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それでも美しいと言う

ご近所の草原が紅葉していて、綿毛の種を持った植物を見られて、光るように美しい野菊が咲いていて、ここがかつて名も無い湿地帯だったころを思って。

世界があまりにも美しくて、絶望も希望もいっしょくたにして、犬と歩きながら

かつてのわたしであったひとと、その相棒と、あるいは誰でもなかった影と、歩きながら。

救われてしまった。

あの日選ばれなかったはずのわたしは、それでも、この世界を美しいと言ったのだ。


(231122)