのに、、
皆、変人だということを受け入れることこそが多様性だと思うのだ。

その後、彼は人生の中で、楼蘭と名乗る友人と出会う。
友人の言葉は古くて、詩的で、パンクだ。いや、ただの冷笑とも言えるかも知れないが、教養に欠く私には半分も理解できないのがなんとも情けない。

友人は"体"を"體"と云ふ。これがとても印象的だった。
ただの旧字体だと言われればその通りであるが、
身体の無い友人が発する言葉に質量を与えているように感じた。

友人で出会ってから、彼も自身に起こる出来事を楼蘭に習って紹介してくれる。ただの愚痴と言えばそうなのだが、”言葉遊び”の後に解説があるのがありがたいw
幼少期に無邪気に過ごすことができなかった彼は、友人と語らうことで
イノセントを取り戻せたのだろうか。

作中に幾度と詩が現れることで、作品を通して1つの詩集を愉しんだ気分だ。
文章もリズム良く読みやすかった。私はこの後、次の作品を無邪気に楽しみたいと思います。
M☆A☆S☆Hさん、ありがとうございました。

気になった方はぜひこちらから
『Innocent』
https://bccks.jp/bcck/170188/info

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