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【御礼】2/22 大学・学生の力発揮推進事業の成果報告会の様子をお届けします

 こんにちは、グローカルセンターインターン生の高津遥(たかつ よう)です。
2023年2月22日(水)に「令和4年度 大学・学生の力発揮推進事業の成果報告会」が開催されました。本記事ではその様子をご紹介します。

大学・学生の力発揮推進事業とは?

 京都府では、18歳人口の減少に伴い、全国的に大学進学者数の減少が見込まれる中、今後も持続可能な「大学・学生のまち」を実現するため、多様な学生の受入れや、学生の府内定着に取り組む大学への支援など、大学や学生の力による未来の京都づくりを推進しています。
 その取り組みのひとつとして、大学が市町村や企業・団体と連携し、地域や企業等の課題解決に取り組む教育・研究活動等の事業を支援しています。それが、大学・学生の力発揮推進事業です。
 令和4年度は、地域連携 PBL(大学と市町村との連携事業)を13事業、企業連携PBL(大学と企業・団体との連携事業)を10事業を補助金により支援し、学生が地域や企業・団体をフィールドとして学んでいます。また、地域連携PBL として採択された13事業のうち3事業は、子育てに重点を置いた地域課題に取り組む「子育て重点枠」として採択されたものです。

PBL:Project Based Learning(課題解決型学習)の略称

▼詳しくは下記

 これまでも京都府内による同様の大学と地域・企業のプロジェクト(PBL)連携に関する報告会の取り組みが行われてきましたが、学生が直接その成果を報告する形での報告会の実施は今回が初めてです。
報告会会場には京都府内の市町村の方や企業、大学の教職員の方が大勢集まり、ウェビナーでもその様子が配信されました。

 報告会は京都府知事西脇 隆俊氏の開会挨拶、京都府文化スポーツ部長浅山 尚紀氏の趣旨の説明から始まりました。

▼府知事の開会挨拶の様子

京都府知事 西脇 隆俊氏の開会挨拶(一部抜粋)
 京都府は43の大学・短期大学、そして16万人の学生が学ぶ「大学・学生のまち」でございます。ただし、「学生のまち」と言いながら、一方で府内で学ばれている学生が卒業後に、府内に留まる率が2割を満たないということもあり、我々としてはできるかぎり府内で就職していただいて、京都府の未来を担う人材になってほしいという思いがあります。そうしたことから京都府地域共創大学連携会議をプラットフォームとして、大学・学生と連携することによって、地域・京都の活力づくりを進めてまいります。
 今回の成果報告会で、学生の企業や地域の課題解決、また子育て環境の向上に向けた取り組みについて、プレゼンテーション・ポスター展示によってご報告をいただき、これが今後の府内の学生の定着、また子育て環境の向上につながることを期待しています。

京都府文化スポーツ部長 浅山 尚紀(一部抜粋)
 京都府では、大学の「知」と学生の「力」を活かした未来の京都づくりを進めています。大学・学生の力発揮事業につきましては、大学が市町村や企業・団体と連携し、地域や企業の課題解決に取り組む教育、研究活動等を支援するもので、令和4年度は23の事業に対して、補助金の支援を行っています。
 本報告会を通じて、大学連携の意義、学生が地域で活動することの意義、そして取り組みの成果を広く共有し、今後大学連携の取り組みがさらに広がるきっかけになればと考えています。

第1部 学生による壇上報告

 第1部では、学生による壇上報告が行われました。壇上報告を行った大学やその取り組みは、以下です。

龍谷大学×京丹後市
京丹後市大宮町の「持続可能な地域づくり」プロジェクト
~三重・森本地区における「ゲンゴロウ郷の米」の取組~

京都産業大学×綾部市
京都産業大学むすびわざプロジェクトinあやべ
~「綾部こども探偵」を事例に~

京都文教大学×宇治市
「ともいきキャンパスin宇治」で育む地域人材の育成
【子育て重点枠】宇治ふぉと!子どもと笑顔のものがたり
~地域連携学生プロジェクト「商店街活性化隊しあわせ工房CanVas」の取組~

▼壇上報告の様子(ウェビナー画面より)


 すべての壇上報告に対して、京都府知事、連携した市の副市長や行政の担当者、さらに会場の参加者(希望者)からの講評が行われました。

▼府知事からの講評の様子

 「龍谷大学×京丹後市」の取り組みに対しては、京丹後市に住んでいる参加者からの講評で、「京丹後市に住んでいるが、このような活動をしているのを知らなかった」という声もあり、本報告会によって、学生のPBLの活動が社会的に認知されていく様子がうかがえました。
 さらに「綾部市×京都産業大学」の取り組みから、綾部市役所の職員になった学生もいることから、PBLの活動を通して学生自身が綾部市の魅力を感じ、府内定着に繋がっている事例が綾部市の行政の方の講評で紹介されていました。 
 「京都文教大学×宇治市」の商店街活性化の取り組みについては、「企業の視点に立つと、企業側も学生と同じように社会課題解決のために一緒に何かをしたいと考えていると思うので、地域連携のことを考える際に、地域の中にある企業や町工場の存在も、PBLの学びの1つとして一緒に考えてみてほしい」という講評がありました。

第2部 ポスターセッション

 第2部では、時間の都合上、第1部で壇上報告ができなかった学生の取り組み事例をポスターセッションの形で報告する機会を設けられました。合計18チームのポスターが会場に掲示され、小ホールでは学生と来場者の方同士の盛んな質疑応答や交流が生まれていました。

▼ポスターの例

第3部 パネルディスカッション

 第3部では、学生パネリスト、社会人パネリストが登壇し、学生の視点でPBLの活動について振り返る、社会人の視点でPBLの活動報告に対してコメントを行う、さらに、地域連携PBLに対する思いや考えを対話するパネルディスカッションが開催されました。各パネリストとモデレーターは以下の皆さんです。

学生パネリスト
龍谷大学:渡邉 宏樹さん(政策学部政策学科3回生)
     宮下 真美さん(政策学部政策学科3回生)
京都産業大学:長岡 侑飛さん(現代社会学部現代社会学科4回生)
京都文教大学:山中 怜奈さん(総合社会学部3回生)

社会人パネリスト
ワコール健康保険組合 常務理事:柏木 裕之 氏
福知山公立大学 地域経営学部 准教授:杉岡 秀紀 氏

モデレーター
京都産業大学法学部 教授
特定非営利活動法人グローカル人材開発センター
専務理事・事務局長:中谷 真憲 氏

 また、パネルディスカッションの様子はグラフィックレコーディングによって、可視化されながら進められました。以下に、パネルディスカッションの内容を一部抜粋しています。

▼パネルディスカッションの様子

Q1 PBL活動を通しての手応えや意義は?

宮下さん(龍谷大学 学生):地域の方とつながりができることは意義に感じる。コロナ禍でつながりを持ちづらいが、PBLでは、地域の方が温かく迎えてくださった。特に、地域の方と一緒に行った生物調査は、地域の人とコミュニケーションすることにも繋がり非常に楽しく、意義を感じた。

長岡さん(京都産業大学 学生):子どもと関わって、彼・彼女らの反応が一番やりがいに感じた。例えば、子どもたちと調査地をめぐって接する間に、「地元のここがすごいだよ」などの話をしてくれた。そこから子どもたちが地元が好きなんだなと伝わった。関わる子どもも、学生も、楽しめる事業だった。

山中さん(京都文教大学 学生):CanVas(山中さんのグループの活動)の存在意義としては、イベント企画などを通して、商店街の方や子どもたちと繋がること。CanVasの活動で嬉しかったことは、去年の6月に町庭ワークショップというのを行ったときに、子どもたちが「もう一回したい」という声が子どもたちから寄せられたことで、手応えを感じた瞬間でもあった。

Q2 発表を聞いて、社会人の目線でどうだったか?

柏木氏(社会人):発表を聞いて、PBLは相互にメリットがあることにゴールがあると思う。地域にどのようなインパクトがあったのかをあまり考えない場合が見られるが、実はそれはとても重要。地域PBLをするなら、相手(地域)にどのような効果をもたらすことができるのか考え、それを自らに問いかけていけば、よりよい「真のPBL」に繋がるのではないか。

▼社会人のコメントの様子

杉岡氏:(第1部で)西脇知事から1件ずつコメントをもらえているのは羨ましく感じた。京都府の事業なので、あらゆる地域の活動が立体化、可視化できたのではないか。また、(学生は)ここに登壇すること自体も有意味な学び、リフレクションになっているはず。頑張ったら社会がこうした場を用意してくれることを感じてくれたのではないか。また、地域連携の中で、大学の研究機関としての貢献も重要だろう

Q2どうやってでてきたアイデア?

※補足-「京都産業大学×綾部市」の取り組みでは、子どもが探偵になって地域の魅力を発見するというものでした。このアイデアの着眼点について。

長岡さん(学生):最初、綾部市の広報担当の方に、地域における情報発信について「どういうことに気を付けて活動しているのか」、「課題としてどんなものがあるのか」ということをインタビューした。そこで地元の埋もれてしまった魅力の再発見が必要とわかった。ただし、これまでの綾部市の活動では、学生という外からの視点で魅力を見つけてくれている。だから、これまでとは違う、新しい視点として子どもの視点を導入すればよいのではと着想し、事業を進めた。

中谷(モデレーター):これに対して柏木さんはどう思うか?

柏木氏(社会人):子どもはいままで僕らが持たない視点で地域を見ている。地域の子どもたちが知っていることを地域の魅力にどう変えていけるのかはおもしろく、伸びしろもある。例えば、他の地域から来た子ども向けに魅力をどう発信するのか、インバウンドで家族連れの子どもを対象にした観光事業にもつながる可能性がある。

Q3 どういう風に地域に入っていったのか、どういう風に地域に入っていくと上手くいくのか?自分たちが感じた地域への入り方のコツとは?

渡邉さん(学生):はじめ、自分が行ってなにができるのかなと緊張していたが、地域の人は優しく受け入れてくれた。地域の連携はお互いの歩み寄りが大事で、これが重視されていくべきだと思う。

長岡さん(学生):自分の大学は長い間、綾部で活動していたのですが、担当の教員の先生の顔がとても広く、地域のどこに行っても「あ、滋野先生」となる。広報担当の方も先生の知り合いでつないでいただいた。新しく地域連携を始めるにあたっては、自分たちが「どんなことをしたいか」を明確に持って連携する必要がある。学生側がやりたいことをしっかり伝えて、連携を進めていくことが大事だと思った。

柏木氏(社会人):やりたいことを明確にする前に、相手がしてほしいことは何だろうということを明確にすることでも信頼関係は強くなる。やはり、自治体や地域に入るときは、「地域に入ると自分は何ができるかのか」、「地域は何が望んでいるか」を考えるべき、そして、そのとき、自分が持っているもので何ができるのかを考えること、相手の困っていることとそれを照らし合わせて、相手の立場で考えるスタンスは大切なのかなと思う。
 また、企業でも、エンゲージメントを高めようとする機運が高まっている(社員にとっては会社に貢献する力であり、会社にとっては社員を育てていくということである。)。双方の努力によって初めてエンゲージメントが生まれるので、地域と学生の間でもエンゲージメントも意識して、お互い貢献できるスキルを相互に保持する、これが地域PBLの成功のカギだと思う。

山中さん(学生):私は地域の入り方のコツとして、とりあえず笑顔を絶やさないことが大切かなとう。1回生の時は、コロナ禍でなかなか活動できなかった。活動当初はかなり緊張していたが、先輩方が笑顔で地域の方と話しているのを見て、すごくかっこよく見えた。

Q4 PBLの中で専門性をどう生かしていくのか?どういうことを考えていますか?

杉岡氏(社会人):自分が学生の時に地域に入った際に、かなり文句を言われた経験がある。地域と大学の関係性はそれまでの歴史で決まっている部分もある。だから、教員がどれだけ汗をかいて、地域と繋がっているのかも大事だろう。学生が地域に行って急に関係性を作るのは難しい。教員がまず、ひとりの人間として、自分の専門性を活かして、信頼関係を作る、こうした大人の役割がまずあって学生が活動できているということを皆さんに知っていてほしい。
 専門性ももちろん大事だが、まずは教員、職員、大学が地域と関係性を作ることを行わないと、「○○先生が消えたら関係性が途切れる」ということになりかねない。

Q5 PBLを通して、学生の学びもあるが、大人が学ぶこともある。大人はPBLから何を学べるのか?

柏木氏(社会人):夢に向けて頑張る人と、それを伴走する人がいるという、あるプロジェクトに関わったことがある。そこで、挑戦する人以上に、伴走する人が日に日に成長していくということを知った。このプロジェクトでは、挑戦する人は学生で、メンターは社会人であった。誰かの挑戦を応援することは、大人も成長することにも繋がる。そうした大人が成長する姿を見ることも学生にとっての大きな学びにつながると思う。

 参加した学生や、そこに関わる社会人の言葉から、地域PBLの難しさや、奥深さ、意義が感じられる時間であったと思います。

▼グラフィックレコーディングによる対話の可視化

ふりかえりをするとき、議論・気づきを持ち帰って共有していただくときに使っていただければと思います。

記事の終わりに

 第1部-第3部を終えた後、学生と参加者による交流会が行われ、報告会は終了しました。

 今回の報告会は京都府の事業名の通り「大学・学生の力」が地域や企業との連携によって多くの方に伝わり、エネルギーや今後の活動に向けた意欲が引き出されるような場になっていたのではないかと思います。

 壇上で発表した学生の皆さん、ポスター発表を行った学生の皆さん、本当にお疲れ様でした。引き続き皆さんのご活躍を楽しみに応援しています。

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