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指輪物語

2023年9月2日 入籍した。
その日は土曜日で、夜間休日窓口のおじちゃんに書類を渡した。
ささやかなおめでとうブースもあったので、記念撮影をお願いすると「機械は得意じゃないのですが・・・」と前置きしたうえでバッチリ一発で押さえてくれた。機械は得意ではないけど、機会はめちゃくちゃ踏んでいるタイプだ。そしてあっけなく書類も受理された。

そしてしばらくたった9月中旬に、結婚指輪を求めてふたりで岐阜に赴いた。

実は結婚指輪に対して少し抵抗があった。それは、人生の大事なタイミングに、購入というプロセスをぶちこまれているからかもしれない。その思いがあったから、気に入った人にオーダーした。

それが森、道、市場で出会ったuno daisakuさんだった。
装飾品の美を気づかせてくれた人である。

数か月前からメールでやりとりしたりサンプルを作ったりしてもらっていた。そして間もなく完成というタイミングで、アトリエを訪れた。
せっかくならばと、指輪の内側に文字を入れる刻印作業ができないか事前にお願いして、快諾いただいたのだった。前日入りしておいしいものをたくさん食べた。

文字を入れたい対象に向かって、先端がアルファベットになっている金属の棒をハンマーで叩いていくと、凹みが出て、文字になる。一文字一文字打ち込んでいって、文章を作っていく。手法としては活版印刷と同じだった。向きを間違えると文字がひっくり返るし、棒の先の形状は反転しているので、普段使わない脳の部位をはたらかせて、気をつけて打ち付けた。

最初は練習で平べったい板に打ち付けていって、慣れてきたら、本番の幅2mmの棒状の素材に打ち込んでいく。その時知ったのだけど、(今回の指輪の場合は)2本の棒を丸くしてくっつけることで輪っかになり指輪になるようだ。※指輪の種類によって変わるかもしれない。

2種類の素材(金と銀)それぞれ硬さが異なり、きれいに文字を打ち込むには力加減を調整する必要があった。あらかじめ同じ素材で練習はしていたものの、本番勝負のメンタルの中、ベストヒットを叩き込むのは難しかった。無事、右肩上がりの刻印が完成する。めでたい。

合間にいろいろはなした。unoさんと年齢がけっこう近く、30代の悩みをあれこれとはなした。解決したわけではないがもやもやが少しはれる。


刻印が完成したらunoさんに預けて、完成までつっぱしってくれた。
合間に、歩ける距離の少し離れたところに昼飯にいったりお茶したりした。

数時間後、アトリエにもどるとさっきまで2本の棒だったのが、見事に丸くなってくっついて、輪になって踊ろうだった。
そして試着をした。事前にサイズを測っていたけど謎のどきどきがあったものの、ばっちりシンデレラフィットだった。安堵した。
こうしてひとつ形になると、結婚の実感がわいてきた。

思い出とともに刻印を自分たちで込めた指輪はより記念すべきものとなった。まだ指輪自体に慣れておらずつけ忘れてしまうことがあるけど、見るだけでうれしくなるし、日常によく溶け込んでいる。


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