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【スチュワーデス物語】昭和の恋と青春


先日ケーブルテレビをつけていたら、懐かしいドラマ「スチュワーデス物語」をやっていて、なんだか飛行機が見たくなってしまったんである。

そんなわけでちょいと羽田空港まで行ってきた。

飛行機が飛ぶところを見るのが好きで、たまに用もないのに羽田空港に行ったりする。
目の前が滑走路のレストランでご飯を食べながら、飛び立っていく飛行機をひたすら眺める。
加速しながら走ってきた飛行機が頭をふいっと持ち上げると、次の瞬間、機体がフワッと浮き上がる。飛行機は水平を保ちながらゆっくりゆっくり(に見える)北北西に向かって上昇していき、しばらくすると右に約90度旋回。なおも東京湾上空で高度を上げ、荒川に沿って今度は左旋回、東京市街地上空に入っていく。機影がどんどん小さくなり、豆粒ほどになったかと思うとその姿は虚空に消える。


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スチュワーデスという言葉、若い方に通じるのだろうか。

現在キャビン・アテンダントとかフライト・アテンダントと呼ばれている飛行機の客室乗務員のことを、昭和のころはスチュワーデスと呼んでいた。
「スチュワーデス物語」は、スチュワーデスを目指す訓練生である主人公・松本千秋の恋、友情、青春、様々な困難を乗り越えながら成長していく姿を描くドラマである。
なんと日本航空(JAL)全面協力、制服も寮も訓練所も本物。
パリやローマでロケをしたり、脇を固めるのが(そこそこ)豪華キャストだったりと、なんだか無駄に贅沢なドラマであった。

しかーし。

何といっても「スチュワーデス物語」はあの大映ドラマ
つっこみどころは無限にある。


ドジでのろまな亀・松本千秋


主人公・松本千秋(堀ちえみ)がとにかくまあ、どんくさい。いつも一生懸命だけれど、おちこぼれであがり症、英語(その他全般)が苦手で、ちょっとしたことでショックを受けては寮を飛び出したり、スチュワーデスになることをあきらめようとしたり。

とにかくスチュワーデスに向いていないこと甚だしい。

このどんくささに堀ちえみの棒読みへたくそ演技がものすごくはまっており、リアルタイムで観たときはイライラしかなかった千秋のダメダメさ、そこに今は親心が湧いてしまう。

人工呼吸の実習を受けた後、愛しの村沢教官が自分を探し回って倒れ、呼吸が止まってしまったときは、
「息をしてないわ!人工呼吸をしなければ!」
と村沢に何度もチュー。
当時は現役アイドルのキスシーンが話題になったものである。
人命を救うという大義名分で好きな人とチューという、昭和あるあるをこのシーンで見せつけられた。


イケメンダンディ教官・村沢浩


千秋が恋焦がれる村沢教官役は風間杜夫。新藤 真理子という婚約者がいながら、千秋の好き好きビームを受けて千秋に惹かれていく。
しかし昭和という時代背景もあって、今ではちょっと考えられないような問題指導も目立つ。

ことあるごとに「お前はドジでのろまな亀だ」と千秋に言い放つ。(モラハラ・パワハラ)
聞き分けのない千秋に平手打ち。(体罰)
おちこぼれの千秋と二人きりの特訓をおこない、やたら体にさわる。
ときには抱きしめながら「柔らかくてあったかいなあ」などと教官としてあるまじき問題発言も。(セクハラ)

令和の世の中なら一発アウトな行動連発なのだが、これが昭和。そして大映ドラマ。
千秋たち478期生を無事卒業させることに使命感を覚えている基本素敵な教官だ。


戦慄!村沢の婚約者・新藤真理子


村沢の婚約者で千秋の恋のライバル・新藤真理子(片平なぎさ)
ピアニスト志望だったが、スキー事故で両手を切断。夢を絶たれて村沢に執着する。
歯で手袋を引き外して義手を村沢に見せつけたり(流行りましたね)、千秋に対する嫌がらせをおこなったり、次第に狂気が暴走。

ある日村沢が千秋との特訓を終え自宅マンションのドアを開けると、中にはデパートの包装紙が付いたままのベビー用品が大量に運び込まれていた。村沢が唖然としながらベビー用品を眺めていると、オルゴール音と共にモビール(ベビーベッドの上で回るあれ)が突然回りだす。
「デパートに注文して届けさせたの」
暗闇の中に横たわっていたのは真理子。
「松本千秋に私の妊娠を知らせてあの子をズタズタにしてやるわ。あの子を守りたかったら、夜も寝ないで見張ることね」

ニヤリと笑う真理子があまりにも美しい。
片平なぎさ、好き。やはりドラマを盛り上げるのは恋敵の狂気なのだ。


ステレオタイプな昭和キャラ・478期生


千秋の同期、478期生はキャラが立っている。
千秋とよく絡むのは5人。

正義感の強い江戸っ子・木下さやか(山咲千里)
小樽出身、優等生なお姉さん・石田信子(高樹澪)
ぶりっこ(死語)キャラ・中島友子(白石まるみ)
さやかと犬猿の仲、イヤミな大阪人・池田兼子(春やすこ)
兼子の腰ぎんちゃく、博多出身・落合克美(松岡ふたみ)

千秋が村沢と真理子のキス現場を目撃してしまい、ショックで寮を飛び出して幼馴染のサブちゃんの魚屋で働き始めた時は、同期たちが魚屋に押しかけて戻るよう説得。千秋のかたくなな態度にいったんは帰るものの、その後魚屋の黒いエプロンと長靴姿の千秋を拉致同然にタクシーに乗せて寮に連れ帰る。

「私、どうしても教官が信じられないんです!」と言う魚屋エプロン姿の千秋を取り囲み、
「なまいき言うんじゃないよ!本当に好きになったら裏切られても信じてついていく、それが女っていうもんじゃないの!」
「千秋さん、あなたってとても頑固な人ね!」
「私にも言わせて―や!亀みたいなド根性はどこいったんや!」
などなど、言いたい放題の同期たち。まるで文句を言われる魚屋の店員。

しかし、みんなの熱意にほだされた千秋は、
「みんな…ありがとう!松本千秋、本当にバカでした!」
とあっさり訓練に戻ることを宣言。
そして同期全員で肩を組みながら、涙ながらに「ゆけゆけ飛雄馬」の替え歌を熱唱。魚屋エプロン姿で歌う千秋、どう考えても魚屋のほうが向いている気がしてならないが、感動でじ~んとしてしまった自分、涙もろくなったな……と思わずにはいられない。

ちなみに魚屋のサブちゃんを演じたのは若き日の光石研
その後サブちゃんは鯛持参で寮に来て千秋に結婚を申し込むが、同期たちにぼこぼこにされて追い返され、鯛だけ奪われるという悲しい失恋をしてしまう。
現在名バイプレーヤーとして活躍する光石研、やはり残る人は爪痕残すな~と感心しきり。


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そしてエンディングがいい。

麻倉未稀の歌う「WHAT A FEELING」(FLASHDANCEの主題歌の日本語カバーですね)が流れる中、空港で風間杜夫を先頭に日本航空の制服を着た478期生たちが颯爽と歩いていく。
スチュワーデス訓練生のプライドをにじませてまっすぐ前を向いて歩く彼女たちがとても素敵だ。



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「スチュワーデス物語」の余韻に浸りながら、羽田空港で飛び立つ飛行機を見送る。

いってらっしゃい。
気を付けて行くんだよ。

あの飛行機はどこまで行くのだろう。
大空を飛んで行く飛行機にはいつでもロマンがあふれている。





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