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レコード棚を総浚い #45:『Boz Scaggs / Silk Degrees』

1976年リリースのボズ・スキャッグス説明不要の大名盤『シルク・ディグリーズ』

南部志向に洗練を加える方向で、自らの音楽性を確立していったボズ・スキャッグスは本作で、その洗練に明らかなブレイクスルーを迎える。
後にTOTOを結成することになるレコーディングメンバーの、特にデヴィッド・ペイチの貢献度は大きいだろう。

もちろん南部志向はしっかり残っていて、本作でも前作、前々作に続いてアラン・トゥーサンの楽曲を取り上げている。しかも今回はトゥーサン必殺の大名盤『サザン・ナイツ』からのカバーで、この流れの集大成感がある。

ボズのキャリアにおける最重要曲とも言える『ウィー・アー・オール・アローン』は、リリース当初は『リド・シャッフル』のB面曲の扱いだったわけだが、その後リタ・クーリッジのカバーが大ヒットして、現在のような不動の名バラードの地位を得た。

この曲、もちろんメロディも素晴らしいが、歌詞の奥深さも見逃せない。「完全に二人しかいないね」なのか「我々は所詮ひとりぼっちなんだよ」なのか。
ボズ自身は後に、「両方の解釈ができるように書くのに苦労した」と言っている。我々に委ねられた解釈の余地が、この曲を特別なものにしているのだろう。

もう一つ見逃せないのが、『ロウ・ダウン』によって示されたボズ・スキャッグスのディスコ・ミュージックへの”返答”だ。
ロック・ミュージックがディスコを飲み込んでいく転回点の一つとされるローリング・ストーンズの『ミス・ユー』、そして、ロックの裏切り者発言まで出たロッド・スチュワートの『アイム・セクシー』のリリースが1978年。ボズはすでに2年早くその身にディスコとロックの融合を果たしていた。
ブルーズ、マッスルショールズからモータウンに至る様々な音楽を自らの音楽に取り込んできたボズならではの柔らかさだと思う。

そしてさすがのポール・マッカートニー。同年1976年リリースの『心のラブソング』に、とんでもないさりげなさでディスコビートを摂り込んでいる。なんて恐ろしい人・・

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