「テレビ」「ネット」そういう問題じゃない

PR周辺の仕事をしていて、たまに訪れる難問のひとつに
「テレビに出たいんです」
と言われるクライアント様がいらっしゃることがあります。

私が紙出身だからアレルギーがあるとかそういうことではなく、正直一度ローカルで数分尺に出たからって、爆発的に何かが変わるわけではないですよ、ということを先にお伝えしています。
それと同時に、テレビだって有料媒体なわけで、そんな簡単に自分の思い通りに出演できるわけではないのです、という部分もお伝えしています。
タダで見れてタダで出演できるなら、広告業界なんてみんな倒産ですよ。ナショナルクライアントが全国を帯でコマーシャル打てる時代はもうとっくの昔に終わっているというのに。

( ̄ー ̄)このあたりの「紙」とか「電波」とかの媒体広告費と広告代理店の関係について書き出したらえらいことになるので割愛します!

で、なかなか伝わらないのが
「お金稼いでて大きな買い物できる可処分所得の高い層がターゲットなら、平日昼間のローカル番組に出てもターゲットには届かないですよ」
ということです。

私の棲息する福岡にも知名度の高いローカル番組は複数あります。
実際、各局の方々ともたまにご飯を食べに行ったりさせてもらいながら、情報交換をしています。

ただ、ただですね。
この「ターゲット」もへったくれもない「テレビに出た」という満足度がPRの世界には眼前と拡がっているのです。

決して「テレビが終わってる」とは言いません。
ただ、毎日外で働いてる人々が見るテレビ番組って、サッカーやスケートといった「即座に結果がわかってしまう」もの以外は基本的に録画なんですね。
深夜もリアルタイムのOAは見ずに、その週の月9の録画を見たりしてるんです。

ここの問題、今、過渡期に来ていると思います。

実際、ローカル番組での訴求で3日くらいのシャワー効果をうまく利用して太くなっていく個店さんもあります。
また、こんなこと書くと各所からクレームが入りそうですが、意外と制作サイドって情報をとりに外に出る時間がないので、こういった初出し情報をSNSやネットで拾って、追っかけ取材に入ったりもするんです。

(゚∀゚)そう、ここからが本題。
じゃあ結局、ネットなんですかね。というお話。

で、昨日出た電通報の記事が本日のメインディッシュです。

「2015年 日本の広告費」特別対談 ネットがリードする時代だからこそ、メディアにはブランドの確立が求められる

いくつか特筆すべきポイントがあるのですが、それは

テレビとネット――メディア利用の境目は40代!?

砂川:ネットとマスメディア、特にテレビとの関係では興味深い調査結果があります。NHK放送文化研究所の「日本人とテレビ 2015」によれば、「1番目に欠かせないメディア」が20代と50代では真逆になっています。50代ではテレビが1位で55%、2位がインターネットで21%でしたが、20代では、1位がインターネットの54%で、2位がテレビの25%なのですね。要するに、テレビとインターネットに関して、今後30年でユーザーの意識が完全に入れ替わる。
奥:昨年、電通総研で「頼りにしている情報源・メディア」を各年代に尋ねたところ、50代以上では地上波テレビをはじめマス媒体が多かったのですが、30代以下ではニュース・キュレーションサイトやSNS、あるいは男性コミック・ゲームアニメ誌が多くなっていました。因子分解をしてみると、そのマス志向とネット志向の境目は40代で、40代よりも上の年配層はマスメディアに対する信頼を重んじる人たちで、40代よりも下の若年層は完全にネット系に入っているわけです
おっしゃるように、今後15年、30年たったとき、境目が年配側にシフトしていくわけですから、成長が期待される一方で課題もたくさん出るでしょう。

結論からいくと、ネットがテレビに取って代わるほどの底力なのかというとそれもまだまだ模索の段階でして、ただひとつ言えるのは、4マス(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)の人々は4マスの力を信じていて、あまりネットを重要視してこなかった気がするんですね。
あくまで、ネットは補完媒体。
でも、ネットの世界は物凄い勢いで動いていて、今回ご紹介している電通報の題材も、そもそもは

2015年 日本の広告費」は、インターネット広告費の2桁成長にリードされ、4年連続で前年実績を上回りました。放送メディアやジャーナリズムが専門の立教大准教授の砂川浩慶氏と電通総研の奥律哉氏が、インターネット時代における広告やメディアのありようを探ります。

という内容です。
(この電通が毎年発表する「●●年日本の広告費」を見ずにアドマンと言っている人はたぶんモグリです)
ちなみに2015年の特徴は

● 総広告費は 6 兆 1,710 億円、前年比 100.3%
● 4 年連続でプラス成長
● インターネット広告費が、二桁成長でけん引 

です。特にネット広告が1兆円の大台をクリアしたことで、前年の2014年は結構な騒ぎになりました。

これは私の勝手な想像ですが、
「いやいや、リアルメディアには勝てないよ」
と胡坐をかいていた4マスが、徐々に狼狽してきているけれど、抜本的な解決策は見いだせておらず、せいぜい合わせ技で逃げるくらいです。
かたやネットサイドも、旧態依然とした業界にカウンターパンチを喰らわせようと(してきたかどうかは知りませんがそのほうが面白いのでちょっとデフォルメ)頑張ってきているけれど、従来の広告モデルの解析を蔑ろにして走ってきた感があります。

結局、今は「これだ!」と言えるメディアはなく、かつ人々のコミュニケーションがシミュラークルであればあるほど、「これだ!」でどうにかできる時代ではないのだ、と。
いうのが私の結論というか、現在の見解です。

マーケティングだブランディングだと言ってますけど、大事なのはクライアントのリソースであり、それをどういうターゲット(ここがまた厄介!)にどういうアプローチで届けるか、ということを日々考え考え悩みながら、ある日GENKINGみたいな人がさくっとインスタにUPしたアイテムがバカ売れしたりして無力感に苛まれたり、といったことをもう少し繰り返すんだろうな、と思います。

人は思惑通りには動かない。
でも、思惑のちょっと外にあるふわっとしたところで動いたりする。
じゃあ、ふわふわばかり出せばいいかというとそれも違う。

なかなかに難しい問題であり、キャズムとして新しいアイテムやサービス、ガジェットに振り回されながら、この業界にいる限りはきっと一生考え続けるんだろうなと思う今日この頃です。

さて、あなたはテレビ派?ネット派?それとも“時と場合でいろいろ”派

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