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佐藤 哲太 代表取締役、未来の製造現場を増やす

国内GDPの2割を占める製造業を、DXの力を取り込んだ「未来の現場」へ成長させる

CEO PROFILE
佐藤 哲太 (さとう てった)氏
1991年生まれ、東京都 武蔵野市出身。2023年9月 株式会社ミライのゲンバを創業。

経歴
2014年 東京理科大学 卒業
2014年 日本製鉄株式会社 入社
2019年 ソフトバンク株式会社
2021年 同社 社内ベンチャー制度にてアノテーション事業を立ち上げ。
2023年 株式会社ミライのゲンバ 創業

ー これまでのご経歴から起業に至るまでの背景について教えていただけますでしょうか。

新卒では、ダイナミックな製造現場とエンジニアの技術力の高さに惹かれ、日本製鉄社という鉄鋼会社に入社しました。当時は一生この会社で働いて活躍するぞ!、というような意気込みでしたので、想定していたキャリアの中に起業は全くありませんでした。

日本製鉄社では、現場で作業される作業者の方と一緒に、現場の改善を技術的に支援する業務を行っていました。仕事で成果が出ると、現場の方に感謝をいただき、コストメリットも出るのでとてもやりがいを感じていました。一方で、会社の外に目を向けると、世の中はAIやインターネットを活用した破壊的イノベーションが、あらゆる場面で起きていて、製造現場の積み上げ型の改善ではなく、イノベーションを起こしたいと思うようになりました。その手段としてソフトウェアが一番主流であると考え、そういった点を学ぶためにソフトバンク社への転職を決断いたしました。
ソフトバンク社に入社した後に社内ベンチャー制度に出会いました。起業を強く意識するというよりかは、ただ「面白そう」とか「事業づくりを自分でやってみたい」という軽い気持ちで応募しました。結果として、追い風となる市場環境、優秀で頼りになるチームメンバーやメンターに恵まれて事業はグングンと成長しました。またこの過程で、ゼロからお客様にインタビューを行い、自分達で仮説を立てて検証したりする楽しさや、同じ志や価値観を持つ仲間が増えていくことの尊さを実感することになりました。この0→1の魅力を体験したことがあって、今日のキャリアに至ったのかなと思います。

ー 社内起業と、今こうして会社を立ち上げるという点で、異なる部分はありますか?

ゼロからプロダクト、組織、運用を築いていくという意味では共通することが多いです。ソフトバンクでの事業立ち上げで、もしも過去に戻れるならこうしたかった!という学びを、今回の起業では始めから考慮することが出来ています。まるでレベルはそのままでゲームを始めからやり直せている感覚があります。
一方で、会社から無意識的に得られていた恩恵の大きさも感じます。
例えばソフトバンクでの活動では、お客様やステークホルダーは既に会社を知っていたり、会社を信頼しているところからやり取りできます。これは営業、アライアンス、開発といったあらゆる取り組みを円滑にします。今まで自分の能力と思っていたほとんどは会社の力なのだと痛感しました。
逆に言えば、本当に自分達でモノを作っているという実感もすごく強く感じられます。お客様にサービスを使ってもらい喜んでいただいたり、ビジョンを一緒に信じてくれるメンバーとの出会いがあると、起業して良かったな。という感情が心からこみ上げてきます。

ー MVVやパーパスはどのように定めていらっしゃいますか?

パーパスは「未来の現場を増やす」です。これには、二つ意味があります。
一つ目は、未来で活躍する現場を増やすという意味です。製造業って国内GDPの20%を占めるくらい経済を作っていて、9人に1人は製造業で働いていると言われているくらい、多くの雇用も生み出している基幹産業なんです。一方でデジタル化がかなり遅れていて、他国と比べると競争力もどんどん弱まっているという背景があります。工場の数も年々減っているような状況です。こういった状況を変えていきたいと思っています。

二つ目の意味は、「未来的な現場を増やす」です。現場では紙とペンとFAXという昭和感に溢れています。ここに、AIやデータ活用を導入し、令和の要素を取り入れた次世代の工場を増やしたいと考えています。

バリューは、三つあります。
まずは「美しい心」です。製造業のDXは、長らくいろんな人たちがチャレンジしているものの、中々うまくいっていません。製造業の現場の人、管理者、経営者、私たち自身、全てのステークホルダーが本気で一丸に現場を変えようとしないとDXはうまくいかないので、そういった一体感を起こせる人材になろう。人と信頼し合い、巻き込める、美しい心を持った人材になろうという意味をこめています。

次に、「ゼロ距離連携」です。IT業界だと特に打ち合わせから業務連携までZOOMで完結したりすることもありますよね。私たちの場合、ちゃんと自分達でお客様の現場に足を運んで、お客様と握手をして、お客様を巻き込んで行くことが大事なのです。ですから、物理的に距離を縮めて工場を変えていこう、という思いに共感していただける人材を集めたいと思っています。

最後が、「かんたん化」です。製造業って国内に20万拠点以上あります。作っている物の内容も工程も量も違うので、それに応じた現場のオペレーションが20万通りあるということになります。その20万通りのオペレーションに、それぞれ機能を追加していくと、製造業DXや、未来の現場を増やすということが実現・完遂できないので、抽象化を適切に行うことで共通点を探し、必要な機能を引き算して見出していくことに挑戦しています。

ー メンバーにはどんな人がいますか?

今のメンバーは、ほとんどがエンジニアですけれども、エンジニアであっても実際に現場である町工場に行ってインタビューしたり、お客様が操作しているところを自分の目で見ながら、どういうところで迷っているのかだったり、現場の一挙手一投足に対して強い関心を持っています。
かんたん化もかなり取り入れられてますね。色んな機能を実装するのは簡単なんですけども、どちらかというと私たちは引き算の開発に拘っています。いろんな人の多種多様な要望をできるだけ一つの機能で実現できないかというのを考えています。
例えば、簡単に使える電子帳票の機能として、記入枠に、作業者の名前を入れたいという要望があった時、普通のシステム開発だと作業者の名前のデータベースを作って、入力端末から作業者の名前のデータベースを引っ張り、記入者に該当する名前を選択するという機能を作ろうとするんです。そして、そのデータベースを、管理画面から編集できたり更新できたり、編集権限をつけたり、どんどん機能が増えていってしまうと思います。私たちの場合、書いてる作業者はiPadでログインしているはずなので、ログインIDから誰だかわかるよねとか、現場が手書きで記入しているので、筆跡から誰かわかるんじゃないかとかを考えています。
できるだけたくさんの機能を作るのではなく、AIを使ってお客様が使っている中で生まれるデータを活用し、少ない機能で最大の効果を実現するということに拘っています。

ー 今後の目標を教えてください。

今後2年くらいかけて、実際に国内で自分達のビジョンが実現できている状態、つまり未来の現場がどんどん増えていく状態を作りたいです。2年目以降からは、海外の事例も作りたいと思っています。実はこの課題は日本特有の課題ではなく、東南アジアや、中国、欧州でも類似の課題があることが確認できています。
一番製造業の種類が多い日本でプロダクトをしっかり磨いて、海外の言語に対応させ、海外展開を狙っていきたいと思っています。


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