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だれかを応援するヒーロー【シャニマス/many screens 感想】

シャニマスはどれだけ良シナリオを出せば気が済むのだろうか。今月のシナリオイベントも素晴らしかった。いや、今回は特に、「巧い」というべきか。題材の合わせ方や、シナリオ全体における伏線の配置と最後のカタルシスまでの流れが非常に巧かった。メインが果穂に関するといういこともあり、自分の中で1,2を争うほど好きなシナリオイベントとなりました。

OP:『入室者』/放課後と落語とオンラインミーティングと

急遽決まったラジオ番組への出演。落語の名作『死神』をやることになった放課後クライマックスガールズ。全員集まる時間が取れないため、オンライン通話で練習をすることとなる。

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最初にオンラインに入ったのは、寮で一緒に住んでいる樹里と凛世。この二人、隣りにいるから画面を見てから相手を見る目の動きがとても良い。
次の入室者はちょこ先輩。プロデューサーに使ってみてと言われ、背景を放クラのロゴにしている。「片づけてない部屋を見せなくていい」なんてちょこ先輩、いったいどういう状況のお部屋なんだろうか・・・?そしてお約束の親フラもやってくれるちょこ先輩。この場面の母親がいる方に目線が向いているが細かいなぁと感心してしまった。
ちょこ先輩がドタバタしている間に夏葉も合流。そしてここで、気になる台詞が。夏葉が「お母さまにお目にかかりたかったわ」、凛世が「お優しいお声でした」と言う言葉から察するに、二人は智代子母に会ったことはないと思われる。だが、一人だけニュアンスの違う印象を述べている人がいる。

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まるで、いやこれは実際に会ったことがある言い方だ。樹里は寮住みで智代子は家が遠いという描写がある。その中で樹里が智代子母に会ったことがある、これが意味することとは……。いずれ私たちは、その真実を探るためアマゾンに向かわなければならないだろう。

最後は果穂が入ってくるのを待つだけとなったその時。突然画面が暗転し、謎の入室者が現れる。

「おせぇて・・・やろぉか・・・」

唐突な侵入者?に怖がる4人(とくにちょこ先輩と夏葉がかわいい)。
いったい、ダレダーダレナンダー。

1話『おしえてやろうか』/ほうくらてけれっつのぱー

「死神だよ・・・・・・・・・」

見よ、なんと可愛らしい死神だろうか。果穂がみんなを驚かせるために一芝居してた、というオチでした。

この回では、落語の「死神」を解説付きで放クラが読み合わせをしてくれるという、落語を知らない人にも嬉しい回でもある。実際、自分は落語を全然知らないので丁寧に解説してもらえるのはとてもありがたかった。
それにしても、夏葉の博識ぶりには驚くばかりだ。

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ここで注目すべきはやはり果穂の中の人の演技だろうか。すべてのコミュを観終わってこの回を見直すと、「動画で観た噺家の真似をしている果穂」という難しいニュアンスで河野ひよりさんが演技しているのが分かる。この表現力の機微に関心してしまった。

2話『長屋onスクリーン』/放課後のような時間

読み合わせが終わり、次のミーティング確認をして解散する5人とP。
でも、樹里と凛世はこのまま自分の部屋に戻るのが名残惜しいという雰囲気。結局、一緒にお菓子を食べることに。この、また明日も会えるのに離れるのが惜しい、という青春の匂いに、私たちは天を仰ぎ放クラと出会えたことへの感謝するだろう。

ふとPCを見やるとオンライン状態のままであることに気づいた二人。カメラには果穂の姿が映し出されていた。この時の凛世の「果穂さん……果穂さん……」と呼ぶ優しい声色が、とても耳に残る響きで、気づいたら何度もリピートしていました。きっと、これを読んだプロデューサー諸兄も同じことをしているはず。

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おやつを持ち寄り、オンライン休憩をする3人。ここで果穂は死神に対する疑問を口にする。死神は悪者なのか?そんな疑問に凛世は回答するも、果穂はわかったようでわからないというような表情。この部分はいわゆる伏線とよべるだろうか。

結局、夏葉と智代子もおやつ休憩に参加する。一度解散したのに「もう30分だけ」となんだかんだで集まってしまう。まさに親友たちとの放課後の風景を思い出す。


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凛世が静かに言うとより力を感じられる一言。

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『そばからの攻撃』。なんでだろう。文字にすると武士っぽいね?あるいはスタンド攻撃。


3話『many skies』/放課後→早く帰らなきゃ

少し時間が進んで、夏葉が生放送で番組出演するのをオンラインで集まってみんなで応援するお話。少し昔の時代ならみんなで集まると言ったら、マックとかファミレスで何時間も話し込むのが定番だった。それが今の時代、家にいてもみんなで気軽に集まれるのだから、時代は変わったなとしみじみ実感する。
楽曲『よりみちサンセット』では、遠回りしてみんなともう少しだけ一緒にいたい曲だった。それが今度は家に帰って一緒にいたいという時代の変化とともに「一緒にいる方法」が少しずつ変わってきているのが分かる。でもだからと言って「ずっとオンラインでいい」というわけではなく「もう少し一緒にいたい」という気持ちは変わらないところに放クラらしさを感じてしまう。

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みんな大好き敏腕記者の善村さん登場。果穂の表情が分かりやすいというのもあるだろうけど、楽しそうと気づいて話題を切り出す善村さんはやはりできる人だなと感心してしまった一幕。

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少し意外、と言ったら失礼だろうか。凛世が番組のディレクターと冗談を交えながら楽しく雑談している一幕。P以外の男とは話す気はない…とまではいかないだろうけど、もう少し淡泊な対応してるのかと勝手に思ってたのでこの場面には少し驚いた。(しかもアシスタントともども相当慕われているよう)

4人が生放送のために早く帰らなきゃ、と色々済ませなきゃとソワソワしている姿は、誰しも共感するだろう。歌番組で好きなアーティストの出番までソワソワしている感じ。CM明けを今か今かと待ちわびてる瞬間。それがよく読み取れて非常に共感ができる。

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小宮家では塩味の袋麺を買いだめしている。これはテストに出るので覚えておこう。

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コーナー冒頭に小林一茶の俳句を引用したり、天気図を見て鋭い発言をしたりと、20歳とは思えない教養の広さ。そして夜景の似合う立ち姿、これが大人か。
SNSの投稿で盛り上がる4人。樹里がハッシュタグを使えてないのが解釈一致ってTwitterで話題になってたぞ。

生放送が終わり、そのまま夏葉と合流してオンライン通話で練習の時間。夏葉も言ったように、オンライン通話なのに「おかえり」というのが、家に帰ってきたようで心が温かくなる。私もお家に帰りたい。これ書いてるのは家でだけど。安心できる場所という意味で。

4話『大入御札』/大成功と1枚の手紙

本番当日。練習の成果か、番組構成作家もべた褒め、SNSでも話題になるほどの大盛況で終わった放クラの『死神』朗読劇。
あくる朝、上機嫌で事務所に向かう果穂。溜まっていた郵便物を持っていこうとし、一枚のハガキが目に止まってしまう。

このまま仕事が大成功でよかったね、で終わらせないのがシャニマスシナリオの意地悪なところ。

「どうして智代子ちゃんをいじめる悪い役をしたのですか」

ハガキは果穂のファンで小学校低学年(推測)の子からで、果穂が悪役をやったことが理解できなかったのだ。無垢ゆえに、その言葉は果穂の胸に突き刺さる。

悪役は芝居の華。物語において悪役は、その物語の出来を左右する要素といっていい。成長すれば、ドラマで悪役を演じているからといってその人が悪人ではないことは理解できるだろう。しかし、まだ小さい子にはそれを知識として理解するのは難しいだろう。小さい頃はそういうものだ。誰しも覚えがあるだろう。もしかしたら、果穂も似た経験があるのかもしれない。
聞いた話だが、仮面ライダービルドでラスボス「エボルト」を演じた前川泰之さんは、変身ベルトを装着すると息子さんに大泣きされるそうだ。その他にも、ドラマで悪役を演じたら嫌がらせの手紙がいっぱい届いた、なんて話も聞くので、案外と区別のついてない人が多いのではないだろうか。
ヒーローをもちろんカッコいいというが、悪役の演技についても言及しているコミュもあるので、今の果穂自身は区別のついている方だ。それでも、ファンにヒーローをであることを求められ、葛藤することとなる。

5話『夕やけオフライン』/一緒にいたい

事務所に向かう智代子と夏葉。「事務所まで行くなら—――少しでも、長く一緒に歩きたいわ」なんてきいたら絶対に嬉しくなるような言葉じゃあないですか。そんなこと言うの反則ですよ夏葉さん。

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途中、公園で猫と遊んでいる?果穂を見つけ、声をかける2人。果穂の様子が少しおかしいことに気づく。

「ネコちゃんをこわがらせてしまったら あたし……悪者ですよね?」

良いこと、悪いことの判断に迷う果穂。それを見た2人は、ミーティングを提案する。果穂は2人に迷惑だと遠慮するが、2人はいまミーティングがしたいと優しく言ってくれる。本当になんて優しいお姉さんたちなんだろう。考え方を正そうとするのではなく、まず果穂がなぜその考えに至ったのか話会うことを優先してくれた。

6話『わるい神様』/議論ができてこそ放クラ

オンラインで全員集まり、事情が説明され終わったところから始まる。

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ユニットだから、みんなで考える。一人の問題はみんなの問題。

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「きちんと議論できてこそ、放課後クライマックスガールズ」

2年前、彼女達を初めて見た時にまさかこんなセリフを口にするとは思わなかった。ぱっと見、いやどう見ても、元気が取り柄で何も考えず突き進む青春ユニット!って紹介の仕方だったのに。
しかし、年齢も幅があり性格もバラバラな5人であることは、議論をするうえで様々な意見を出せる要因なのではないか。前回のイベント『アジェンダ283』においても、果穂の発言から始まり、様々な意見を交えて議論する姿が映し出されていた。ノリがよくて、いざとなれば議論もできる集団。これはものすごく強いユニットなのではないだろうか。

議論の中、死神が「悪いけどいいやつ」という曖昧な路線へとなろうとした時、男役の智代子が男を演じていた時の心情を語る。「生きよう、生きようって考えてたんじゃないかな」

夏葉は問いかける。「男に『生きよう』と思わせた死神は悪者かしら?」

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混乱する果穂は自分の考えを振り絞って答える。死神を演じたかったのは、動画で観た落語家がカッコよかったからで、自分を見てくれている人のことを考えていなかったのだと。果穂はアイドルとして、あるいは役者として必要なことに気づき始める。もちろん、今までの果穂も色々なことを考えながらアイドルの仕事をしてきただろう。憧れや「好き」の気持ちを出すことが多かった。役柄を考える、物語の面白さをみんなに伝えることの難しさに直面した。

あげサゲ!!!!!/だから、見ててください。あたしの『死神』

もう一度、やり直したい。その果穂の提案に賛同する放クラメンバー。今度はオンラインミーティング上でやりたいと提案し、実行する。

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(余談だけど、SNS上のオタクの発言を表現するのが異様に上手くない?)

番組プロデューサー、構成作家、凛世が出ている番組ディレクター&アシスタント、もふもふ天気予報公式、放クラファン、たくさんの人に見守られながらオンライン落語朗読会が始まる。ナレーションの配役や台詞、演じている雰囲気も前回と違うものになっていることが視聴者にも伝わっている。そして物語のクライマックス、男がろうそくに火を移し替えようとする場面に差し掛かるとURLが投稿される。


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なぜ、今回オンライン形式にする必要があったのか。果穂が出した答えは、「応援すること」だ。命の長さをいじった男を罰するのが死神の役目だ。だが、男がチャンスを掴むために、応援することはできる。
ある意味、男が枕の位置を変えたようなルールの抜け穴を突いたカタチになったのがまた面白い。

だが、突然のことに流石に困惑する視聴者。夏葉や樹里が加勢しようと思ったその時。

「燃えるぞー。燃えるぞー」

ひとり、またひとりと、少しずつ声が集まっていく。中には凛世が出演している番組ディレクターの声も(声で気づくの凄いな凛世)。ろうそくが付くように、声が集まっていく。これが人のあたたかな光……。某ジオン総帥もこの光景を見ればアクシズ落としもやめてくれたかもしれない。

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樹里、凛世、夏葉も加わり、「燃えるぞ」コールは最高潮となり、男は笑顔とともに新しいろうそくに火をともし、物語はハッピーエンドとなった。

ヒーローアイドル小宮果穂

小宮果穂はどんなアイドルか。それに立ち返ると、ヒーローを目指すアイドル、それは誰かを「応援する」存在になることだ。果穂自身、ヒーローの存在に勇気づけられたように。pSSR『エクストリーム・ブレイク』のコミュでは、好きなものに胸を張って好きと言えることを応援するアイドルになりたいとも言っていた。どんな時でも、だれかを応援する……それがアイドル小宮果穂の核だろう。なれたんだね、最強のヒーローアイドルに。死神という悪役を通して。

明日へ/最強を超えるアイドルへと成長する

ホラーチックな「死神」という落語をベースに夏の納涼を感じさせ、時世による流行りのオンライン通話をアイテムとして組み込み、果穂の「役を演じること」「良いことと悪いことの定義は何か」「ヒーローアイドルとして何をすべきかの再確認」という成長要素を一挙にやった今回のシナリオ。やはり、巧い。

シャニマスのシナリオイベントでは、必ずしもアイドルにとってゴールではない。果穂は未だ「死神」という存在に対して完全な理解はできてないが、それ故に「いま分かっていることで全力を持って取り組む」ことを目指した。そして「それでも観客に伝わらない時はもっと勉強します!」とも心に誓っている。果穂の進化は止まらない。必ず、最強よりもっともっとすごいアイドルになるだろう。

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アイドルが成長するなら、プロデューサーも成長しなくてはならない。自分にできることとなんて、文章書くくらいだけれど、少しでもシャニマスの魅力を伝えられるようもっと頑張ろう。そう改めて思わせてくれたシナリオだった。ありがとうシャニマス。でも限定夏葉が引けなかったのは悲しいぞシャニマス。

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報酬SSRのコミュとかsSSR智代子のコミュの話とか、あのバンド衣装とかまだ話したいことはあるけど、それはまた別で書こうと思います。ここまで約6000字弱。読んでいただき、ありがとうございます。


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