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シューマンのホルン「アダージョとアレグロ」(1849年)

ホルン奏者なら必ず練習する曲の一つだ。リサイタルピースとしても程よい長さがあり、よく演奏される。俺も何度かステージで演奏したことがある。

ホルンパートもいいのだが、ピアノパートが素晴らしい。よく伴奏と言う言い方をするが、この曲のようにピアノとホルンのために書かれた曲のピアノは伴奏ではない。

始めのアダージョ部分の息の長いフレーズ、ホルンの最高音域(実音の高いF)が出てきてそこだけで吹けないアマチュアが多いだろう。プロは吹ける。得意ではない人もいるだろうが、正しく練習を重ねていれば困難ではない。俺も大学の実技試験でも吹いた。

アレグロに入ってからの速いパッセージもアマチュアには吹けないだろう。プロになる者はこれができなくては話にならない。タンギングと安定したアンブシュアが鍛えられていなければ決して演奏できない。ホルンの高音域や速いパッセージはほとんど口輪筋の鍛え方にかかっている。

この曲の特徴のひとつにホルンパートが、ずっと吹きっぱなし、というのがある。高音域で旋律を吹き、すぐに低音域で音を伸ばす。筋肉のスタミナがどうしても必要となる。

アマチュアの中にも上手い人はたくさんいると思う。この曲をステージで演奏できるならプロと同等の実力があると言っていい。誇ってください。

もう一つ問題がある。身の回りに上手いピアニストがいないとこの曲が演奏できないことだ。

大学の頃は何も考えずに周りに弾いてくれる仲間がいた。特にピアノ科が優秀な大学にいたので当たり前のことだ、と思っていたが、卒業してしまうとピアニストに苦労することになる。友達に頼めるうちはいいが、お互い忙しくなってくるとギャラを払って弾いてもらわなくてはならない。それがプロというものだ。

負けるものか、と歯を食いしばってさらっていたあの頃が懐かしい。


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