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世界統一政府への道

 神を排除し、客観的真理の存在を否定した人類は、次第に「人間社会のゴールは、一致である」との確信を抱くようになります。神はいないのだから、人間社会が抱える問題は自分たちで解決するしかありません。そのためには、全人類が一致して問題解決に取り組む必要があります。これがヒューマニスト(人間中心主義者)たちの論理です。
 20世紀には、2つの世界大戦が勃発し、世界が二大陣営に分かれて未曽有の殺戮を繰り返しました。原子力兵器の開発は、地球そのものを破壊しかねないほどの危険をもたらしました。第二次世界大戦後も、各地で紛争が続いています。極東では朝鮮戦争とベトナム戦争、中東では湾岸戦争、ヨーロッパではボスニア内戦とコソボ紛争などが勃発しました。21世紀になると、イスラム原理主義によるテロ活動が頻繁に起こるようになっています。
 ヒューマニストたちが考える諸問題に対する解決策は、人類の一致です。神なき時代である21世紀の社会は、間違いなく世界統一への道を歩み始めています。
 
一致の強調
 最初の「ヒューマニスト宣言」は、1933年に発表されました。しかし、その宣言は余りにも楽観的過ぎるとして、その修正版となる「ヒューマニスト宣言Ⅱ」が1973年に公表されました。起草したのは、ポール・カーツ(哲学者)とエドウィン・ウィルソン(物理学者)です。彼らは、神の存在と死後の命を否定した上で、人権擁護、国際法廷の開設、無制限に避妊や中絶を行う権利、離婚の権利、安楽死の権利などを認めました。「いかなる神も私たちを救うことはできない。私たちは、自分で自分を救わなければならない。そのためには、世界統一政府と単一宗教の確立に向けた運動を展開しなければならない。人類の分断をもたらす意見や確信の相違は、排除されなければならない」。これが「ヒューマニスト宣言Ⅱ」の精神です。
 ヒューマニストたちは、ナショナリスト(民族主義者、愛国主義者)たちを忌み嫌います。なぜなら、人類は国境や人種の壁を乗り越えて、地球市民として共通のゴール(普遍的平和や繁栄)に向かって前進する必要があると考えるからです。彼らは、世界共通のシステムや法体系を確立しようとしますが、これが実現すると、人類は間違いなく支配者によって奴隷状態に置かれることになります。バベルの塔事件以来、神が人類に与えた最高のシステムは、ナショナリズムです。世界統一政府は、反キリスト出現の土台となる統治形態です。しかしながら、ナショナリズムも行き過ぎると、他国への侵略行為に繋がる危険性があるので、これはこれで問題を抱えています。いずれにしても、人間が行うことには限界があります。
 明らかに現代は八方塞がり状態です。しかも、確実に悪化しています。人類は単独で希望を見出すことはできません。

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