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夢 ー時空を超えて 2の3ー

何が起きているのか
瞬時には理解が出来なかった。

ジェフリー?ジェフリー?

何度か声をかける。
肩にそっと触れてみる。
ガウンを通して冷たい肌の感触が指に伝わる。

そこからどうやって外に出て、公衆電話にたどり着いたのか、1ミリも覚えていない。

気が付いたら、ダウンタウンのアパートメントにいるルームメイトに電話をしていた。自分が何を口にしているのかも良く分かっていなかった。ただただ涙と鼻水が口に入るので、むせながら、やっとの思いでジェフリーが冷たくなっている事を伝えた。

どのくらい外にいただろう。
ルームメイトの2人が駆けつけてくれるまで、私は呆然としたまま外の公衆電話の前にいた。
そこで待っていれば、何事もないいつもの日常が戻ってくるかもしれない、そんな淡い期待を抱いて、寒空の下通行人に不審な目を向けられながら、ずっと立ち尽くしていた。

2人が76stを曲がってくる姿が見えた。
その途端、視界が歪み何も見えなくなった。

彼らは何度かジェフリーのアパートには遊びに来た事があり、先に立って部屋の中に入ってくれたのだが、2人ともうつ伏せに倒れているジェフリーを見て絶句した。

私は何を思ったのか、いきなり自分のコートを脱ぎ、"ジェフリーが寒がってるわ!"と言って、横たわる彼の背中にコートを被せた。本当なら現場を触らない様にするのだろうし、部屋は暖房で暖かかったのに、そんな事にはお構いなく冷たくなった彼を温めようとした。友人は何か言いたそうにしていたが、黙っていた。

しばらくすると警察が来た。

ジェフリーの勤務先からも何人か駆けつけて来て、その中に仲の良かった友人2人の顔を見つけた。彼らはジェフリーの遺体を見て信じられないという風に頭を振り、その後私を抱きしめて、何度も何度も "I'm sorry"(可哀想に) と呟いた。

第一発見者だった私は警察に連れていかれるのかと思ったが、駆けつけたEMSの同僚の人達と何やら話していたが、その場で簡単な現場検証と発見した時の様子の聴き取りが行われ、その後あっさりと家に返された。

胸が痛くて涙が止まらなくて頭の中が真っ白で

そんな状態で家に帰っても、自分の居場所は探せそうになかった。警察でも拘置所でも良いから、身柄を拘束しておいて欲しいと本気で思った。さもないと、大声で叫び暴れ出しそうだった。

結局、ルームメイトに両脇を支えられながら家に帰った私は、そのまま寝込んでしまった。
目が覚めると現実が襲いかかってくるので、また目を瞑る。それを何度か繰り返すうちに、時間の経過が分からなくなっていた。

大分経ってからノロノロ起き出してルームメイトの部屋に行ったら、心配した2人が立ち上がりご飯の用意をしてくれた。その時思わず「こんなに悲しいのにお腹は空くんだわね」と呟き、私は絶対自殺はしないだろうと思ったのを覚えている。

翌日警察から私に、話しを聞かなければならないので今から家にいくと連絡があった。。。

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