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あの頃 2020.3.13

懐かしい90sの曲たちをYouTubeでクロールしている。四半世紀も前だという事実に愕然とする。思えば地味な青春時代だった。斜に構えて理想ばかり高く浮世離れした若造だった。ひとりぼっちで痩せっぽちで寂しくて寂しくて地味でさえなくて暗くてひねくれてて、モテるはずもなかった。けれど体の芯にはのほほんとした陽だまりみたいな楽観があったのは、良くも悪くも、母が注ぎ続けてくれた揺るぎない愛情のおかげだったのだろう。おかげで犯罪者にはならずにすんだ。毎日、退屈を持て余してふらついて夜更かしばかりしていた。ひたすら不安だった。裏腹に根拠なき過剰な自信に満ちてもいた。ただずっと寂しさだけは通奏低音として末端細胞に至る全身の隅々まで流れ続けていて、結果、骨の髄に染み込んでしまった。生涯抜けることはないだろう。90sの曲たちを聴くと、あの頃の気持ちがまざまざと蘇ってきて、寂しくてワクワクする。おかしな気持ちにさせてくれる。音楽はつくづく偉大だな。あの頃、ひたすらため込むだけでうまく吐き出せなかった形のないものが、いまだに僕の中にはたっぷり溜まり続けているから驚きだ。それは桜島だかキラウエアだかみたいに吹き出し続けている。いくら吐き出し続けても枯渇する気配はない。ひたすら寂しくて欲張りで満たされなかった90年代という時代に、寂しい気持ちに、のほほんと浸っていられたからなのかもしれない。この先、四半世紀後はどうなってるのだろう。コロナも自然の流れのなかで歴史の一部になっていくに違いない。僕らも歳をとる。じいさんになっても僕らはまだ夜更かしして、寂しい気持ちを愛でたり、しゃべり続けたりしているだろうか。僕以上におしゃべりな丸顔の息子と妻の話を聴くふりしながら、寂しい気持ちを愛でていられたらいいな。BGMは90s。時代はどんどこ変わっていくから面白いのだと、寂しさや不安すら味方にできるはずだと思い起こさせてくれる。ギザギザした小さな処方箋。

Ironic / Alanis Morissette
https://youtu.be/Jne9t8sHpUc

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