見出し画像

旗つつみへの憧れ爆発


私は運動神経というものを全く持ち合わせていない人間である。

体育の授業、それは屈辱の連続だった。

まず、足が遅い。
50メートル走は10秒切るのがやっと。
リレーではトラック一周する前にバテバテになり、男子に「お前本気で走ってんの?」と素朴な疑問をぶつけられる始末。
逆上がりは小5までできなかったし、側転は手をついて足の位置を変えるだけ。逆立ちしようとして頭を強打したこともある。跳び箱など人間のすることじゃないとすら思っていた。


そんな私だが、プレイステーション2のゲーム「みんなのGOLF4」にやたらとハマっていた時期があった。


みんなのGOLF(みんGOL)はおもしろい。
いろんなキャラ、バラエティー豊かなコース。
ゴルフ未経験でも運動神経0でも楽しめる親切設計。
ショットするときにバックスピンをかけると、ボールがグリーンに落下した後炎を上げながら逆戻りしてそのままカップインしたり、イーグルやホールインワンが決まるとかっこいい再現VTRが流れるのも最高に爽快だった。


私はみんGOLでとてもやってみたかった憧れの技があった。

それは旗つつみ。



強風ではためいている旗にボールを命中させると、ボールは旗に包み込まれて真下に落ち、そのままカップイン。
子供時代、藤子不二雄アニメを見て育った私は「プロゴルファー猿」の主人公・の得意技・旗つつみにとても興奮した覚えがある。
「猿」を見たなら、誰もがやってみたくなる夢のゴルフ技、それが旗つつみなのだ。



✳✳✳✳✳

話しがちょっと逸れるが。
あれは小学生の頃、確か区民祭りの催しだったと思うが、我が町に藤子不二雄先生がやって来たことがあった。
人気アニメドラえもんの作者に会えると聞いて、会場は子供たちで満員。今か今かと藤子不二雄先生を待っていた。

「藤子不二雄先生でーす!」

会場に入って来たのは、ベレー帽をかぶった背の高いおじさんだった。

正直、リアクションに困った。
当時ドラえもんは人気だったけれど、作者である藤子先生の顔を知っている子供など皆無で、このおじさんがドラえもんの作者です、と言われても……
といった空気が会場に流れた。
するとおじさんはペンを持ち、ホワイトボードにサラサラっとドラえもんの絵を描いたものだった。

所要時間10秒。

そのかっこよさと、まぎれもなくドラえもんの作者だ、という確信。
子供たちからうわあ~っと歓声が上がった。

このおじさんが、藤子・F・不二雄先生だった。


✳✳✳✳✳


閑話休題。

「プロゴルファー猿」はもう一人の藤子不二雄・藤子不二雄Ⓐ原作のゴルフ漫画。

賭けゴルフを生業とする主人公の猿谷猿丸が、彼を配下に加えようとするミスターXの送り出す裏のゴルフ界の刺客たちと死闘を繰り広げる、ハラハラドキドキのアニメだった。

「タイガーマスク」のゴルフ版といったところか。



「ワイは猿や!プロゴルファー猿や!」


♪ちゃらら、ちゃらら、ちゃらら、ちゃらら、ちゃーちゃーちゃー!

猿の台詞(自己紹介?)の後、軽快なイントロが流れ、水木一郎兄貴が熱く歌いだす。
このオープニングテーマ「夢をかちとろう」作詞 藤子不二雄作曲 小林亜星歌 水木一郎という超豪華なメンバーによるテーマソング。
なかなかの名曲だ。


気になるのは猿の台詞。
怪しげな関西弁(?)で、自らをワイと呼ぶ猿。
いったいどこの出身なのか。
私は今まで生きてきて自分のことをワイと言う人にはフライデーの「清原和博番長日記」くらいでしかお目にかかったことがないが、まあ猿だしな。


✳✳✳✳✳


さて、このオープニング映像だが、私はとても興味深かった。


これからまさにティーショットを打とうとしている猿が臨むのは、最終18番ホール。
強風が吹き荒れ、高波が容赦なく叩きつける断崖絶壁の岩の上に立ち、不敵な笑みを浮かべる猿。
グリーンは海の向こう。おそらく一打でグリーンに届くほどの距離で、パー3のコースではないか。しかし、強風に加え、ミスショットをすればたちまちボールが海に落ちてしまう難易度の高いコースだ。

高い弾道で飛ばせば強風に煽られグリーンに落とすのが難しい。
低い弾道なら風の影響は少ないが、海に落ちるかグリーンを通過してしまう可能性が高い。

どちらにしても一打でグリーンオンするのは至難の業。
無難にパーを狙うのがセオリーだろう。

だがしかし。
猿を見守る人々の緊張の面持ち、ヘリで上空から鋭く見つめるミスターX。猿は最低でもバーディー以上でこのコースを終えなければ、勝負に勝てない状況だと察せられるのである。


猿はいったいどんなショットを放つのか?


猿がお手製の木製クラブでティーショットを放つと、強烈な打球が低い弾道で水面ギリギリを飛び、水を切りながらグリーンに到達。強い風にはためいている「18」番ホールの旗に命中する。
旗に包み込まれたボールはそのまま落下して、見事ホールインワン。

これが猿の必殺技、旗つつみだ。



みんGOLでかまわない。
むしろみんGOLがいい。

旗つつみ

いつかは成功させてみたい夢のスーパーショットである。




この記事が参加している募集

心に残ったゲーム

アニメ感想文