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ポストコロナの公演制作#5【ホール運用ルール以外での問題点・その3】

コロナが社会全体を揺るがす状況で、皆さんの生活様式、意識が変わっていくのは、当然のことですが、それがこの業界にどう影響するかは、まだまだ分かりません。

業界の地盤沈下

短期的にも長期的にも、フラメンコやアルゼンチンタンゴはもちろん、音楽やダンスの業界全体が沈んでしまうことを危惧しています。そうなった場合、私たちだけが大丈夫などということはなく、当然一緒に沈みます。

よく使われるピラミッドや山の図のように、多くのファンや愛好家、生徒さんなどがいて、初めてトッププロがいるのです。

昨年のラグビーワールドカップで、にわかファンが増えたことを関係者が喜んでいたように、一部の熱烈な愛好家だけ(もちろん大事です)が楽しむだけの文化芸術に未来はありません。まずは気軽に見に来てくれる人がいかに増やせるか、いかにすそ野をいかに広げることができるかが、当たり前ですが非常に重要です。そういった土台を担っているお店、教室、専門誌などが苦境に立たされているわけです。

ペアダンスに未来はあるのか

レッスン、発表会などはすべてが「三密」ですし、特にペアダンスは、パートナーが配偶者や恋人でなければ不可能な世界になるかもしれません。

もちろん、収入の減少や今後の不安から、財布のひもをしめ、習い事を辞めたり、コンサートなどに行く回数が減ったりすることも十分考えられます。

ですが、それ以上に「感染がこわい」という不安のほうが、より深刻だと考えています。当たり前ですが、タンゴ、社交ダンスなど、ペアダンスは、男女の濃厚接触が前提です。

当分、もしくはずっと、この不安感は多くの人の頭に残るでしょうし、お金などでは解決が難しい問題です。そうなると「これが潮時」と、愛好家が離れていってしまうこともあり得ます。もしかしたら日本でペアダンスが大きく衰退する一つの要因になってしまうのではと危惧しています。

閉店したお店も・・・

数か月前から、ライブハウスなどはどんどん閉店してしまっています。個人オーナー所有のライブハウスが大変厳しいのはもちろん、さらに状況は悪化し、親会社があり、まだ大丈夫だろうというお店の閉店も始まってしまいました。

またフラメンコライブを頻繁に開催していたお店まで閉店するという、残念なことが起きております。

フラメンコを見ながら、飲食を提供するお店を「タブラオ」といいますが、こういったお店は、ライブがで再開しても、半分しかお客さんを入れられない。つまりチャージだけでなく、飲食の収入も半分しか見込めません。これでは経営が難しいでしょう。

注意しないといけないのは、資金難でなかったとしても、こういった決断が経営判断として間違っていないということです。当たり前ですが、経営者はシビアに収支を見ていますし、将来性を考えます。そして親会社の経営判断による閉店や撤退が十分あり得るのです。私たちは、「あのお店は、親会社が利益を出してるから、オーナーが金持ちだから、多少の逆境でも大丈夫だろ」などと楽観視することがありますが、その考えが「甘い」ことを自覚させられました。

正直マニアックな業界ですから、お店が一つなくなるだけで、これまで出演していた人もステージを失うわけで、大打撃です。仮にこの状況が沈静化し、多くのアーティストがまた出演したい、多くの人がまた見に行きたいと思っても、もうその場がない。そういうことが実際に起きているのです。

そして最近相談を受け、気が付いたのですが、出演の場を失ったアーティストが小規模のホールなどを利用し始め、前回書いた「ホールの奪い合い」に拍車がかかってしまいます。

こういった世界規模の悪い流れの時は、何をどうあがいても無理なときは無理。何とかこれまで来ていただいた方を何とかつなぎ留めておく努力をしつつ、減ってしまうことを覚悟しておく。これが、現状なのかもしれません。もし資金に余裕があるなら、一度止まってじっくり考えるいい機会にするのもありかもしれません。

そもそも、一般の人々の認識が・・・

どうしても私たちは、「音楽などは好きでやっている」などと、興味のない人には、どうでもいいように思われることも、ままあります。悲しいですが事実かと。

まぁ、芸事にかかわる仕事は、コロナ禍前、昔から低く見られてきました。

ただ、ある仕事が、その人にとっては、不要不急であったり、重要でなかったとしても、そこには、その仕事を生業としている人がいるぐらいのことは、わかってほしいとは思いますが・・・。

これは、「この仕事はエッセンシャルワーカーですか?」という調査記事ですが、「アーティストが一番不要」との結果でした。このように「一番必要ない」などといわれるとへこんでしまいますが、少し補足が必要だと思います。

「エッセンシャル・ワーカー」とは日本で「不要不急の職業」と訳されることがありますが、「社会を維持する上で必要不可欠な仕事」ぐらいがより正確で、また印象も変わってくると思います。

比較している仕事などをよく見ると、まぁ、しようがないですよね。コロナに感染して苦しんでいる人には、音楽より適切な治療のほうが重要ですし、交通機関が機能してないと、ホールに行くことすらできません。

まぁ、自分のやっていることにプライドはもちつつ、大震災直後や世界経済がパニックになるような非常事態の時には、もっと必要な仕事があるのも事実だよね、ぐらいの認識はがちょうどいいのかな。

とまあ、主催者にとっては何の救いもない情報ばかりですが、その打開策の一つとしての「ネット配信」などネットの活用がもてはやされています。

「ネット配信」や「オンラインレッスン」で、有料チケット制、投げ銭、無料などいろいろですが、不可能ではないけど、正直「私には」非常に難しいと思っています。

それについて、次回書きたいと思います。

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