「エビデンスを持って対処する」 日本で唯一、その姿勢を崩さなかった県がある。肯定派も否定派も【必読】の価値ありです。 【転載】NHK奈良『荒井知事に聞くコロナ対策と奈良』

2021年12月17日。この1年の新型コロナ対策について荒井知事に1時間を越えるインタビューを実施しました。緊急事態宣言・まん延防止等重点措置を巡る対応は?県民への説明は?取材の中で感じていた“モヤモヤ”、県民1000人へのアンケートで見えてきた疑問をぶつけてみました。
<聞き手>

NHK奈良放送局県政担当 及川佑子※時制はインタビュー時。やりとりを再構成しています※

ことしのコロナ対策 どう総括

及川記者:
ことしも何度も、新型コロナウイルスの感染の波が襲って来ました。この1年を振り返って、ご自身の取り組みはどうでしたか?

荒井 正吾 奈良県知事:
新型コロナ感染症対策は、大きな方針の重点が国のほうも分かれていたような気がします。医療対策を中心にするか、感染症の拡大防止を中心にするか、ワクチンを早く打つのか、3つの方向があったと思います。

ワクチンはちょっと遅れ気味でありました。しかし、後で追っかけてしまった。地方でできることは、やはり医療ですので医療政策を中心にする。感染者を早期に発見して引き取る、入院あるいは重症化しない、させない、死者を出さないというのが一番の目標です。これは国の目標の中でも、大きな位置を占めてもいい項目であったと思います。

奈良県としてはこの分野は一番、手が届きやすい、責任も発生するということで、死者を出さない、重症者を出さない、すべて入院させるという方向で、最初から来ています。医療従事者に頑張っていただいて重症病床にはすべての重症患者を入れることができました。

死者はいろいろな原因で発生しましたが比較的、低位におさえられました。自宅療養が一時、急速に増えた時がありましたが、一時を除いて比較的少なくて済んだと思います。

及川記者:
ここはもうちょっとこうしたほうが良かった、と言うところはないですか?


荒井 正吾 奈良県知事:
県と国とのすり合わせで難しい面があったと思います。国は感染者を発生させるのを防止しようというのに注力されました。できるととてもいいですが、今度の変異ウイルス・オミクロン株でもそうですが、なかなか難しいですよね。

ウイルスは緊急事態宣言でも、何でもやっつけることはできないです。いままでの感染症の経験から、人間は逃げるしかありません。逃げるために予防のワクチンをするとか、治癒をするための薬を発見するとか、そういうことを繰り返してきたわけです。ウイルスを根絶することはできたらいいですけど、できません。

感染症拡大防止といっても、逃げるしかない、それと経済に打撃が大きい。日常生活の打撃をできるだけ少なくして逃げるには、どうすればいいかという点が戦いの場だったわけですが、国のほうはどう思われたか、感染拡大防止に注力をされた。政治的な理由もあったのかもしれません。

感染の波は、日本はどういうわけか、上がって下がり、いまはとても下がっている状況です。何が効いたかわからない、とみんなキョトンとしています。どうすれば感染拡大を防止できるのか、わけが分からないのではないかと思います。

外国を見てもワクチンが相当重症化に効くということが、分かってきていますけれども、万能ではないような感じがします。これからもワクチンが重症化の予防と感染拡大防止の主役になると思いますけれども、日常行動を制約して感染拡大を防止するという手法はもう少し高度化、洗練しないと大変だなという印象です。

緊急事態宣言・まん延防止等重点措置

第4波まっただ中の2021年4月上旬、奈良県では感染者数が連日過去最多を更新していた。その頃、大阪・兵庫ではまん延防止等重点措置が適用。4月下旬には、大阪・兵庫・京都の3府県に緊急事態宣言が出された。

及川記者:
ことしの4月頃、感染者が日々増えていた時期に、西村経済再生担当大臣(当時)から電話があり、奈良県もまん延防止等重点措置の適用についてどうか、という話があったと思います。当時、西村大臣の提案・説明をどう聞き、受け止めていましたか?

荒井 正吾 奈良県知事:
西村大臣は感染拡大防止と経済の調合に責任を持たれております。彼の武器はまん延防止等重点措置と緊急事態宣言を適用することによって感染拡大防止するぞ、というスタンスでありました。

よく見てみますと、それが効くの、効かないのと、いまとなって本当に効いたかどうか分からないとまで言われるような状況です。感染拡大防止の決め手の緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の中心の武器は、飲食店の時短制限と酒類販売禁止のようなものでありました。感染のもとを防ぐためには人の接触を減らすことが必要です。接触する場合には用心して接触する、その接触の場が飲食店だと、こういう決めつけでしたが、職場でも発生するし、病院でも発生する。何より家庭でも発生するというような状況であります。日常活動全体に占める飲食店というのは、大都市では比重が高いかもしれないが、一部をとって決め手だというのは、いま振り返りがあまり行われていないようですけれども、効いたかどうかの振り返りは是非いると思います。

うつるのを用心しようというのは、個人的な話になります。当初はステイホームという言い方がされていました。ステイホームしていても、家にウイルスを持って帰る人とステイホームしていたらうつってしまいます。ただ、ずっとステイホームできないわけですから、標語で行動基準をつくるのも限界があったように思えます。

西村大臣の緊急事態宣言の主役であります飲食店時短は、奈良の場合はそもそも午後8時を過ぎてやっている店は少ないというのと、午後8時を過ぎて開いている店は割と安全なところが多い。また、緊急事態宣言は県全体、吉野でも、十津川でも、ということですので“ too much(過剰)”な面もあるし、効果は疑わしいところがあると思いましたので、意味がないという判断で要請しませんでした。

及川記者:
大臣の説明、腹に落ちなかったですか?

荒井 正吾 奈良県知事:
奈良の実情を教えてくれということで、エビデンス(証拠・根拠)が割とある資料を大臣に送りましたら、職員とともに見られてからは事務的にも何も言ってこられなくなりました。 奈良の実情、一番大きなエビデンスは、大阪の感染とカーブが同期していると、10分の1で同期している(下図)というのが、大きなエビデンスではなかったかと思います。あまり放送も発表されませんけれども、あれが一番効くエビデンスじゃなかったかと思います。

(奈良県庁ホームページ掲載 大阪と奈良の感染者数推移のデータ)

※奈良のグラフは10倍で記されている
※実態は大阪の10分の1で相関推移している


知事、県民の声 どうですか?

及川記者:
知事は国の措置適用には慎重な姿勢を貫いてきましたが、今回、NHKでは県民の皆さんにアンケートを実施しました。

緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の適用が奈良で必要だったか、聞いたところ、一定数は「必要だった」と答えていました。

荒井 正吾 奈良県知事:
調査は最近ですか?奈良は緊急事態宣言をしていないということをご存じで、しかし、感染者数は同じように減ったと言うこともご存じだったということですか。減ったけれども、必要だと思われているということですか。どうしてでしょう。奈良県は同じように減りましたね、必要だったですかと聞いていただければ良かったかなと思います。ご質問がちょっとおかしかったのではないかと思います。

昔の質問だったら分かれると思いますけれども。緊急事態宣言、まん延防止等重点措置をしなくても減ったのに、さらに必要だと答えられたのは、どうしてか、と思います。事情をよく知っていてそう書かれたのか、質問の仕方によったと私は思いました。

緊急事態宣言などが万能薬みたいに受けとめられて、クラスターが無くなると言うふうに、政府が宣伝した。皆さん(メディア)も含めて大きな罪だったと思います。そうじゃない、科学的合理的に考えて対処しましょう。必ず防げるところは、防げます。必ずうつる時は、物理的にうつります。人の流れがあってもそれだけではうつりません。接触してエアロゾルとか、飛まつとかで接触して、ウイルスが入ってこないとうつりませんので、対策を徹底的にやればうつりません。

クラスターの施設の対策、飲食店の対策、家庭での対策、やり方は違いますけれども基本的にはウイルスが飛んでくるのを防ぐ。マスクで防ぐ、換気で飛ばす、接触を防ぐ、その3つですから、それをやればうつりません。宣言をすれば、防げるというわけではありません。防ぐことにはなりません。それを強調したいです。いまとなっては、余計分かっていることなので、宣言とか、そういう効果のないことを思われなくても、私はいいと思います。

コロナ政策、知事の軸足は?

及川記者:
立場・立場でいろいろな声があるなかで、全員が納得する政策はすごく難しいと思いますが、知事は、政策を決定していく、判断していく中で、どういうことに軸足を置いて、やってきましたか?

荒井 正吾 奈良県知事:
感染症が蔓延する時、みんな不安の種類が違うわけです。人が通らなくなると感染が減るのではと思っておられる方と、いや人が減ると困るな、感染があっても安心して来てもらうようにするから来てほしい、と思う方とで全く違うわけです。その中で、どのような感染症対策をとるべきか。日常生活との折り合いをどうするかという大変難しい判断ですけれども、一般の方が科学的根拠で判断されているかどうかは大きな決め手です。

山崩れでも、津波でも、感染症でも、戦争でも、リスクが発生した時、パニックになられますので、為政者が一番気をつけるのは正確な情報を流す。それを信じてもらう、信用してもらうということです。政治家がフェイクを入れることは絶対だめ。リスクを切り抜けた民族とか国家はすべて正しい情報を正確に流すというのが鉄則です。

私も「これがエビデンスになるべき情報だ」ということぐらいはわかりますので、これを信じて、エビデンスにのっとって対策するのが私の役目。いま、これからもそうですけれども、それがリスクを切り抜ける最大唯一の方法だと信じています。正しい情報を発信することが最大の薬ということになります。

及川記者:
県で分析されたエビデンスを知事は、定期的な新型コロナの対策本部会議の席上や、記者会見などの場でも説明してきました。ホームページにも資料が載せられているので、これについても知っているか、アンケートでたずねてみました。

荒井 正吾 奈良県知事:
これも皆さん(メディア)に、責任があると思います。毎日感染者数は出るけど、感染者数の流れが大阪と一緒に上がったり下がったり、同期しているとか、時短のある県とない県とで同じ(下図)というデータがあまり出ていないです。それが大きいのではないですか。マスコミの責任も、大きいなとつくづく思います。

(奈良県庁ホームページ掲載 関西2府4県の感染状況推移のデータ)

県の発信は十分?

及川記者:
県として発信のしかたは?

荒井 正吾 奈良県知事:
元のデータは出していますので、それを届けるかどうか、届いているかどうかということだと思います。届け方というのは、いまのリスクコミュニケーションでとても大事なことです。エビデンスを届ける政治はなかなか難しいです。逆にフェイクも入れて、ああだこうだという言葉のほうが届きやすいです。耳に入りやすいし、テレビでもそのような情報のほうがはるかに多いのではないでしょうか。

エビデンス情報と、一般の意見・オピニオン情報で、オピニオンの方が圧倒的に多いのが日本の特徴です。これには正直、危惧しています。エビデンスがもっと流れると、日本の国民はすごく賢いですから、エビデンスが流れてくると、正確な正しい判断をしていただけると信じています。それをつくって届けるのは誰でしょうか。 なんのためにメディアはあるのかというぐらいに思っています。

ちゃんと届けて、毎晩でも見られるとなれば、私はよかったなと希望します。かなわない夢でありますけれども。そうなれば、日本のリスク対応はすごく上がると思います。エビデンスが茶の間に届きさえすれば、すごく上がると思います。

及川記者:
知事としては説明・発信は存分に行った?

荒井 正吾 奈良県知事:
エビデンスを届ける役目はしていますけど、そうですねえ、芸人になれとおっしゃる面もあるかもしれませんが、芸人が届けると本当に伝わるのか、というふうにも思います。

政治家としてエビデンスを届けるのは、なかなか難しいです。印象とエビデンスは離れている場合がありますから。こうした時のリスクコミュニケーションはとても難しいです。奈良県の場合もその1つだったと思いますが、届かないのは誰の責任だろうか。どのように届ければいいのか。この場合、役に立つエビデンスは何だろうか。とにかくエビデンスを届けようということだけには一生懸命になっていました。

それがないと私どもの役目の基本が崩れます。それが知らない、届いていないと、いまおっしゃったわけで、これはまた別の作業、どのような届け方が必要だったかっていうことになります。エビデンスの製造と流通ということになります。

及川記者:
エビデンスの流通に手応えはありましたか?

荒井 正吾 奈良県知事:
自然災害の時は、日本は割とリスク情報は強いです。ただ、数字に割と弱いですよね。感染症の疫学はほとんど数字です。感覚的になかなか届きにくい感じがあります。国のほうで統計をうまく処理して、感染は県をまたぎますので、大阪との感染ということを、分析していただきたいなという思いはあります。

どのように届けるかということになりますが、大阪との関連情報がなかなか出てこなかったですね。大阪の10分の1で推移している情報が一番のエビデンスだったです。ただ、ご存じないということは感じますねえ。何度もしゃべっていますが、テレビなどで、奈良県の感染者数が大阪の10分の1で推移しているというグラフが出ればいいなといつも思っていました。 ちょっと寂しかったです。

リーダーとしての発信は?

及川記者:
リーダーの言葉の力というのも、また必要なのではないでしょうか?

荒井 正吾 奈良県知事:
言葉には限界があるということですね。毎日、出ていたとしても、2日に1度、フェイクらしいものが入ってしまうのが恐ろしいことです。エビデンスを毎日言っている政治家は人気が出ません。だから聞いてもらえないのではないかと思います。わたしは、なかなかできないことです。 フェイクを入れて発言するのはできないことです。

及川記者:
あまり、しゃべって訴えることはしたくなかったということですか?

荒井 正吾 奈良県知事:
しているつもりですけど、感染症・疫学っていうのはとにかくデータですから。データを口でしゃべって分かるように、ファウチさん(※)が同じことをしゃべってくれば、わかってくれると思います。政治家はファウチさんじゃありませんから。

(※)アンソニー・ファウチ博士
アメリカ政府の首席医療顧問。感染状況・対策やワクチンに関する情報などを発信

荒井 正吾 奈良県知事:
政治家にファウチさんのようなエビデンスをしゃべれというのは、ちょっと違うのではないかと思います。むしろ政治家は「私は素人ですからわかりません、しゃべれません」というのが素直じゃないかといまでも思っています。専門家のしっかりした人がしゃべって信頼してくださいね。あの人の言葉正しいと思いますよ、というぐらいのことは言えると思いますが、同じことを自分でしゃべって信用しなさいということまで政治家に期待するのは逆に危ないかもしれません。

他府県との足並み、求める声には?

及川記者:
県民のみなさんに県のコロナ対応についてどう思うのか、聞いたところ、肯定的な意見から否定的な意見まで様々ありました。その中に、周辺府県と足並みをそろえてほしかったという趣旨の声が複数ありましたが、どのように考えますか。

荒井 正吾 奈良県知事:
感染症、経済、日常生活を調和させて収束させるというテーマは、政治が得意とする利害の調整じゃないんです。この人の言っていることと、この人の言っていることを調和をしてやろうとか、それじゃだめなんです。感染の防止に正しいことを実行しなきゃいけない。そういうタイプのことですから。多いほうにしたらいいってわけじゃないんです。戦争も同じですけれども、リスクの時の逃げ方も同じです。多いほうに逃げたら助かるという保証はないわけです。大陸の遊牧民は、大概、分かれて逃げます。農耕民族はまとまって逃げようと、村長がこちらだといえば信じていく。場合によっては全滅することはある。

要はリスクをどのように判断するか。近隣が正しければ行けばいいんだけど、単に同じことをする、同調でやるというのは、日本人のメンタリティーが如実にあらわれて怖いなと思いました。だからそれを世論とおっしゃるのは間違いだと思います。

私に責任がなれければ、それもそうだなというぐらいですけど、世論に同調するのは、私の責任から外れてしまうというふうに思います。滋賀県知事は、奈良県と違うことをして、まん延防止等重点措置もしたのに、感染者が増えてしまったと嘆いておられました。緊急事態宣言もまん延防止等重点措置もやってもやらなくても同じ結果だったということが、滋賀と奈良を見るといまだと分かります。

同調しないと悪い政治家か、ということになりますけど、そうじゃないのではないかと私は思います。正しいことを責任もってしなきゃいけない。責任をとるのは当然、覚悟がいります。同調していれば責任を逃れられるというわけではないと思います。「6割の世論が言ったもん」といって政治家が責任逃れするのは卑怯です。

世論にエビデンスが十分理解された時には、世論は正しい方向を向いていただけると信じておりますけれども、リスクがはっきりしない、正体がはっきりしない時の世論は正しいかどうか、分かりにくいところがあります。その時の世論を捉えて行かないのかとおっしゃっても、そういうわけにいきませんねと、いうことをいまは言いたいと思います。怖いところがあります。

及川記者:
ご自身が感じる怖さが、伝わっていないというもどかしさはありませんでしたか?

荒井 正吾 奈良県知事:
何を信じてもらえるか、うまく伝える、それが大事だという認識が大事ですよね。伝えようとしている、ということを見てもらわないと。

明日、気が楽になるのはエビデンスではないことが多いです。あくる日はこれで大丈夫、と言われても、大丈夫じゃないことも多いです。「水をかけよう、コロナがなくなるよ」と言われたところでなくなりませんので。根拠の無いことが(テレビの)画面に出てくるのは悲しいことです。とても悲しい時期はありました。正しくなさそうなことを、専門家みたいな方がしゃべっているな、というのは、悲しいことでした。

及川記者:
おそらくその時期は、感染者数が増えていた時期だったのではないでしょうか?

荒井 正吾 奈良県知事:
そうですね、精神的にパニックに多くの人がなっていた時期だと思いますので、その時は、わらをもすがるという、「これで大丈夫だ」という人がいれば、「そうだ」となるメンタリティーが発生するから。それは大変怖い時期ですね。

その時に、「ちゃんとした行動しようよ、冷静にしようよ、科学的根拠のあるものによっていこうよ」ということを政治家は叫ばなきゃいけないと思いました。「同調しようよ」というのは、正しければいいですけど、正しくない場合も結構多いですから。

及川記者:
不安やもどかしさはありませんでしたか?

荒井 正吾 奈良県知事:
不安というか、それしか道はないと思っていましたから。エビデンスは何かってことを一生懸命探してそのほうに行くと必ず収束すると信じていました。クラスターでも、家庭でもやることをやれば収束。

万が一感染されても大丈夫ですよ、ちゃんと入院してもらえますよ、というメッセージは大事だなと思いますし、ワクチンが出てきてからはワクチン早く打つと防止できますよ、というので一生懸命ワクチンを打つと。すると1番目の感染防止の意味が薄れてきた結果になりました。

感染が広がらなきゃそもそもいいじゃないか、という理屈はありますが、感染症は広がる時は広がってしまう。いたずらに心配しないで、誰と一緒に走るかっていうよりも、コロナのウイルスからどう逃げるかっていうことに科学的根拠に基づいて考えましょうね、と申し上げたいと思います。科学的根拠というのをいつも出す責任はあると思いますので、それはよく知ってもらうのが何よりだと思います。

及川記者:
コロナでは毎日のように記者会見する人たちが、全国でたくさんいて、情報に触れることも多かったですね。

荒井 正吾 奈良県知事:
まずいパフォーマンスで申し訳ございませんでした。こんな調子でいっていると人気が、伝達力というかアピール力がどんどん落ちてコロナにも影響したかもしれませんが・・・申し訳なく思っています。

及川記者:
知事は周りからどうみられるか気になりますか?

荒井 正吾 奈良県知事:
ずっとそうですけど格好つけるのは全く下手ですよね。もうちょっと演劇でも習っておけばよかった。演劇でも習えば、とてもいい格好になる時もあったかもしれない。政治家は演技が必要かもしれないが、演技なしでも政治家らしくなるかもしれないし。わかりませんね。政治家の像というのは。

新変異ウイルス、第6波、県の対策は?

及川記者:
ワクチンの接種が進み、社会経済活動との両立というところに世の中がうつりつつある一方で、オミクロン株という新たな変異ウイルスが出てきました。今後はどのようなことに取り組みますか?

荒井 正吾 奈良県知事:
コロナ対策は、オミクロン株でも同じことだと思いますが、感染が再拡大することは十分予想しなきゃいけないと思います。コロナ対応病床をちゃんと整備して、大丈夫ですよと入院できますよという状況にしたいと思っています。第5波のピーク時の療養者数を上回る宿泊療養施設の部屋と入院病床を用意して、いまはガラガラですけれども、空けたままにしています。急激に感染が拡大した時に、整備が追いつかない事例がありましたので、いまはムダなように見えますけれども、用意しておこうかと思っています。

もう1つは、保健所には感染者にどこの施設に行ってもらうとか、健康観察をするとかの機能がありますが、特に初動の感染者が増える時に業務がなかなか追いつかない状況がありました。初動がちゃんと機能するように、保健所の機能をいま見直して強化をしたところです。

さらにもう1つは、ワクチンの3回目の接種です。重症化予防に効くことまでは分かってきましたが、オミクロン株に効くかどうか、急激な感染力がある場合に効くかどうかはこれからの勝負になります。しかし、いまは切り札としてはワクチンしかありません。もう、時短は効かないのではないかなと思います。まだ、国はやるのかな。

何が効いたかどうか、国に検証してほしいですね。家庭では何が効いた、施設のクラスターには何が効いた、大阪の勤務では何が効いた、飲食店は何が効いたか。どのようにすべきか、国が次の拡大に備えてアイデアを出し、議論が進めばいいと思います。国会での大事な議論だと思います。

過去の反省を、奈良でもいたしますけれども、奈良県では医療の受け入れ体制を中心に用意をしています。日常生活はできるだけ維持してくださいね。心配ならば、エビデンスをもってお伝えしたいと思います。毎日の感染者数だけで一喜一憂しないで、どのように近隣がうつっているか、この二重のグラフ(大阪と奈良の感染者数の推移のグラフ)が出ればよりわかりやすいですね、とお伝えしたいと思います。

後知恵になってなかなか至らなかったと思いますけれども、後知恵は出るものですから、後知恵を先知恵でするようにできたらと思います。クラスターの発生した施設では、後で出た知恵を先知恵として対策をとると、その施設では2度と感染が発生していない実情があります。単純なことですけれども、正確にやると心配はないですよ、きめ細かさがいると思いますけれども、続けてやってくださいねというメッセージを送りたいと思います。

コロナには魔法のようにかかるわけじゃありません。現実があってかかります。抜け道、見えない抜け道があるから、うつるということがつくづく分かります。蔓延すると、世の中失速してしまいます。本当にあらゆるところにあるならば、接触そのものを防がなきゃいけないと、いう事態はあるかもしれませんけれども、大都市と地方ではずいぶん違いますので、全国そのようにするのも、ちょっとあまりいい案ではないと思います。

コロナ感染に気をつけながら受け入れ体制をとにかく十分にしてワクチンを打って、感染が拡大した時には用心をして、日常生活をなるべく壊さないようにしましょうね、ということがいままで学んできたことでございます。これからもそれが基本になると思います。奈良県に同調してくれるとうれしいですね。

及川記者:
そっちの同調は歓迎ですか?


荒井 正吾 奈良県知事:
どうでしょう。 ふふ

【転載後記】

学問の神様、福沢諭吉は言った

「一身独立して一国独立する」

経営の神様、松下幸之助は言った

「新聞やテレビも一つの情報として参考にはするが、さもそれが真実だと思い込み囚われてはいけない」

荒井知事の姿勢とはさまざまな情報を参考にしつつ『いかに県民の益を守り抜くか』という使命とも思えるような志に支えられているように思う。

我々個人々々が情報を精査し考えることを放棄してはいないだろうか?国やテレビ局に雇われ、雇い主に都合のいいことしか言えない通称【専門家】の言葉を鵜呑みにし、一方的な情報にがんじがらめに囚われてはいないだろうか?

あなたのリスクはあなたにしか取れない

情報を集めず、考えることを放棄し、流された代償は自らで取るしかないのだ。

「国がこう言ったから」
「テレビで言ってたから」
「友達もしてたから」

さてこの2年、あなたの思うような世界になっているか?

あなたのそのお金は、あなたが働き、培った、あなたの時間という名の『命』です。もしあなたの『命』を寄付したいと言われたら、私は覚悟して扱わなければならない。『決して無駄にはできない』