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・そもそも「インフレ目標2%」を設定しているのはナゼ? ・「イールドカーブ・コントロール撤廃」すると何が起きるの? ・Metaが社債を発行すると、なんで米国債の価格が下るの? ・… もっと読む
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FOMC解説:実質金利は上昇し、米10年債利回りは今後も4%越えで推移する

9月のFOMC会合は事前予想通り政策金利を据え置いたものの、6月以来に公表されたドットプロットに示された来年以降の利下げ幅の小ささがサプライズとなった。 この結果を受けて、短期的な株安とドル高は勿論のこと、私としては今後1~3年程度の米国株に対する懸念が強まった形となった。 理由としては、米短期金利は今後2,3年の利下げによって下がるだろうが、長期金利は下がる要素がリセッション以外に見当たらないからだ。 リセッションに陥らなければ長期金利は4%を越えた水準で推移し、リセ

[FOMCプレビュー]来年以降のドットプロットは上ブレ可能性が高く、ドル高円安は継続か

2023年9月のFOMC会合が開かれている。日本時間 21日 午前3時にFOMC声明とメンバーによる金利予測分布図(ドットプロット)が公表される。 今回のFOMCプレビューでは、論点になるポイントごとにまとめておく。FOMC会合後の為替取引や株式投資家の判断に役立てて頂ければ幸いだ。 金利は据え置きまず大前提として、今会合でのFF金利引き上げはまず無いと見られている。 6月のFOMC会合で公表したドットプロットでは年内残り2回の利上げが見込まれており、7月に利上げがあっ

なぜ、パウエル議長は早期利下げ観測を許さないのか / ジャクソンホール会議

今週末のジャクソンホール会議を控え、米長期金利は4.36%と2007年来の高水準を付けた。 インフレ長期化懸念や米政府の国債増発による需給悪化、日銀のYCC柔軟化による日本への資金回帰、フィッチの米国債格下げなど、様々な要因によって米長期金利は上昇圧力を受けている状況だ。 どの要因が正しく、どの要因がどれだけ影響を与えているかを断定することは出来ないが、少なくともFRBパウエル議長はこの状況を好感しているだろう。 利下げ観測を打ち消したいパウエル議長なぜならば、パウエル

なぜ市場は7月米CPIの結果でタカ派に傾いたのか、ポイント解説

7月米CPI概要8月10日に発表された米CPIは前年同月比で総合+3.2%、コア+4.7%となった。 総合CPIが前月(+3.0%)から加速したのは実に13ヶ月ぶりだ。しかし、これまでCPIの減速を支えて来たのが主にエネルギー価格だったことを考慮すれば不思議ではない。エネルギー価格はすでに底を打ち、これ以上の下落は限定的だからだ。 そのエネルギー価格、主に原油は反転の兆しを見せているが、中国経済の停滞が上値を抑えてくれている状況となっている。ウクライナ情勢もどう転ぶかわ

半端なくわかりやすい「債券解説」- 格付けの役割と債券との関係

「ムーディーズが米銀行の格付けを引き下げた」「フィッチが米国債を格下げした」 最近話題になることが多い債券の格付けですが、そもそも債券の格付けとは何か。格下げや格上げが債券にどのような影響を及ぼすのか。 この記事で解説していきます。 なお、「債券とは何か」はこの記事でも少し復習しますが、読み進めていて不明点があれば下記の記事をご覧ください。 必ず理解できますので隙間時間に少しずつ読み進めてみてください。 まずは簡単に復習。債券は本当にわかりにくいので、何度もイメージ

ゼッタイに理解できる、半端なくわかりやすい「債券解説」- 1.債券とは

この記事を読むと、絶対に債券について理解できます。 今まで何度も諦めた方、一度で良いのでこの記事を読んでみてください。そして、途中までしか読む時間が無ければ、ブックマークして後日、続きから読んでみてください。後悔はさせません。 債券とは債券とは、国や企業が資金を借り入れるために発行する有価証券のひとつです。 ポイントは、国や企業が資金を「借り入れる」ために発行する「有価証券」であることです。 発行体は債券を発行し、資金を借入れる債券を発行する国や地方自治体、企業のこと

[米国債格下げ問題①] フィッチ・レーティングスによる格下げの意味を解説

8月2日、日本時間の朝方に格付会社フィッチ・レーティングスが米国債を格下げした。 最高位のAAAからAA+への格下げ、ウォッチネガティブからアウトルック安定的への変更があったわけだが、イマイチこれはどういう意味なのかわからないことも多い思う。 今後、米国債格上げ問題はすぐに収まるかもしれないし、他の問題に波及するかもしれないが、まずは今回の格下げの意味を理解しておこう。 以下、簡単に解説。 フィッチ・レーティングスによる米国債格下げ早見表と解説 「AAA」→「AA+

日銀会合:長期金利変動幅は±0.5%目処でも利回り1.0%の指値オペへYCC修正

深夜2時に日経新聞から配信された、YCC柔軟化報道の通り、日銀は長期金利変動幅の目安を±0.5%としつつも、10年債について利回り1.0%での指値オペを実施すると発表した。 なんともわかりにくいが、公表後の債権と為替市場の過熱感を抑えるために、こうした表現を使っているのだろうか。日銀は"YCC運用の柔軟化"と表現しているが、結局のところは変動幅の拡大であり、昨年末と同じくYCC修正だ。 下記、日銀HPに遅れて掲載された資料だ。 0.5%変動幅拡大、YCC修正でしかない。

なぜ、YCC修正の緊急性が乏しいと言えるのか

先週末、ブルームバーグから「日銀は現時点でYCC副作用に対応の緊急性乏しいと認識」という報道があった。話題になったので記事を読んだ方も多いだろう。 一ヶ月ほど前に、これについては解説記事をアップしているが、明日の会合を前にもう一度書いておく。 YCCの維持について、日銀が懸念していたのは債権市場の機能低下である。 債権市場サーベイ そして、日銀が4月の会合でその機能度を測る上で"注目している"と言及した調査が「債券市場サーベイ」だった。4月会合の主な意見に記載がある。

今からでも間に合う!米金融政策動向、FOMC会合徹底解説

今回のFOMC会合では0.25ポイントの利上げが既定路線ですが、市場の注目は9月、11月に追加でもう1回利上げがあるかどうかです。 これを読めば、今後の米金融政策についてもキャッチアップして、年内動向を自分で判断できるようになります。 6月のFOMC会合で示された政策金利見通しは年内2回の利上げ まず始めに、前回の会合でFOMCメンバーの政策金利を各年末ごとにプロットとしたドットプロットでは、2023年末までにあと2回(0.5ポイント)の利上げが見込まれていた。 市場

円安によってイールドカーブ・コントロールが修正されることはない(後編)

為替相場が1ドル145円前後で推移している中でも、7月末の日銀会合でイールドカーブ・コントロール*1の修正が行われることはないだろう。 *1イールドカーブ:YCC 前編では4月、6月の日銀会合の主な意見や債券市場サーベイに基づき、日銀がYCC修正をどう捉えているかを振り返った。中編では植田総裁の「(YCC修正において)サプライズはやむを得ない」発言の真意を解説した。後編の本稿では、昨年から続く円安によってYCC修正観測にどのような影響が出ているのか、日銀はそれをどう捉えてい

[米国株週間展望]パウエル議長の発言から読み解く、年内2回の利上げの可能性

低調なPMIを受け、リセッション懸念が強まってスタートした6月26日週の米国株相場は最終的には前週末比上昇で終えた。 1.週前半の経済指標は好調で相場は上昇~様子見 前週の前半では、スタートこそ不調だったものの、その後の経済指標を受けてリセッション懸念が後退し上昇した。 米消費者信頼感指数が2022年1月以来の高水準を付け、労働市場が引き続き好調であることが示された。米住宅関連の指標も発表され、昨年大きく下落した住宅価格は持ち直しつつあることが示され、S&Pケースシラー

本当にYCC修正においてサプライズは不可避なのか?(中編)

「イールドカーブ・コントロールの修正において、ある程度のサプライズはやむを得ない」 植田総裁はそう述べたが、果たして本当に避けられないのだろうか。 前編では植田日銀の4月、6月の金融政策決定会合の主な意見と債券市場サーベイを基に、直近でイールドカーブ・コントロールの修正が行われるとは思えない理由を解説した。中編の本稿ではネット上で数週間話題になっている「YCC修正のサプライズはやむを得ない」という植田総裁の発言の真意を紹介し、本当にサプライズは避けられないのかを解説してい

なぜイールドカーブ・コントロールの早期修正はないと判断できるのか(前編)

植田総裁率いる日銀がイールドカーブ・コントロール(YCC)をすぐに修正することは無いだろう。 日米金利差が拡大し、1ドル145円前後まで円安が進行している今でさえ、YCCが早期に修正されることは無いと考えている。金融市場が、新体制の植田日銀に期待していたのは「市場との丁寧な対話」だった。黒田日銀時に多くのサプライズで金融市場に混乱を招いた反省を活かし、植田日銀には市場とコミュニケーションを取りながらの政策変更が期待されている。 そして、その植田日銀は6月の金融政策決定会合