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【16年目のデザインディレクターのワンポイント解説】意識されないことは最良のデザイン

今回は、富山駅路面電車軌道空間の安全設備のデザインを題材にGK設計の環境デザインの視点についてご紹介致します。

1. GK設計のデザインの視点

日本と西欧の交通環境は安心・安全の面で考え方の違いがあります。 大雑把に言って西欧は個人の自由を尊重する国柄として、規制されたり禁止されたりするのを非常に嫌がります。その視点はデザインにも反映され、柵もなく、注意喚起の設備も最小限で見た目にも非常にスッキリした印象になります。反面、安心・安全は基本的に自己責任となり、たとえLRVと人が接触しても必ずしも運行事業者責任とはなりません。

一方日本では、安心・安全の責任は運行事業者または公共側の責任と認識されており、あらゆる点から危険性に配慮し様々な安全対策の設備が設けられ、安心・安全ではあるけれども目に見える要素が多くなります。ここで重要な視点として、ただ目立つことが安全であるということではないという点です。さらに、これらの安全設備は統一されたデザインされていないことが多く雑多な印象になりがちです。

 GK設計は、そう言った通常意識されていない部分に注目し、安全性を担保しつつ空間全体が一貫したデザインで統一され、違和感が安全設備にいかない、美しさと安全性を併せ持つ意識されない環境デザインを常に心がけています。

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2. LEDライン照明による注意喚起のデザイン

 富山駅路面電車軌道空間における歩行者横断指導線は、通常は屋外にあり床面表示や信号機、電光掲示板等で注意喚起します。 富山駅は軌道空間が新幹線高架下にあり半屋外空間になっているため、通路側からLRVの接近に気づきにくいのではという懸念点がありました。「音声付き信号機」「注意喚起LEDライン」の併用は、横断帯の各ホームの縦横に設置されているLEDのライン照明の点滅は歩行者がどの位置に立っても視界に入るように設計され、音声付き信号機と合わせてLRVの侵入を知らせます。当然LRVも横断帯の前で一度停車し、超低速で移動するため安全性は担保されます。 

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3. 植栽帯に隠した横断防止柵のデザイン

同じように意識されない環境デザインとして横断防止柵があります。横断防止柵は通常横断部以外の軌道空間に高めの柵として囲われ、これも雑多な印象になる要素となります。富山駅では、軌道空間の両側に低い植栽帯を幅広くとり侵入を物理的に防止し、通常より低い侵入防止柵を設置することで見た目にも美しく、且つ安全も担保するデザイン融合を図っています。

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4. 横断指導線の視覚的なデザイン

横断指導線は、通常白線や色面を変えることで横断帯を明示するものです。富山駅の場合は軌道空間の横断帯の境界線を一定幅で100mm角の石材(ピンコロ)を張り、且つ、凹凸の出るように施工しています。これは、視覚的にピンコロの上を歩きにくく感じさせる効果と白杖が当たる凹凸を確保するためです。

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5.機能が集約された架線柱のデザイン

架線柱は、電線を吊るすためのビームを支えるための柱で、路面電車において必ず一定間隔で設置するもので、利用者自身には必要ないものですが視界には必ず入ります。富山駅においては、架線柱をデザインに取り込み、照度を確保する照明や視覚的に空間を連続させるための演出照明、行き先案内のための可変表示等の機能を架線柱に集約させ、ホームから屋外空間へと繋がっていく美しい景観をつくる重要な要素としました。

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まとめ

今回は、富山駅路面電車軌道空間の安全設備のデザインを題材にGK設計のデザインの視点をご紹介致しました。GK設計では、こういった通常デザイン対象になりにくい要素を意識的にトータルデザインとして取り込み、安心・安全を担保しつつ環境デザインや景観の視点においても美しい生活空間を創ることを目指しています。(磯部孝文)

富山駅路面電車南北接続(2020.3)                     実施設計:パシフィックコンサルタンツ株式会社+株式会社GK設計      デザイン監修:株式会社GK設計
施工:佐藤工業・富山地鉄建設・朝日建設共同企業体
注意喚起ポール部分:ユニオン
注意喚起LEDライン照明:SD Lighting


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