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レコード棚を総浚い #70:『Daryl Hall & John Oates / Rock'n Soul Part 1(フロム・A・トゥ・ONE)』

1982年にリリースされるや、15週連続全米3位、同年年間第4位、プラチナ・アルバムとなって、ダリル・ホール&ジョン・オーツとして最大の売り上げを記録した『H2O』に続いて、翌年1983年にリリースされたキャリア初のベスト盤。

邦題に『フロム・A・トゥ・ONE』とあるが、#69でご紹介した『プライベート・アイズ』がSIDE AとSIDE ONEとなっていることに何か関係があるのだろうか。

RCA移籍後、最初のビッグヒットとなった『サラ・スマイル』から、その余波で再評価された『シーズ・ゴーン』、初の全米ナンバーワンヒット『リッチ・ガール』といったソウル色を強く残す初期代表曲がシングルバージョンで収録されているのも、個人的にはツボだが、彼ららしいソウルとロックを融合した進化形ポップソングたちも、もちろん素晴らしい。

次作『ビッグ・バン・ブーム』で、この進化は一応の完成を見るが、本盤には、それを予感させる新曲『セイ・イット・イズント・ソー』『アダルト・エデュケーション』が収録されている。

しかしこのアルバムの最大の聴きどころは、何と言っても初収録となった『ウェイト・フォー・ミー』のライブ・バージョンではないか。
ピアノに乗せたダリルの「ウェイト・フォー・ミー」の歌い出しの後ろで、「ワン・ツー・スリー・フォー」のカウントが続き、あのイントロのフレーズがギターで鳴らされれば、いやが上にも盛り上がらざるを得ない。
繰り返すたびにフレーズを変えながら歌われるヴァースの後ろで、こっそり暴れ回っているベースのフレーズに心掻きむしられていると、一転静かなピアノ伴奏のみになり、ダリルのスキャットが会場に響き渡る。
なんというあざといパフォーマンスなんだ。好きになっちゃうじゃないか。
こんな名曲の名演で、このアルバムは幕を下ろす。
そして僕はまたA面に針を落とすのだ。
なるほど、この邦題はそういう意味か。(違)


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