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レコード棚を総浚い #13:『The Band / Northern Lights , Southern Cross(南十字星)』

この頃深刻になっていたメンバー間の確執を微塵も感じさせない傑作ライブ盤『Rock Of Ages』、ロックンロール回帰の『Moondog Matinee』、ディランのライブ『Before The Flood』への参加を経てリリースされた75年作7thアルバム『南十字星』である。

キャピトル・レーベル。ロゴが新しくなっている。

結局のところザ・バンドの素晴らしさは、三人の個性的な歌い手が、最大限に活きるソングライティングの妙と、ロビー・ロバートソンの唯一無二のギターと、変幻自在のガース・ハドソンのキーボードの技が溶け合ってできているのだろう。

このアルバムには、そのザ・バンドの魅力が最大限に表現されている、と僕は思う。

アルバムに針を落とすと聴こえてくるあのアーミングの音。
『禁断の木の実』でのロビー・ロバートソンのギターは、このアルバムの唯一性を冒頭から決定付けている。
リチャード・マニュエルの唄う『ホーボー・ジャングル』は数ある彼の名唱の中でも一際滋味深く、『オフェリア』でのリヴォン・ヘルムの歌唱は、音楽の楽しさを体現するという意味においてザ・ウェイトの名演すら凌いでいるように思える。
リック・ダンコの歌唱にはいつも涙を禁じ得ないが、本アルバムで唄われる『同じことさ!』は、その集大成ではないか。
続く『ジュピターの谷』でのガース・ハドソンの多彩でポップなキーボードプレイは、ルーツ寄りの音楽性を、単なる懐古趣味でない独自性として際立たせている。

確執にまみれたキャリア後期に、このような大傑作を生み出せるこのバンドは、やはり「ザ」バンドなのだなあ。
2025年におそらく発売されるであろう50周年記念盤が今から楽しみだ。


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