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すぐにかけだす緩急

2023年3月3日。日中は仕事に勤しむ。
最近メルカリで家の品々をリリースしている。そのせいかメルカリマインドが仕事に侵食している。
『迅速な対応ありがとうございます。』
『受け取り次第、確認お願いします。』
などの丁寧な定型文を多用している。迅速なんてことばは10年前はヤフオクしか使わないと思っていたが、そのうちメルカリに流れていくし、果てには口癖になっているかもしれない。あとキングファイルを郵送する機会があったが、一昔前より梱包のスピードは上がっていた。

仕事が終わり、高円寺に向かう。東西線を使うと中野から総武線に切り替わり、スムーズに行けることを知る。なんだか近道ができた気がしてうれしい。

到着して、腹ごしらえに「大江カレー」に向かう。初めて訪れた。
ちょっと脇道はいったバーの居抜きらしいお店に海の写真が飾られていて、雑多な感じがなんだか落ち着いた。
鶏・魚・野菜の3種から選べて、具材は時期によって変わるらしい。いまやっている魚は「しじみ、えび、ホタルイカ」という何ともシーフードでそそったので、鶏と二種盛りを頼んだ。

とてもおいしかった。2種だと差異がありなおさら気づかされたが、食材のだしがめちゃ効いていた。スープ寄りな質感も奏している。だし(またはうま味)の概念は日本特有のものかと思ったが、スパイスカレーもしっかりトマトを使っているので、なんやかんや理にかなっているのだろう。
つつましきくらしをする上で、うま味はだいじな要素と近年わたしは見受けている。ダイレクトに舌をうまいと思わせる刺激よりも、奥に潜む複雑ななにかを味わえることはかっこいい。

(参考)家庭科を思い出させるサイト。初めて聞いた非営利法人だが情報量がものすごい。


腹を充たしたら、目的地の蟹ブックスへ。
今日は、店主の花田菜々子さんと古賀及子さんのトークイベントがあり訪れた。イベント直前まではしっかり本屋していたが、可動式の本棚がモーセのようにかき分けられ、20人ほどが座れるスペースが姿をあらわした。会計スペースにおふたりが座りトークがすっとはじまった。あまりのシームレスさはトリッキーなスタンド攻撃をうけているかのようだった。


好きな作品を書いているおふたりが、日記を深堀っていくトークがとてもたのしかった。
「古賀さんの日記は俳句短歌に近い」という花田さんの見立てにうなずきまくった。その時は、「光るフレーズを中心に組み立てる」ところにフォーカスがあたっていたが、自分は「緩急」にあるとも思った。ひらがなと漢字のバランス感であったり、日々の出来事を『~を食べてうまい』といった素直にスパッとあらわしているところが、リズムを生んでいるのかな~と思った。
そう思うと自分の一文はめちゃ長いな。
古賀さんの話し方も緩急があり、褒め・褒められに対するスピード感は侍のようにはやく、時間をかけて言葉を考える姿もすてきであった。そう思うと著作「ちょっと踊ったりすぐにかけだす」というタイトルはぴったりだなと思った。

サインもいただいてほくほくした。肌さわりのよいカバー、そして予想よりかなり分厚くてうれしい。くどうれいんさんが雑誌で紹介していたのを見て知り、ZINEを取り寄せたり、直近のnoteを見てたぐらいなので、いきなり!このボリュームはごちそうだ。少しずつかみしめていきたい。

日記は日常に見逃しがちな幸せを思い出す装置としてわたしのなかで活躍している。そういう意味では幸せはうま味である。そしてシームレスな人生において立ち止まって書き留めていくことは、今の立ち位置を確かめて、明日また踊ったり駆けだしたりするための準備なのかもしれない。

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