整体に行く日に限って、穴の空いたストッキングやドブくさいスニーカーを履いてしまう問題についての考察

ポメラの良いところ。起動が早い&ぱたんと折り畳めば電源オフできるところ。通勤電車で座れてから到着まで10分ちょっとでも、ためらいなく開くことができる。

7月9日(火)

 今日は仕事中眠くて眠くて仕方なくて、それなのに突然有給休暇を取った人の仕事を引き受けてしまったので、半分寝ながら色々とこなした。

 退勤時、靴を社内用の上履きからスニーカーに履き替えようと思ったら、ロッカーを開けた瞬間に異臭がただよってきた。異臭の発生源は自分のスニーカー。年季が入りまくったReebokのネイビー。
これは体臭ではない。なんというか、ドブくさい。そういえば先週末、雨の晩にこのスニーカーを履いていて、酔っぱらって水たまりに足をつっこんだのに、帰ってそのまま靴のケアせずに寝てしまったのだった。朝はいつも慌てているし五感がうまく働かないので、今朝はぜんぜん異変に気づかなかった。

 私は泣きたい気持ちになりながら、仕方なくドブくさいスニーカーに足を差し込んだ。今日はこれから、整体に行くのに最低だ。

 とはいえ整体に行く日に身なりがちゃんとしていないのは、実は今回が初めてではない。整体の施術を予約している火曜日、私は穴の空いたストッキングを履いたり、脇が見えそうなカットソーなのに脇の処理をしていなかったり、皺のできたボトムスを履いている確率が非常に高い。

 そしてこれはただうっかりしているようでいて、実はあえて「いい加減」な格好をしている、という可能性があるのだ(他人事みたいな言い方ですみません)。 

 最寄り駅の隣駅から徒歩三分のところにあるA整骨院で私を担当してくれるのはU先生だ。U先生は二十代前半の、笑顔がかわいい男の人だ。背は高いけれど顔つきもしゃべり方もあどけなくて、つい男の子、と呼びたくなってしまう。私は美容院でも整体でも基本的には女性を指名するのだが、5月にぎっくり腰を発症したときに行きつけの整体に駆け込んだら、ずっと担当してくれていた女性が辞めてしまっていて、そのときたまたま空いていたU先生にお願いするようになった。

 若い男の人に体を触られるのはどきどきする。U先生は、「華奢ですね」、と言いながら腰のあたりに触れたり、とてもささやかなことでナチュラルにこちらを「可愛い」と言ってきたりするから本当に緊張する。だから女の人に担当してほしいのに!
若い頃にちゃんと同世代男子と接してこなかったせいなのか、相手が「若い男の人」というだけで変に意識してしまうのを何とかしたい。職場にも十近く年の離れた男の子たちが出入りしているが、自分が三十歳を超えてから、飲み会などで彼らと一緒になると「可愛い!」とか、「やっぱり若い男子が注いでくれるお酒は美味しいわ」とか、うっかり思ったり言ったりしてしまいそうな自分に気づいて、それもめちゃくちゃ気持ち悪い。

 だって、そんなの、私が死ぬほど嫌悪している、若い女にしか価値がないと思っているおっさん達と完全に同類じゃん。むりむりむり。そんなの無理。

 二週間に一度、U先生に触れられるのを日々の生活の唯一の潤いみたいに思いたくない。腰痛で整体通っているのに、U先生に会えることに浮かれてヒールを履いたりしたくない。思わせぶりな発言をしてちょいエロ匂わせな会話に持っていったり、客(というか患者?)の立場を利用してそれとなく休日の過ごし方を聞いたり行きつけの飲み屋を探り出したりしたくない。思いがエスカレートしたら、その店で待ち伏せしたり退勤時間を見計らって整骨院の前をうろうろしたり(注・それはストーカーです)しないとも限らない。そんなのダメ絶対!!

 

 整体しか予定のない火曜日に真剣に服を選んだりしたら、U先生に会うことを楽しみにしている自分を認めることになってしまう。だから私は、整体に行く火曜日には、無意識のうちに自分の身なりをかまうことを放棄しているのだと思う。びっくりするくらい適当な格好で出勤し、そのまま化粧も直さず整体に向かう。それが「若い男の子意識してしまう問題」の根本的な解決になっていないのは百も承知なのだけれど。

 病は気から。ときめきは身なりから。(だから私は絶対にセックスしたらいけない相手とさし飲みするときには、中学時代から履いているぼろぼろのパンツを履いていく)

 でも足がドブくさいのはやっぱり最低というか嫌がらせ通り越してハラスメントだよ。今後は整体に行く火曜日にも最低限の身だしなみは整えるようにしたい。

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