むーちゃんのこと④

むーちゃんはダンスも苦手だった。どうも振り付け通り動けないのだ。ワンテンポ遅れがちだったり、お手本とは左右逆のポーズをとっていたり、腕を伸ばす動きとかもなんかグニャグニャして見える。伸ばした手先なんか、ピシっと伸ばせてない。なんかダラ〜っとして見える。それに気付いたのも年中の秋の運動会でだった。なんか一人やる気なさそうに踊ってる子がいるな〜と思ったら我が子だった。
むーちゃんは小さい頃からあまりリズムにのって体を動かす事をする子じゃなかった。幼児向け番組で好きな歌が流れた時なんかはめっちゃ喜ぶけど、それに合わせて体を動かす事があまりなかった。そして私自身も踊ったりする事がビックリするくらい下手だった。だからむーちゃんのその姿を見ても、「あ~ 私の血が遺伝しちゃったんだな」としか思わなかった。けどなんかダラダラしてる風に見えるのはちょっと残念だった。なんであんなにむーちゃんだけやる気ないんだろう?全然楽しそうじゃないし、なんだか怠けてる風に見える。他の子は多少やらなくてもあんなにダラダラやってないよなぁ…。行事は張り切らないタイプなのかなぁ、でもそれにしてももっとちゃんとやれば良いのに…なんて考えてた。
終始そんな感じだったので我が子のこれといった見せ場や盛り上がりもなく、私の中で淡々と運動会は終わっていった。
私は張り切って参加してる他の子を見て羨ましいなと思った。

けど、今なら分かる。

むーちゃんは怠けてなんかいなかった。

ダラダラ踊ってなんかいなかった。

一生懸命ダンスもリレーも、全ての競技を全力で取り組んでいた事を。

そしてむーちゃんはとっても頑張って参加し、むーちゃんなりに運動会という行事を楽しんでいたのだ。

ただ、そう見えてしまうのだ。

その当時のむーちゃんの事を思うと胸がキュッと痛くなる。

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