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勇気と誇りを胸に。

4-0。
ずっと、こんな試合が見たかった。

J3リーグ第24節・YS横浜戦は、大量4得点に加えてクリーンシートを達成する最高のスコアになった。

MF松橋優安の得意の位置からの凄まじい決定力を誇るゴールを皮切りに、
プレスから相手のパスミスを誘い再び松橋のゴール。
後半も勢い止まらず、DF石田崚真のニアを撃ち抜く強烈なゴール、
そして、初出場MF伊藤恵亮のボールをかっさらってからの鮮やかな終幕弾。

これまで溜め込んできた鬱憤が綺麗に霧散する、とても気持ちいい試合展開だった。

新戦力の台頭、既存の選手の踏ん張り、それが新たな熱を呼び込む、気持ちのこもった90分だった。


得点は最高の良薬となる。
滑り出しは相手方に押される局面も多々見られたが、得点を決めるごとに相模原の選手が勢いづいていったように見えた。

次第に強くなるプレスの圧、
集中した一対一の勝負、
そして、スイッチが入った時に皆が連動してボールを動かしていくあの感覚。

ピッチにいる11人が、まるで1つの意志を持った生命体になったかのように、躍動感が生まれていた。

面白いように次々に繋がるパス、局面を打開していくパワフルな個の技、そしてピッチを駆け回る自信に満ち溢れた姿。

どれも、ずっと見たかった光景だった。
これが春に夢見ていた相模原なのだと気付いて、試合中に涙が流れた。

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4得点のゴールラッシュの中、一際光を放ったのはシーズン後半からFW起用されている中原彰吾だった。

中原は素人目に見ても足元の技術と身体の出力のバランスが突出している。
J1クラブに長く在籍していたのがよく分かる、技術の高さとセンスの良さを感じさせるプレーヤーだと思う。
個人的にも、僕と同学年なこともあり、今年相模原で注目して見ている選手の1人でもある。

シーズン序盤はボランチで出場することの多い中原だったが、夏場からはFWとして出場する機会が増えた。FW中原彰吾のおかげで、前線の攻撃にバリエーションが生まれたような感覚がある。

しかし、FW中原彰吾の魅力はそれだけではなかった。
彼はとにかくよく走る。
攻撃でも守備でも、90分間全力を尽くしているのが本当によく伝わってくる。

アウェイ宮崎戦では、真夏のデーゲームの暑さで、試合後に顔を真っ赤にしながら挨拶していたのがとても印象的だった。


今節の試合終盤、それまで走りっぱなしだった中原がアウェイゴール裏のすぐそばで倒れ込んだ。
足がつっていた。

あれだけ上手い選手が、死にものぐるいでピッチを駆け回っている。時にボールを追いかけ、時に相手を翻弄し、とてもよくハードワークしていた。
何をどう伝えればいいかは分からないが、ゴール裏から見ていて、今すぐに駆け出して彼に声をかけたい気持ちで溢れた。

けれど、中原は自分でつった足を伸ばし、また気持ちを整えてピッチへ走って戻っていった。

アウェイ側のゴール裏・メインスタンドに詰めかけた相模原サポーターから、再び戦場へ走って行く中原に向けて大きな拍手が送られた。
サポーターは間違いなく、選手の本気でぶつかる姿を見て、気持ちを感じ取っている。

上手さが際立つ選手だが、常に自分を出し切ろうとするあの姿勢に、彼の中に宿る誇りを感じずにはいられなかった。


チームの結果のために、一人一人が自分の持てる力を存分に奮い出し、その一つ一つの力を融合させて更に大きな推進力へと変えていく、あの雰囲気を僕は見たい。


勿論、勝つためには気持ちや勢いだけでは足りない。
戦術的な反省や個々の技術の研鑽や周囲との擦り合わせは、常にフラットに行われる必要がある。

けれど、それらが冷静に仕立てあげられていても、心の闘争無くして勝利はない。
ボールへチャレンジし続ける中原を見て、それを感じずにはいられなかった。

これは、実際にやれるかやれないかの問題ではない。
「やりきる」勇気と「やれない訳がない」という誇りが、胸にあるかどうか、そういう話なんだと思う。


僕はまだまだこのチームと良い思い出をたくさん作りたい。
もっともっと、彼らならやれるんだと信じたい。

他でもない、2022シーズンのSC相模原の選手達が、僕は大好きだから。


過去は振り返って反省しなければいけないし、先も見据える必要がある。
けれど、一歩を踏み出し、チャレンジする権利があるのは、今この時だけ。

連勝へ。
自分たち自身のために、限られた時間のために、
次節もまた、証明し続けよう。

最高の"今この時"を積み重ねよう。

胸に、誇りと勇気を持って、また戦おう。


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