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異素材の漆kozara12誕生

neru design worksとのコラボレーション第二弾として、kozara12の漆塗りver.を発表し、リリース前からありがたいことに大きな反響をいただいています。

ご縁

neru design works代表の重弘さん(ネルさん)とのご縁は、昨年9月に阪急うめだ本店GREEN AGEで行われたneru design works pop upの際に阪急担当者さんを通じてご紹介いただいたのがきっかけ。

カネイ中川仏壇店頭にて

その際コラボの作品第一弾である、ネルさんの代表作Ono kezuru,Nata kezuru,Hammer 鉄槌 を漆塗りさせていただいたのが、初のお披露目でした。

オノケズル漆

でも実は、ネルさんと面識を持たせてもらったのは遡ること4年ほど前。
GNUを立ち上げた当初でまだ作品を持たず、キャンパーさんのオピネルにひたすら漆を塗っていた頃、発信を通じて漆に興味を持ってくださり、漆について質問などをいただいたことがありました。

その頃、自分自身無料プロジェクトを進めて間もないところだったことや、まだヌーの作品もない頃だったこともあり、
「またいつか時期が来たらやろう。」と、ネルさんの方から暖かい言葉をいただいたのがとても印象的でした。

それから4年の時を経て、昨年阪急さんがたまたま繋いげていただいたご縁で実現したのが第一弾の作品。そんな背景もあって個人的にはとても感慨深い作品の一つです。

次も、「リリースするなら阪急さんで。」という想いもあって、なんとかpop upに間に合わせることができました。

kozara12

neru  design works 琺瑯のkozara12

そもそもkozara12といえば、コレクターも多くネルさんの人気作のひとつ。
kozaraリリース当初「いつかはシェラカップと同様、kozara12がキャンプシーンに当たり前に使われている日が来るのが夢。」と語られていましたが、今では多くのキャンパーさんがキャンプシーンや食卓を飾っておられる作品ですね。

今回のkozara12は、漆塗りなのでもちろん材質は木製。
通常のkozaraは琺瑯(ほうろう)なこともあり、これを木で制作することにかなり時間を費やしました。

轆轤師は写真のように材料を回しながら手で挽いていきます。

琺瑯は、金属の表面にガラス質の釉薬を焼き付けて作る加工技術です。ネルさんのこだわりで、厚めの琺瑯を使用しているとはいっても、厚さは1mmほど。木でつくるとなると薄さやバランスが難しいのは否めません。

いざ図面を挽いてわかったのは、底は2〜3mmで逃げられても、側面は1mmほどにしないと、小皿同士が重ならないということ。

まだまだ修正前の図面なので底の厚さはこれの半分ほどに。

少し曲線が違うだけで、本来のkozara12のフォルムを崩してしまいかねないので、その辺りは特に慎重になりました。

通常木のお皿で一般的な厚さは、"最低でも4mm"と言われています。(4mmでもかなり薄い。)
この時点でなかなか無謀な挑戦だとはわかっていましたが、だからこそ実現できたら面白い...と思うとワクワクが原動力となりました。

欅 keyaki

いくつか材質は考えましたが、漆を塗った時の木目の美しさや、材料の硬さ、強度を考慮すると、欅(けやき)が1番良い。
親父の銘木貯蔵庫からよーく乾いた欅を拝借しました。

長浜という地域で、仏壇仏具の仕事をさせていただいていると、産地の仏壇(長浜仏壇)の特性上、欅を使うことも多く、この日本の銘木の偉大さは身をもって実感しています。
よく乾いた欅であれば、硬さも申し分なく、国内で育った木なので、日本の気候で使用するには最も適していると思ってのことです。

総欅の長浜仏壇

木地を挽くのはもちろん手仕事。NC(機械)で作れたら楽なのですが、細かな曲線と精度を出すには手仕事が1番。
一枚作るだけならまだしも、それを手で量産するというのだから、轆轤師の技術も相当必要なこともわかっていただけるかと思います。

何度も試作を繰り返し、やっといい具合の木地が仕上がりました。
思った通り、強度に問題なし!
功を奏したのが、kozaraの形状でした。側面は薄く仕上げましたが、上部はある程度の厚さで頑丈さがあったので使用上問題なく使える形になりました。

研磨してる最中強く握りすぎると、パリッと割れてしまうこともありましたが。。笑
漆を塗ればしっかりと堅牢性も増すので、その辺りもクリア。

右上の側面はペラペラ状態。これはさすがにボツ。

太陽に透かせると、道管で向こう側の光が漏れるほどの薄さです。モノによっては側面の木材自体が透けるほどのものもありましたが、さすがにこれらはボツになります。笑

今回塗り方にも少し緩急をつけた仕上がりにしました。漆の面白さをより感じていただけるように。との想いで2種類の仕上げを用意。
木目を活かしたいこともあって拭き漆のみの仕上げと、裏側に石地塗り(いじぬり)を施した仕上げ。

石地塗り(いじぬり)

個人的に好きな塗りの中の一つ。

古来、日本人が戦国時代に武士の刀の「鞘」(さや)に施したとされる塗り方です。
これらの種類は階級や武士の好みなどによって塗り分けられ、種類は幾つかあり、それらをまとめて「鞘塗り(さやぬり)」と呼ばれています。

武士達は刀の鞘にこだわりを魅せたと言われています

その中でも、堅牢性に優れているのが、石地塗り(いじぬり)。
厚めに塗った黒漆の上に、乾漆粉(ガラスに漆を塗って硬化させたあと、粉々にした粉。)を蒔いて硬化。数日後に、漆を何度か重ねて、砥石で表面を研ぎ出し、また漆を重ねるという手間のかかる仕上げです。

ざらざらの凹凸部も全て漆だというところも面白いのと、キャンパーなら一度は見たことのあるSTANLEYのタンブラーも実はこの凹凸が再現されています!笑
※諸説ありスタンレーに確認した訳ではないので悪しからず。

右側の緑タンブラーの表面が石地塗り

neru design works

neru design works オリジナル幕 CAVE

あらゆる挑戦をしながらアウトドア業界を牽引されているneru design works重弘さん。

「このままだと日本のモノづくりはダメになってしまう」「職人さんの高い技術を生かしたモノづくりを」
という想いから、素晴らしい作品を次々と生み出しておられる裏には、ネルさんのいいお人柄と長年大手メーカーに勤め独立された経験から洗練された考え方、そして確固たるneru design worksの信念があることが、作品にみて取れ、多くのファンを惹きつけるのだの実感しました。

neru  design works × GNU urushi craft "kozara12漆ver."は4月27-28日阪急GREEN AGEにて。

この作品を手にしてくださった方々が、心豊かな時間を過ごしていただけることを願っています。

neru design works / 重弘 剛直
新品の状態が最も価値があり、古くなると価値が毀損する。
scrap and buildを繰り返してきた日本では一般的な考え方だけど、海外では古いものでも、価値が落ちないものがたくさんある。
もちろん単に古いだけではなく、そこには人々が価値を見出すだけの何かがあるわけだけど。
neru design worksが目指すのは使うことによって経年優化していくようなモノ作り。
長く使ってもらうことでより存在感を増していく。
そんなモノが作れれば、きっと10年後も20年後も誰かに使ってもらえるはず。そしてneru design worksが目指していることがもう一つ。キャンプギアというモノ作りを通じた、日本のモノ作りへの貢献。
この20年あまりで多くのモノ作りの現場が海外に移ってしまい、その結果、日本でモノが作れなくなりつつある。
モノ作りの技術継承は一度途切れると、簡単には再生できない。
世界に誇れるモノ作りの現場が衰退していくなんて考えたくもない。
コストが高くても、大量生産できなくても日本の職人さん達の技術をいかしたモノ作りをしていきたい。

GNU urushi craft / 中川 喜裕
「漆文化を広めよう」を合言葉に、様々な”漆の新たな可能性”を探り、5代目塗師中川喜裕が”ヌーの群れ”と共に、漆文化を広める挑戦を続けるプロジェクトであり、コミュニティーであり、アウトドアブランド。


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