見出し画像

(57日目)渋谷でのできごと

2019年5月4日

在るイベントの帰りに夕食を奢っていただけることになり、表参道にいた僕らは自然と足を渋谷へと向けた。

久しぶりにおとずれた渋谷のハチ公前は、ゴールデンウィーク真っ只中ということもあり、人であふれ、駅の床はよくわからない油のようなものでぐちゃぐちゃし、そこに集まっている人や、獣や、モノの老廃物や排泄物をごちゃごちゃに混ぜ込んだような酷いにおいがした。

思わず吐きそうになる。

渋谷は今も昔も苦手だ。

行きかう若者の服装も、普段LINEで夢物語のように眺めて楽しんでいるVOGUEのモデルのようなファッションの人たちばかりで、自分がイメージしていたヒトというもののあまりの外観の違いにしばしボーゼンとなる。

もう、「そっちの人間」ではないのだ。

ここは、もう、外国ではないのか?

人に酔い、神経が過剰に緊張するなか、ああ、この感覚、やはり、長い時間飛行機に閉じ込められ、ほうぼうの体でホテルにチェックイン、その後夕方だし何となく外に出た海外の街中、そのとき感じた感覚と似ている。そう思った。

今は昔海外に行ったときと比べだいぶん年をとってしまったし、異文化な雰囲気のわくわく感より、不安感や過剰な色や香りに対する不快感の方が強まってしまっているが。

そんな体でTACOBELLというお店に入ることになった。

タコスのファーストフード店なんて初めてで、タコス屋さんらしい海外の女性の従業員が応対してくれた。

「へぇ~、タコスのファーストフードなんて日本にあるんだね。初めてだなぁ」

そんな風に隣の友人と話していると、その店員さんは、

「え?初めてなんですか?おいしいですよ!」

ととっても人懐っこい笑顔と言葉で答えてくれた。

その言葉と笑顔に、今まで異国間満載だった渋谷という街に居たぼくは、一気に日本、という今この場所に引き戻された。

そうか、この感じていた「アウェイ感」は、この街に親しい人が居なかったせいだ。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?