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【ドール オムニバス 0-2】 (ドール オムニバスシリーズを”原稿から逃走中Vtuber@たんげつさん”向けにまとめたものです)

ネジを巻く音。
レコードプレーヤーからパイプオルガンが荘厳に、しかしあくまでも静かに囁くように流れている。
…青と赤のオッドアイ。

瞳孔が閉まったり、開いたり、ぎこちない。まだ光に慣れないようだ。
眼球が取り出され、再調整される。
優しく眼窩にまた入れられて、男がチェックする。
職人のような格好をした男は、優しく肩を抱いて、椅子の上に座らせた。男の所作はあくまで優しい。

…ドール。
そう、それは、人間の子供位の少女のドールだった。
人間の歳で言えば11歳位の感じで、顔は端正な中にも、可愛らしい部分があって、優しさをも秘めていることをうかがわせる。
唇はほのかに色が差していている。
服は黒のゴシックロリータらしい。後で調べたんだ。
「さて、君の名前を決めないと行けないね」
僕は手足の無い状態で棚に載せられて見てたんだ。多分僕のお姉さんを。


 私の左の眼球を舐めて。
 私の右の眼球を舐めて。
 味は違うかしら?
 私が三つ目なら、黄色も用意して、あなたの気持ちを確かめるの。
 Yes or No or どっちでもいい。
 私の事が好き。
 嫌い。
 どっちでもない。

 私の球体関節を動かして。私は自分では動けない。あなたの望むように。
 キスしやすいように。そうしたら、舌を出し、絡ませて。

 …嘘。私に舌は無い。
 突風が吹き、舞い上がる黒い羽根。
 
 全てはあなたの妄想。あなたは病室で、ベッドに繋がれて、かろうじて首を曲げて、夜の空を見てるの。起き上がれずもせずに。

 何故か開いてた窓から黒い羽根が一枚、部屋に入って来た。


 

 古風な窓の外を、戦闘艇が超高空をひこうき雲で空を別けながら進んでいた。少女は、それをぼんやり眺めていた。

 さぁ、今日は君の番だよ。出来上がったら、名前の他にもう一つ願いを叶えてあげるよ。
 まずは、この青い翡翠のネックレス、職人は少女の首にかけた。
 僕は、今の君もとても好きなんだけど、君は嫌だろう?手と足を作っておいたんだ。気に入るといいけど・・・
 さて、悪いけどしばらく首を外しておくね。仮止めしていた首を外し、手と足と首をゴム紐でくっつける。
 うん、球体関節がとてもしっくりしているよ。これなら少しの練習ですぐ歩けるようになるんじゃないかな。
 瞳の色とか髪の色はどうしよう?瞳は好きな色に塗ってあげられるよ。髪の毛は注文しなくちゃいけないので、しばらくかかると思うけど。
 …ギギギ、
 「同じ翡翠の靑を」
 「髪はあなたの好きな色を」
 そか、瞳の色は了解。染料を探してみるよ。髪の色は黒の長髪がいいな。ゴシックな感じな服、どうかと思って。

 さて、いよいよ、名前決めないとな。
 うん、
 シャルロット
 にしよう。
 よろしく、シャルロット、僕は、ヴァレリウスだよ。

 ああ、隠れてないで、おいで、エヴァレット。
 シャルロット、君のほんの少しだけ、年上のエヴァレットだよ。
 ほら、エヴァレット。
 「ああ、初めましてですのだわ。姉のエヴァレットですわ。仲良くして上げても良くてよ」
 「私は、シャルロット。おねぇ様、よろしくお願いいたします。色々教えて下さいね」

 さて、誕生パーティーだ。ケーキと紅茶を準備しよう。

(おしまい)
イラスト / @nocopyrightgirl


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