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紺碧の日本海に浮かぶ楽園・島根県西ノ島。郷土の味を守ろうと若手シェフが奮闘!【地域活性化起業人報告 #06】

ぐるなびは、食文化振興や観光振興などによる地域活性化に貢献すべく、2021年より総務省による「企業人材派遣制度」を活用し、当社社員を“地域活性化起業人”として全国各地に派遣。地方自治体との連携のもと、ぐるなびの持つ事業インフラやノウハウを活かした地域独自の魅力・価値の向上に取り組んでいます。
今回は、島根県西ノ島町にて業務に従事する藤田寛子より、活動報告をいたします。

はじめに

みなさん初めまして。島根県隠岐郡西ノ島町で「地域活性化起業人」として活動している藤田寛子です。

私はぐるなびに入社後、4年間広島営業所に勤務しておりました。営業職という仕事を通じて様々な経験を積みながら、「いつかは出身地である島根に戻り、地元のためになる仕事がしたい!」との想いを抱いていたことから、西ノ島への赴任についての社内公募を知った際、真っ先に手を挙げました。そして、2022年6月より地元島根に貢献するという念願を叶えるべく、隠岐諸島の西ノ島にて業務に取り組んでいます。

今回は「地域活性化起業人」の活動の一環として企画・実施しました「西ノ島町シェフツアー」、そして「新メニュー試作会」の様子をご紹介します。

西ノ島町の課題

西ノ島町へ赴任後、「これから自分に何ができるのか?!」を探るため、まずは町民や役場の方々、町の事業者の皆さんからお話を伺いました。

西ノ島の主な産業は漁業ですが、実際現地に赴き、非常に大きな驚きに出会いました。それは、西ノ島町内ではいわゆる生産者から卸、小売店、そして消費者へとつながる流通がなされていないということでした。

理由を伺うと、古くから西ノ島町では「魚は買うものではなく、貰うもの」という意識が根付いており、町内で魚を購入する習慣がほとんどないとのことでした。

近年は漁獲高の減少、魚価の低迷など多くの課題に直面していることを考えると、地元住民の強い結びつきや信頼関係を尊重しつつも、西ノ島町の漁業を活性化させるためには、「魚を貰うのではなく、購入し消費する」という地元の皆さんの意識転換が必要ではないかと考えました。

加えて、年々人口が減少する中、古くから人から人へ伝えられてきた西ノ島町の郷土食をいかに継承するかも大きな課題であると捉えました。

そこで、漁業の活性化や郷土食の継承など、西ノ島町ならではの食文化を守り後世に伝えていくことこそが、私が西ノ島町のためにできることなのではと考えたのです。

西ノ島町の食文化継承

西ノ島町では、移住促進のための町による施策が功を奏し、若い世代の「Ⅰターン者」が増えています。こうした新たに西ノ島の伝統文化に触れる方々に、町の郷土食を身近に感じてもらうことを目指すにあたり、昔から伝わる郷土食だけでなく、若い世代も楽しんでもらえるこれまでにないメニューを考案することが効果的ではないかと狙いを定めました。

地元の方にとって身近な食材を使いつつも新たな魅力を引き出すことができれば、地元での流通を促し、消費の拡大につながる。ひいては郷土食を次世代に継承することの大切さを西ノ島の町民の皆さんと一緒に考える良い機会になると考えたわけです。

そこで、町で獲れる「海産物」と古くから地元で親しまれてきた「なめみそ」という郷土食に欠かせない2つの食材に着目。料理の専門家にメニューづくりを依頼することにしました。

当社が主催を務める35歳以下の若手料理人を対象とした日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35 (RYORININ’s EMERGING DREAM U-35) 」で優秀な成績をおさめた料理人が所属する「CLUB RED(※)」のシェフを招待し、西ノ島町の食文化を知っていただくためのシェフツアーを2023年3月5日(日)~6日(月)に開催する運びとなりました。

※CLUB REDとは:https://www.redu35.jp/clubred/

西ノ島に降り立った3名の若手料理人が新たな郷土食づくりに挑戦!

西ノ島町×CLUB REDシェフツアーを実施

今回のシェフツアーにご参加いただいたのは(写真右から)中国料理の福嶋 拓シェフ、イタリア料理の梅津 信吾シェフ、西洋料理の桂 有紀乃シェフの3名です。

西ノ島町が属する隠岐諸島は、地質・地形から地球の過去を知り、未来を考えて活動する場所「ジオパーク」に認定されており、西ノ島町における人気スポットには「摩天崖」や「通天橋」、「赤尾展望所」が挙げられます。

馬や牛が放牧されており、大自然の中でのびのびと過ごす動物の姿を見ることができます。

西ノ島町の魅力の一つである素晴らしい景観地を視察、写真は摩天崖
西ノ島町食生活改善推進協議会の皆さんに郷土食についてレクチャーしてもらいました。

ツアー初日は、町内で食に関する活動をされている西ノ島町食生活改善推進協議会の皆さんに、西ノ島町の郷土食である「なめみそ」について教えていただきました。万能調味料「なめみそ」は、米麴、みりん、薄口醤油、砂糖などから作られており、各家庭によりレシピが多少異なることから、それぞれの家で愛される多様な「なめみそ」が存在するのが特徴です。

今回は、「なめみそ」を作る工程を見学すると共に試食をしました。シェフの皆さんからは、「“なめみそ”を知らない人に知ってもらうためには、乾燥させ“グラノーラ”のような形にして提供すれば受け入れ易いのでは」「身近な家庭料理での活用方法として、肉の替わりにコロッケに入れてはどうか」など多くの意見が上がり、協議会の皆さんも「新たな発見だわ!」と喜ばれていました。

岩ガキを吊るしているイカダ

2日目には、町内の漁協や水産加工会社、養殖岩ガキの生産者などを訪れ、西ノ島町の漁業について学びました。

初めて岩ガキの養殖場を見たシェフ達は「非常に貴重な経験をさせていたただきました。生産者の方の生の声を聞いたり、現場を実際に見ることで、お店のお客様により説得力のある提供の仕方ができます」と話していました。
水産現場の視察後は、西ノ島町食生活改善推進協議会の皆さんと共に西ノ島町の海産物と「なめみそ」の活用法に関する協議を行いました。

今回、協議の対象とした海産物は「サザエの肝」です。西ノ島町の海産物を代表するサザエは、家庭で食べられる際、肝の部分は廃棄されており、また町内のお土産品「サザエ缶詰」に関しても製造過程で肝はすべて廃棄されています。こうしたことから、フードロス削減のために「肝」も何かに使えないかだろうかという観点で協議されました。

「『サザエの肝』を『なめみそ』に漬け込み珍味にするのはどうか」、「『サザエの肝』をペースト状にして『肝チョコ』を作ったらどうか」など、3名のシェフからそれぞれの知見を活かしたアイディアが多数生まれました。

参考:「西ノ島町×CLUB REDシェフツアー」https://www.redu35.jp/clubred/labo/9386/ 

新メニュー開発及び試作会

2023年8月30日に開催した「西ノ島町新メニュー試作会」の参加者

年が明けて2023年。
次の展開として、前年のシェフツアーで協議した「なめみそ」と「サザエの肝」を用いた新たなメニューをCLUB REDのシェフ3名に開発いただき、郷土食の継承につなげたいとの考えのもと、レシピを披露・共有する「新メニュー試作会」を2023年8月30日(水)、31日(木)に開催しました。

試作会には、シェフツアーにご参加いただいた西ノ島町食生活改善推進協議会の皆さんにご参加いただき、シェフからレシピについて直接レクチャーを受けてもらい、11月3日(金)に町内で行われるイベント「ギョギョギョ魚フェスタ」で、この「新メニュー」を製造・提供することを次なる目標に掲げました。

★1品目:なめみそのとろけるプリン(桂 有紀乃シェフ)

★2品目:西ノ島特製なめみそ焼売(福嶋 拓シェフ)

★3品目:なめみそライスコロッケ(梅津 信吾シェフ)

どのレシピも調理工程はとても簡単ながら味は本格的。大変美味しかったです!

今回の試作会は、時間の都合上3品全て「なめみそ」を用いた料理となりましたが、「サザエの肝」を使ったメニューももちろん開発いただきました!

試作会参加者の皆さんからは「なめみその塩味がプリンによく合っている!」「焼売は肉がゴロゴロしていてジューシー!冷めてもなめみその味がしっかり出てより美味しい!」「ライスコロッケには驚き!お米を揚げるという発想がなかった!冷凍ご飯で簡単に作れるのが嬉しい!」など、嬉しい感想をたくさんいただきました。

なお、当初レシピをお見せした際には、「私たちに作れるかしら?」「ギョギョギョ魚フェスタで無事提供できるかしら?」とかなり不安そうであった協議会の皆さんでしたが、試作会終了後には「実際に作り方を見て、シェフからいろいろなアドバイスをもらったら、気持ちが楽になりました!」との安堵の声が聞かれました。

焼売の包み方を福嶋シェフから教わる協議会の皆さん

CLUB REDのシェフ3名に考案いただいたメニューが「ギョギョギョ魚フェスタ」の来場者の間で「美味しい!」と評判になり、各家庭にも今回のレシピが広がるとこで、新たな郷土の味として食文化継承につながればと願っています。

令和6年度に向けた動き

食文化の継承と並んで重要な西ノ島町の課題にお土産品開発があります。

西ノ島のお土産の多くは海産物であることから冷凍や冷蔵のものが大半で、手軽に持ち運べて配布しやすい、常温で個包装のお土産が殆どありません。そこで、今回ご紹介した西ノ島の新郷土メニューの一部のお土産品開発の検討を進めています。

このように、令和5年度「町民への食文化継承」という目的から、令和6年度「西ノ島町の食を外へ発信していくこと」へと目的をシフトし、事業を進めていく予定です。今回のメニューがお土産品になって店頭に並んでいる光景を見るため引き続き商品開発を進めていきますので、続報を楽しみにしてください!

●過去の【地域活性化起業人報告】はこちらから


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