第1話 全てのはじまり

2003年秋、中1のある日、音楽科の富岡博志先生に呼び出しを受けた。

「昼休みに音楽室にくるように」

給食を食べ終わると音楽室の防音扉を開ける。そこには、中3の男子の先輩達が2,30人はいただろうか。なに?いじめられるの?少しばかり怖く感じたが、富岡先生が音楽室にくる。

富岡先生は音楽室の使い方が少し変わっていて、生徒用の全ての机が取り払われ、ピアノを取り囲むように生徒用の椅子が整列している。
でも先輩達は座る様子ではなく、椅子よりもさらに近づいてピアノを取り囲んでいった。

先生がピアノを弾き始める。聞いたことのない曲。
そして、先輩達が一斉に歌い始めた。男声同士が異なるパートの旋律をなぞり、通常の中学合唱では聞けないハーモニーが奏でられる。

たちまち、空間が力を帯びて、身体に電撃が走った。


「フレトイ再び」「ケサラ」「南風」どれも1年生には難易度が高く、まだ教わっていない曲ばかりだった。


「ようこそ、有志男声合唱団へ!」
そこは、昼休みにだけ訪れる異空間だった。

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