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早産をもたらすプラスチック化学物質

 昨年、アメリカでは38万548人の赤ちゃんが予定より早くこの世に誕生しました。これは多くの家族にとって身近な現実であり、喜びから心配までさまざまな感情が交錯します。早産は37週未満の出産と定義され、両親や医療従事者に安堵と心配の両方をもたらすことが多いのです。

 こうした懸念に加え、『Lancet Planetary Health』誌に掲載された最近の研究によって、注視すべき関連性が明らかになりました。未熟児出産の増加は、私たちの環境や日常的に使用している製品に広く存在するプラスチック化学物質と関連している可能性があるのです。この発見は、私たちの身の回りの安全や家族の幸福について重要な疑問を投げかけ、この懸念すべき傾向に影響を及ぼしている要因を詳しく調べるよう促しているといえます。
 
●早産の10%はプラスチック化学物質が原因
 早産の10人に1人が、私たちの環境や日用品に広く存在する化学物質に影響されています。妊婦は、日常生活でのプラスチック製品の使用から、料理、掃除、その他の日常生活まで、様々な方法でこれらの化学物質に触れているのです。

 この問題の中心は、フタル酸エステルとして知られるある種の化学物質です。 これらの化合物は、玩具、パーソナルケア製品、パッケージなど、さまざまな消費財に含まれるプラスチックを軟化させるために一般的に使用されています。フタル酸エステル類がホルモンを撹乱することは以前から知られていましたが、最近の研究ではヒトの生殖への影響について警鐘が鳴らされています。研究者らは、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)のECHO(Environmental Influences on Child Health Outcomes)プログラムの1998年から2022年までのデータを分析し、20種類のフタル酸エステル代謝物と妊娠年齢、出生体重、出生長などの要因との関係を調べました。

 アメリカ国内の5,000人以上の妊婦を対象としたこの研究では、体内のフタル酸エステル濃度が高いほど、早産や早産のリスクが高まることが判明しています。フタル酸エステルの体内濃度が高い上位10%の母親は、下位10%の母親に比べて、37週以前に出産する可能性が50%高かったのです。
 
●未熟児出産と赤ちゃんの重要な成長の関係
 赤ちゃんは妊娠後期に著しい成長と発達を遂げますが、これは通常妊娠37週から40週の間に起こります。赤ちゃんの臓器、特に肺と脳は、この重要な時期に著しい成熟を遂げます。肺は呼吸に不可欠な物質である界面活性剤の産生を続け、脳は急速に拡大し、複雑な神経結合を発達させます。さらに、体温調節や出生後のエネルギー備蓄に不可欠な体脂肪が蓄積されます。

 この重要な発育段階を終える前に早産で生まれる赤ちゃんは、しばしば「未熟児」と呼ばれています。残念なことに、未熟児は早産であるため、妊娠後期に必要な発育や準備をすることができません。その結果、未熟児の身体には必要な脂肪を蓄積する十分な時間がないため、最適な健康状態を保つのに十分な体重がない可能性があります。そのため、呼吸器の問題、発達の遅れ、長期的な健康合併症など、生涯を通じてさまざまな医学的問題に直面するリスクが高くなるのです。

 最近の研究によると、フタル酸エステル類への曝露などの環境要因が世界的な早産の蔓延に重要な役割を果たしていることが明らかになってきています。研究の著者であるレオナルド・トラサンデ教授(Leonardo Trasande)は、「フタル酸エステル類は、諸外国の大半において早産児の5%から10%に寄与している可能性が高く、この問題の世界的な影響の大きさを示している」と述べています。
 
●妊娠中のフタル酸エステル曝露を減らすための実践的方法
 以下に、出産前にプラスチック化学物質への暴露を最小限に抑えるためにできる実践的な措置を挙げておきます:

1. プラスチック製品の使用を減らす:プラスチック容器に入れた食品を電子レンジで温めるのは避け、食器洗い機にかけるのも控えましょう。
2. 包装されていないオーガニック食品を選ぶ:冷凍食品やスナック菓子など、プラスチックに包まれた包装食品は避けましょう。できるだけ包装されていないオーガニック食品を選ぶようにしましょう。
3. パーソナルケア製品に気をつける:フタル酸エステル類を含む化粧品、ヘアケア製品、スキンケアローションを制限するか、使用しない、またラベルをチェックし、フタル酸エステル不使用のものを選ぶようにしましょう。
4. 警戒を怠らない: 妊娠中は特に警戒が必要なので、環境中の他の有害化学物質にも気を配りましょう。フタル酸エステル類は氷山の一角です。
 
 

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