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富山駅路面電車軌道空間 GKデザインのワンポイント解説!

「スター・ウォーズみたいでかっこいい」富山市にある赤色LEDを活用した「スタイリッシュ踏切」が話題に(Yahoo NEWS)

最近「スタイリッシュ踏切」と言われ、富山駅路面電車を取り上げていただき、せっかくなので富山駅の軌道空間のデザインについて解説させてください!



1. なぜ西欧の交通環境は美しく見えるのか?**

 日本と西欧の交通環境で大きく違う点は「安心・安全」の考え方にあります。
西欧は個人の自由を尊重する国柄として規制されたり禁止されたりするのを非常に嫌がります。その視点はデザインにも反映され、柵もなく、注意喚起の設備も最小限で見た目にも非常にスッキリした印象になります。

 反面、「安心・安全」は基本的に自己責任となり、たとえLRVと人が接触しても必ずしも運行事業者が悪いとはなりません。一方、日本は「安心・安全」の責任は運行事業者または公共側の責任と認識されており、あらゆる点からあれは危ない、これも危ないと配慮し様々な安全対策の設備が設けられ、安心・安全ではあるけれども目に見える要素が多くなり雑多な印象になります。


2. LEDライン照明による注意喚起のデザイン

 例えば、「スタイリッシュ踏切」と言っていただいている歩行者横断指導線ですが、通常は屋外にあり床面表示や信号機、電光掲示板等で注意喚起します。
富山駅は他駅に比べて特殊で軌道空間が新幹線高架下にあり半屋外空間になっているため、通路側からLRVの接近に気づきにくいのではという懸念点がありました。
当初の検討では、「安心・安全」の視点から日本中の事例を調査し遮断機やホームドア、改札機タイプ等に到るまで様々な検討を行いました。

 デザインの視点としては、物理的に歩行を遮断する装置の本質的な必要性と現実的なコスト感覚、そして環境・景観としての美しさを秤にかけ、安全性とデザイン性を併せ持つ「音声付き信号機」「注意喚起LEDライン」の併用に落ち着きました。
 横断帯の各ホームの縦横に設置されているLEDのライン照明の点滅は歩行者がどの位置に立っても視界に入るように設計され、音声付き信号機と合わせてLRVの侵入を知らせます。当然LEVも横断帯の前で一度停車し超低速で移動するため安全性は担保されています。


3. 植栽帯に隠した横断防止柵のデザイン**

 同じように意識したデザインとして横断防止柵があります。横断防止柵は通常横断部以外の軌道空間に高めの柵として囲われ、これも雑多な印象になる要素となります。富山駅では、軌道空間の両側に低い植栽帯を幅広くとり侵入を物理的に防止し、通常より低い侵入防止柵を設置することで見た目にも美しく、且つ安全も担保するデザイン融合を図っています。


4. 横断指導線の視覚的なデザイン**

通常白線や色面を変えることで横断帯を明示する場合が多いのですが、富山駅の場合は軌道空間の横断帯の境界線を一定幅でピンコロにし、且つわざと凹凸の出るように施工しています。これは、視覚的にピンコロの上を歩きにくく感じさせる効果白杖が当たる凹凸を確保するためです。


まとめ

 GK設計では、こういった通常デザイン対象になりにくい要素を意識的にトータルデザインデザインとして取り込み、環境デザインや景観の視点においても美しい生活空間を創ることを目指しています。

富山駅路面電車南北接続(2020.3)                     実施設計:パシフィックコンサルタンツ株式会社+株式会社GK設計デザイン監修:株式会社GK設計
施工:佐藤工業・富山地鉄建設・朝日建設共同企業体
注意喚起ポール部分:ユニオン
注意喚起LEDライン照明:SD Lighting

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