見出し画像

51歳3人組

絶賛ニートの私は、母親とその友人の定例ランチ会に参加させていただいた。
51歳の3人の女たちは何を話すのかも気になった。

ランチ場所は、五反田のミート矢澤。
そういえば、半年前くらいから母がここに行きたいと大騒ぎしていた。

私が少し遅れていったので、「ごめん、お待たせ!!」と言うと快く迎えてくれた。
席に着くや否や、母がすかさず「LINEの友だち登録をすると1つトッピング無料になるらしいよ」と隣からQRコードのついたポップを差し出された。
もちろん51歳3人組は友だち登録済み。
3人の中でも、特にウチの母は「無料」「期間限定」「プレゼント」という言葉にすこぶる弱い。
paypayのキャッシュバックキャンペーンが地方自治体で実施されている場合は、多少遠くても車を走らせ飛びついて行く。あの情熱は誰にも止められない。
キャッシュバックに乗せられて余分な買い物をしてしまう、ガソリン代を考えたら大して変わらないということなど、これっぽっちも頭にないのだ。
その時に安く買えたお得感がこの上なく良いのだろう。困ったもんだ。

そんな母に対する苦言は置いておいて、いよいよハンバーグ選びだ。
私はおろしハンバーグに、チーズトッピング(LINE友だち登録により無料)の即決めだった。おろしにチーズなんてありえないと周りから何か言われた気がしたが、好きなものがその二つなんだから仕方ない。

51歳3人組はと言うと、LINEの友だち登録をしたおかげで、無料トッピングとハンバーグを選ぶのに「どの組み合わせが1番お得か」「どの組み合わせが1番美味しいか」というのを議論し始めた。

さらには3種あるソースのうち「オリジナルソース」は何系のソースか?という質問を店員さんを呼んで聞いていた。和風のソースと予想をし、的中したことに、あ〜やっぱりね!の一言。
やっとハンバーグとトッピングが決まったと思うと、次はご飯のサイズ。
小・中・大から選べる。
母はすかさず「大かな〜」と。別に仰天はしない。
そうすると、向かいに座っていた母友人が
「じゃあ、私も大。一緒に大を食べよう」と母に言っていた。
「洋食屋さんのご飯って少ないんだよ〜ちょこっとしかないじゃん。食べれるよ!」とは言っていたけれど、
大を頼む怖さってこの人たちにはないのだろうか。
食べきれなかったらどうしようとか思わないのだろうか。
と思ったが、51年分の注文の場数を踏んでいるんだ。そりゃ自信つく。
見ろ、あの腹を!

私は中ライス、私の向かいに座っていた母友人は小ライスを頼んだ。

51歳3人組の話題は、
「整体行ったら痩せた」
「年賀状あの人に出し忘れた」
「火災保険ってどこまできくのか」といったことだった。

いかにも〝オーバー50〟の話題だと思う。

そう盛り上がっていたところに、隣の席の人たちの料理が到着。
「こちらが大になります。」
一同、そのお隣さんのライスを凝視。
大は、もちろん大なのでこんもり盛られていた。
「あのサイズ、食べれる?」と聞くと
「いや、食べれるよ〜」と何言ってんだか、というような言い方で大を頼んだ二人に言われた。

食べている途中、大を注文した母友人が「私、ダイエット中。本気だよ!」というと、「チーズトッピングのライス大で?」「一生ダイエットしてるじゃん」と盛大に突っ込まれていた。

かたや小を注文した母友人は、まだクラフトビールを頼むか迷っていたので、
「はやく頼みなよ、せっかくきたんだよ」と言われ、15分悩んだ末に注文していた。
チームライス大から言わせてみれば、そのためのライス小でしょと言うわけだ。
たしかにそれはライス中の私からしてもそう思う。

美味しく楽しくみんなでハンバーグをいただいた。
ちなみにライス大の2人の方が早く食べ終わっていた。


そのあとは、原宿に移動して
「私、変わりたいの」と言って新しい自分のためのアイシャドウを探していたり、キャリーケースを突然買っていたり、ワイワイしながら楽しそうだった。

この51歳の3人組に参加させてもらったのは初めてではなかったが、再度友だちっていいなと思った。何より3人とも楽しそうだった。
自分も51歳になったときにそうでありたいと思った。

ハンバーグを決めるのに、かなりの時間を使って、ああだこうだ言えるなんて最高ではないか。
くだらないことで友だちとゲラゲラ笑えるなんて最高ではないか。

人生楽しく生きよう、そう教えてくれた51歳3人組だった。

話題の大ライス

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?