farewell.2

随分と長い間、
祖父に距離を置かれていると思っていた私。

その疎外感を感じるきっかけとなった一言を
聞いてしまった瞬間の他に、もう一つ
私には強く思い出に残っていた出来事がありました。

それは、リビングでおもちゃ遊びをしていた時のこと。
ブロックを組み合わせて作ったものを戦わせるような、
ちょっとはしゃいだような遊びをしていたんです。

私も兄もはしゃいでおもちゃを振り回し、
祖父はそんな私たち兄妹に付き合ってくれていました。

ところが、振った腕が勢いを余って祖父のメガネに激突。
フレームは折れ、レンズはポーーンと飛んでいってしまいました。

幼いながらも、私の中で「まずい」という思いが駆けていきました。
きっと怒鳴られるだろうと、身を固くしたのです。

ところが、祖父は顔を真っ赤にしたものの、
震える手でメガネを掛け直し、「ちょっと待っててな」と
予備のメガネを取りに戻っただけでした。


怒鳴られると思っていたからか、
メガネを壊してしまった罪悪感からか、
私はなぜかこの思い出を鮮明に覚えていたのです。

なぜ怒鳴らなかったのか?
幼い私は、そんなことまでは考えが及びませんでした。


(続きます)

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