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黒歴史供養のお寺はどこですか?

こんばんは、白子です。

昔から二次創作を見るのも作るのも大好きな人間です。
寒い時期なので、少し前に書いたものを黒歴史として少し晒してみようと思います。

元になったのはこちらの動画。
ナポリの男たちさんのTRPG狂気山脈です。
とても面白い動画なので、大好き。

本日は自分の傷を抉る日です。
何でそんなことするの。


【八木山の手記】


夢を見た。
あの時の夢だ。
眼前に迫る雪、一見柔らかそうなそれは俺を優しく抱き止めるような事はせず、全身を容赦なく打ちつけた。

体内から骨が軋む嫌な音が聴こえ、痛みに意識が途切れそうになる。だが俺はそうなるわけにはいかなかった、まだあいつが、あいつが戻ってきていない。
志海、
志海は、

なんとか上空に顔を向ける。
雪で白んだ空に鮮明な青色が滑空しているのがわかった。戻ってこい、早く降りて来てくれ、頼む。早鐘のように打つ心臓だけが熱かった。

しかし、次の瞬間、山がまるで生き物のように躍動し、無情にも鋭い岸壁が志海の身体を強く打ち付けたのがわかった。
山登りで鍛えられた筋肉質な手足が力なく宙に投げ出され、パラシュートが丸めたハンカチのようになったかと思えば、そのまま吹雪に溶けるように見えなくなった。

短い沈黙の後、えべたんと杉浦がひゅっと喉を鳴らし、次の瞬間には志海が攫われた方向へと走り出したが、俺は動けなかった。
やがて2人の背中も見えなくなり、俺だけは足掻くことさえできずにただそこに留まり続けた。

「うあああ!!」

自分の獣のような慟哭で目が覚めた。温かいはずの室内なのに、身体が冷え切っている。
しかも泣いていたのか、顔に髪が張り付きひどく不愉快だ。のろのろとベッド起き上がり顔を洗ってから時計を確認すると、眠りに落ちる事ができたのはほんの30分程度のようだった。

「……本当に、目覚めが悪いな」


仲間達と別れて数週間が経った。
下山した直後、世界の俺達への注目度は想像以上だった。
世界最高峰を攻略した気持ちは?
何故今回のアタックを決行しようと思ったのか、などと正直どうでも良い事ばかりを質問責めされた。
その中でも、世界初踏破という最高の栄誉を勝ち取られたお気持ちは如何ですか?と聞かれた時には愚かし過ぎて思わず笑ってしまいそうだった。

だってそんなもの、いらないしどうだって良かった。

きっと他の仲間達も同じ事を思っていた筈だろう。
栄誉や賞賛ではなく、自分の中に残ったものだけがあの山から得た物だと。

それからしばらくはメディアからの追っかけを適当に対処し、七浦の親族にも連絡を済ませ、やるべきことを消化しているうちに体力も驚くほど早く恢復していった。

雑多な毎日を踏み潰しているうちに、下山から3週間が経過しようとしていた。
医者や周りからは早急すぎるとやんわり登山を止めるよう説得されたが、俺はまたあの山に戻る準備を整えていた。

下山した時から、俺の心の中には決意しか残っていない。
七浦と同じく、志海も探しに行かなければ。

志海は変わった奴だった。
周りに対し配慮を欠いた態度をする奴だった。危険を顧みず、命を軽んじるような言動をする奴だった。

正直に言えば相容れない。しかし。
それでもアイツは確かに友達なのだ。共にあの狂気に満ちた山頂を踏んだ仲間なのだ。

臆病者の俺にはなんとなくわかる、死をいつでも隣に据えている人間はいつだって生きている事の意味や価値を知っているのだと。
志海が死を顧みない人間だったとしても、それと同時に生きているうちはしぶとく生き残る術も知っているはず。
アイツだったら、あの過酷な山の中でまだ生きていてくれるかもしれない。



部屋の電気を落とし、暗がりの文机を見る。
えべたん、杉浦、K2、コージー、穂高さん、皆んなに宛てた手紙が整頓して置いてある。
俺が戻らなかった際には、其々に郵送して貰うように頼んであるのだ。

あの時俺は仲間達に、次も共に志海の捜索を手伝って欲しいと言った。
準備の最中、いや、直前まで声を掛けるか迷いに迷った。しかし、結局そうはしなかった。

またあの山に登ったとして、また新たに友人を失うかもしれない。眠れない日々、あの時ああしていればという後悔。それがこれ以上増えるのはごめんだった。

浅い睡眠から覚めた後、嫌でもベッドの中で考えてしまうのだ。
俺がもっとアイツの言動に気をくばっていたら、もしかしたらアイツはどうやっても生き残ろうと最期まであがいたかもしれない。
あの時、俺が志海を先に見送ってから飛んでいたら、もしかしたらアイツは生き残っていたかもしれない。
そんな後悔が尽きないのだ。

「よし、じゃあ、行くか」

独り、暗い部屋のドアを閉めた。



山の麓に立ち、目視できない高さにある頂に目をやる。
今回も前回と同じく犬橇を手配し標高3000mを目指す。しかし今回の登頂は1人な上に、食糧も2人分準備したため装備が嵩張ってしまった。
なるべくなら順調に登れると良いが。

不意に賑やかな声が耳奥によぎった、しかしそれは有り得ない。
賑やかで心強い仲間達はここにはいない。肌を刺す南極の風だけが俺の背中を押している。
手綱を握りしめ、決意と共に登頂を開始した。

何時間経ったろうか、慎重に山を登り進め、予定通りの地点に到着した。
テントを設営し野営の準備をする、明日からは自分の足で登らなければならないが不思議と不安は無かった。
ランタンに火を入れた後に、登山用ウェアの内ポケットにしまっていたものを取り出す。
手前にえべたんと杉浦、K2。真ん中には穂高と志海、1番後ろには俺とコージーが映った写真だ。

この登山を終えて、またこんな風に写真が撮れたらどれだけ良いだろう。と考えたが、目的はそこでは無い。
志海を見つけ出すことだけを考えようと思い直した。

志海も七浦と同じく怪我の程度が軽くあってくれれば、残りの食料や燃料を頼りに生き残っているかもしれない。
アイツの事だ、寧ろ怪我をしていてもヘラヘラと山に順応して生活すらし始めているかもしれない。
もしそうだったら顔面に往復ビンタしてでも下山させてやるからな畜生め。
今一度決意を固め直し、写真を慎重にしまい直した。
狭いテントの中横になる。
眠れなくても良い、目を閉じた。


テントの外が少し明るくなって来たのを感じて目を開けた。風が強くなったようだ。
メインパネルの隙間から外を見るとさっきと比べて降雪量が増えていた。
迷ったがこの程度であればと上を目指すことにする。
足元に纏わりつく雪の感触が懐かしい。一面の雪の中、何故だか無性に志海を大声で呼んでやりたくなったがぐっと堪えた。
またあの時のように雪崩が起きてしまったら元も子もない。視界を奪われないよう気をつけつつ、慎重にルートを定め黙々と登り続けた。


また、あれから何時間経過しただろう。
ルートは外れていない筈だがいかんせん降雪量が増して来たせいで足の進みが悪い。
限界まで冷えた風が、息をする度針のように喉と肺を刺す。ぜぇぜぇと息を切らせながら、ざくざくと雪を掻き分ける。

死にそうだ、辛すぎる、もう終わりだ、と弱音が頭の中を木霊する。
多分こんな時、志海だったらワクワクして来ましたとかへらへらしながら言うんだろうか。

孤独と馴れ合って来た俺でも、流石にアイツのようには振る舞えないなぁ。とつくづく相容れなさを噛み締める。
ははっ、と渇いた笑いが口の中で消えた。まだ、俺は大丈夫だ。
もう間も無く、志海が山に拐われたであろう地点まで辿り着く。
そうすれば、そこまで辿り着くことができれば何か手がかりが見つかるかもしれない。


泥のように疲れた体でキャンプの設営を終えた。
雪は少なくなり、黒い大地がうっすらと見え始めている。足元に灰色の毛糸が重くまとわり付いているかのような感覚の身体を、テントの中に投げるように転がした。

ここまで来てしまった、と思うのと同時にここまで来ることができた、と安堵した。
明日はこの辺りから重点的に志海の捜索を開始するつもりだ。まるで食欲はないが、少しでも体力を回復するためだと乾燥スープをコッフェルで溶かした雪の中に入れ、クラッカーを浸して少しずつ食べる。
周りからは風の音以外聞こえない、世界に1人きりになったような気分だった。



夢を見た。
虹の谷の夢だ。

山頂に向けて、所々に場違いな極彩色が落ちている。其々に近づき顔を確認する。
1人、違う。1人、違う。また1人、違う。違う、違う、違う、違う、違う違う違う違う。
志海は居ないと確認する度に胸を撫で下ろす。

しかし、気づいた。必死で確認を続けていたからか、いつの間にか目の前にぬらぬらと口を開けた巨大な洞窟が出現していた。
暗く湿った生物味を帯びたその入り口に、見知った青色の登山ウェアが横たわっている事に気づき、思わず駆け出した。

瞬間。

生温い空気を大量に吐き出しながら洞窟の口が勢い良く閉じた。
鈍い音と同時に、青いウェアが真っ二つに跳ね上がる。
血飛沫と、部位のわからない溶けた肉片がまるでスローモーションのように宙に舞った。

それらと共に見えた、見知った黒髪と青いゴーグルは。あれは、あのあたまは、

「しうみ」


「__________っっっっ!!!!!!」

全身が痙攣し跳ね起きた。
途端に吐き気が襲い、外へと這い出て胃の中身をぶち撒ける。ほとんど消化されていない胃の中身が気管を圧迫し息すらできず酷く咳き込む。
悪夢を反芻し暫くえずきが止まらなかったが、あれはただの悪夢だ、と正気の俺が遠くから言い聞かせてくる。

悪夢だ、そうただの夢だ。目を覚ませ、正気を取り戻せと必死に冷静さの糸を手繰り寄せようと足掻く。

ぜぇぜぇと無様に息をしながら、自分の顔面を力任せに殴った。
瞬発的な痛みと、山の寒さが冷静さをどうにか繋ぎ止めてくれた。

今日は、心身が落ち着き次第この辺りを探索してこのまま留まろう。このような環境下だからこそあのような悪夢を見たのだ。
焦ってはいけない、高山病の気が出ているのかもしれない。そうであれば尚更無理は禁物だ。
そう判断し、よろめく足を奮い立たせて志海の捜索の準備を開始した。

結果として、キャンプの周辺では何も見つけられなかった。
前回のルートに沿って来たつもりだったがどうやら少し道を外してしまっていたらしい、前回の目印が見つからない。
迷いきってしまう前に拠点へ戻り、夜を明かす事にした。夜空を見上げると星が無数に瞬き瞳に映る全てが輝いている。


志海。
俺はふと、志海の声が思い出せない事に気がついた。まだひと月にも満たないのに忘れてしまうものなのか。
人間は人を忘れる際に声から忘れていくと、何かの本で読んだ事がある。

えべたんの声は思い出せる、笑い方が多少下品ではあるが真面目に人と対する際は優しい声色をしている。
杉浦の声は思い出せる、高めだが言葉1つ1つに重みがある、頼り甲斐のある声色をしている。
K2の落ち着いた温かみのある声色、コージーの自信に溢れた声色、穂高さんの相手を慮る慈しみに溢れた声色。
七浦のあの懐かしい声だって、今でもしっかりと思い出せるのに。
志海の声を思い出そうと、写真を取り出す。軽く手が震えていた。どうしても思い出せない。
なんだか自分が薄情な人間のような気がして、涙が溢れて止まらなかった。


夜が明けた。
捜索を続けるため拠点へ荷物を残し、最低限の装備で山を登る。
標高7000m地点へと到達した。
先ずは黒く聳え立つ岸壁に沿って探索を進め、収穫がなかったら1人でも慎重に這い登る事にする。
落石に注意しながら進むと、遠くの岸壁にちらと動くものが見えた。

足を踏み外さないよう慎重に近づいてみると、それは見覚えのあるパラシュートの残骸であることが分かった。
大きく広がったキャノピーをもたつきながら必死で捲り、ハーネス部分を手繰り寄せる。
側から見たら酷くふざけて見えるだろうなぁ、と頭の端で思うほど不恰好な有様だった。

必死の思いで全てを手繰り寄せたが、その先に志海は居なかった。
岸壁の下や辺りを探してみてもあの青色は見つけられない。
ハーネスを検めてみるとこちらは特に別状が無く、大きく擦れた痕やベルトの破れがあるだけでバックルの故障などは無いようだった。

「志海…生きているのか」

考えられるのは、志海が自分で脱出した可能性だった。

その後可能な限り残骸近くを探索したが、志海の痕跡はこれ以上見つかる事はなかった。

アイツは生きている、この狂気山脈の何処かで必ず。俺の確信は探索を続ける中で少しずつ萎んでは膨らんでゆく。

破損していないハーネスや志海の荷物ごと見つからない事を考えると、山に拐われた後少しだけでも生きながらえていてくれた事は分かる。あるいはまだ生きていてくれる事だって。

駄目だ。
考えが纏まらない。拠点に戻り、酸素の足りない脳を改めて動かさなければ。


拠点に戻った後、早めに行動を起こす事を決意した。
食欲も多少戻りつつあり、コンディションも悪くはない。この近くに志海がいる筈だという確信が心臓を熱くさせ、再び身体中に血液が流れ始めた。
このまま足を止めたく無いとすら思えるほどに浮き足立っている、夜が近づいて来る事がこんなに悔しい日はここから先2度と無いだろう。

雲1つない満点の星空にオーロラがカーテンをかけ、この世のものとは思えない美しい空を見上げた。
風も無く、無音で、ただ寒さと美しさだけが此処にある夜だった。


志海を見つけたら、きっと俺も穏やかに眠れる様になるだろう。
そしてこの美しい風景をごくたまに思い出して朝日と共に目覚めよく起きる事ができるのだ。

少しだけでも横になろうとバーナーを消し、腰を上げた。

その時。遠くからの音に鼓膜が揺れた。

「………_____ょぉぉ」

風や動物の鳴き声では、無い。
凍えそうな中帽子を取り去り、更に耳を澄ませる。

「ひょ_________……ぉぉぉ」

これは、声か?誰かが叫んでいる。動物の鳴き声ではない。
静寂を守る山の中に声が反響し、生き生きと叫んでいるように聴こえた。

「____き_____る____…………!」

遂には、ハッとした。
これは志海の声だ。間違いがない!
思わず、俺は叫んだ。

「志海っ…………!志海ーーーーーーー!!お前この馬鹿野郎!!!早く帰ってこい!!!!お前のせいで、お前が心配で眠れねぇじゃねえかよーーーーーーーーーーーーー!!!!!!夢見が悪いんじゃボケーーーーーーーーーー!!!!!!!」

生まれてから1番大きな声を出したかもしれない。
自分の声が何倍もの質量になって山に木霊していく。
その中に、あのへらへらした笑い声が混ざっていた。

「………ぁははは…………は…」

如何にも楽しそうに、生き生きと苦境を楽しんでいるあの声は、紛れも無く志海のものだった。

「………ちくしょう、」

暫くすると、何も聴こえなくなった。
俺はそこに留まったままでいた。
山の頂を見る。

風が出てきた所で思い直し、テントの中に入り横になった。
目を瞑ると仲間達の夢を見た。皆でタピオカを飲む夢だった。そこには、不味いですねぇこれと笑う志海の姿もあった。

目を覚ますと日が上り朝になっていた。


俺は、これ以上の登頂はせず下山する事に決めた。
パラシュートを見つけた岸壁の周辺で目につき易い箇所を選び、目印と担いできた食料等の入ったザックをメモと共に置いた。

拠点を畳み荷物を担いだ後、もう一度だけ山の頂に向かって振り返る。帽子を取り去り耳を澄ませても、もう何も聴こえることはなかった。

「気が済んだら帰ってこいよ」

メモに残した言葉を小さく繰り返し、俺は山を降りた。
きっと、明日からは悪夢は見ないだろう。


【12月27日の良かったこと】

1.遅刻回避

今日はね、寝坊しちゃいました。
8時に起きて家事をしてから仕事に行くつもりだったのに10時に起きてしまいました。
仕事に間に合うためには全く時間が足らず、急いで家を出たのですが遅刻は回避できてめちゃくちゃ良かったです。怖い。
明日で仕事納めなので、最後まで気を抜かずにがんばりたいです。

2.キムチ鍋

帰ってからキムチ鍋をしました、あったかくて最高です。
自分はカロリーの魔神と呼ばれているのでチーズをトッピングして更に最高にしました。
お鍋っていいですよね、次は豆乳鍋もやりたい。豆乳大好きです。
職場が寒すぎて永遠に身体が温まらないので、家に帰ってくると本当にホッとします。
今日はお腹いっぱいで暖かくなったのでよく眠れそうです。

3.寝落ち

家に帰ってきてこたつに入ったら暖かすぎて、そのまま一瞬寝落ちしてしまいました。
正直に言ってめちゃくちゃに気持ちがよかったです。
19時台に家に帰ることができると寝落ちもできるので最高です。
今日はだらしな記念日とする。それくらい眠っています。


今日も楽しかったです、明日も良いことがありますように。

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