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【感想】Miracle Snack Shop


内容紹介

 韓国の『Talesshop』開発で、お店経営シミュレーション要素があるノベルゲーム。
 対応機種はSwitch及びPS4。Steamでも配信していて、日本語字幕にも対応している(おそらく日本語ボイス未対応)。販売元の違いから、CS版とPC版で違いが見受けられるかも。そもそもとして、「Snack」と「Sweets」でタイトルが異なっている。私はCS版で遊んだため、そちらでの紹介とする。ちなみに、CS版は日英中韓の字幕で、日韓ボイスが搭載。

 『僕の彼女は人魚姫』『狐が僕を待っている』と『Talesshop』タイトルを遊んでいて、その流れが購入動機となった。
 
 感想にて微ネタバレがあるため、注意してほしい。
 以下は、私がまとめたあらすじだ。正直なところ、商品ページのストーリー説明を読んだ方がわかりやすいかと。
 
友人のせいで多くの借金を抱えてしまい、その返済に向けてかき氷店『喫茶ミラクル』を経営することになった主人公。
 そのお店は事故物件で、屋根裏部屋にはポータルが!? 「入るのは怖いが、どこに繋がっているんだろう」そう考えながら眺めていると、中から女性が出てきて……。
 彼女はソルト王国の女王フィリアであり、自室のクローゼットと屋根裏部屋が繋がっていたそうだ。
 1週間に1度彼女にかき氷を振る舞う約束をして、借金返済のためにかき氷店を経営することに……。
 繁盛のために動画配信者である朱野ミラの力を借りながら彼女の悩みに寄り添ったり、ソルト王国に招待してもらったり、どうしてポータルで繋がっていたのかという謎を突き止めたり、お店を経営するだけにとどまらないシミュレーションゲーム。

 


キャラクターの魅力

ソルト王国の女王 フィリア

 彼女の魅力は3つある。国の違いによる異文化コミュニケーションと言語レベル上昇による言葉の変化女王としての悩みだ。
 言語レベル上昇とは何だと話になるが、こちらの世界に来たときに「ウィンドウが見える」と語ってくれ、物の名前や翻訳機能やら何やらをサポートしてくれているとのことで……。まぁ『俺だけレベルアップな件』のように自分だけ見えるゲーム的システムという解釈で。そのシステムも後から重要となるため、覚えておいて損はない。

 まずは、異文化コミュニケーションのかわいさと物語の発展性を語りたい。
 車のクラクションに困惑したり、映画を幻影魔法と驚いたり、遊園地を拷問場と例えたり……そもそも、氷は食べるものではなかったり。
 一般常識の違いでからかわれたり動揺したり、異文化コミュニケーションの姿が大変かわいらしい。ぜひ、その姿をボイス付で楽しんでほしい。
 また、女王が出演する映画を観たあとに、彼女の一面を理解できる場面がある。どうして女王にならないといけなかったのか、今の立場に嫌気が差していることまで語ってくれる。
 キャラクターを深く知れるということは、より好きになることでもある

 次に、言葉の変化と共に、しっかり変わっていく関係性に注目していく。
 初対面のときはそれはもうほんとに……戸惑いが強かった。言ってしまうと、とんでもなさに呆気にとられて、好きになれるのかと疑問に感じたほどだ。

 その後、言語レベル上昇により、まともに会話が出来るようになり、一人称が「女王」の二人称が「氷雪工」といかにもなキャラとなる。その時期は、前述の異文化コミュニケーションの掛け合いも多く、気がついたら好きになっていた。  

 最終的に「私」や「ユキト(主人公名)」と、言葉遣いも現代風になっていき、1キャラで様々な一面が見られる。 
 前の喋り方が良かったと思うプレイヤーも一定数いるはずだろう。現に、私も強気な女王口調がドストライクだった。
 そういう方に朗報が一つ、怒りをあらわに拗ねている状態だと以前同様の女王様に戻ってしまう。もうほんとかわいい。
 特にオススメしたいのが、お酒を呑んで酔っ払う場面だ。酔っ払っている口調や演技、翌朝に何があったか尋ねるときの会話は、ぜひぜひ聴いてほしい。めちゃオススメ。


動画投稿者 ミラ

 「喫茶ミラクル」を繁盛させるために手伝ってくれる動画投稿者。
 共通だけだとほとんど出番がなく、正直言って良い印象はなかった。悪質な切り抜き言葉、かき氷を食べて大学合格といった捏造や過激なネタのせいで、軽率でいい加減だなぁと。
 彼女の魅力はルートに入るまで実感出来なかった。どうして動画投稿者になったのか、その前は何をしていたのか、今の悩みを打ち明けてくれたり……。詳しく知れば知るほど、好きになっていった。

 ルートでのネタバレを軽く含めてしまうことは申し訳ないが、彼女の魅力はそれなしでは語れないと感じている。
 動画投稿者になる前はテレビ局勤務であり、どうして辞めたのかを教えてくれる。
 主人公(とプレイヤー)は彼女のことを詳しく知れても、家族には現状を伝えていないらしく、父親たちは今でもテレビ局で働いていると勘違いしているようで……。
 娘の職業を自慢していた父親に、本当のことを伝えて良いのか、どう切り出すべきかと相談される。
 とうとう話し合うことに。私自身こういった家族ものに弱いせいか、娘を自慢に思う父親の言葉には来るものがあった。
 また、本心を見抜かれたら笑って誤魔化す、不自然過ぎるほどバレバレな震え声、どこか寂しさを感じる作り笑いと書き連ねるだけで心が痛くなる演技が、彼女の悩みを強く感じさせる。

 等身大のヒロインで現実に起こり得る共感しやすい悩みを題材にしているため、ファンタジー要素の強いフィリアルートとは違った魅力を感じた。 

 

DLCパート

 CS版ではDLC追加シナリオがクリア後に解禁される。ストーリー理解とネタバレ回避から、本編の全エンド達成後に推奨。
 ポータルが消滅し、結婚を目標に「喫茶ミラクル」で一緒に暮らすこととなった二人。

 本モードでは「おさわりモード」が解禁される。『ネコぱら』にあったアレに近いものと思ってもらえれば。
 女王服や私服、水着に喫茶の制服、ウェディングドレスで「おさわりモード」を楽しめる。服によって部位によってセリフや対応が異なり、全部聴いてみたいとなるはずだ。

 フィリアとの幸せなひととき、喫茶経営での問題客とのやり取りと印象的な場面が多く、自称インフルエンサーとして突っかかってくるクレーマーにガツンと言う女王は必聴ものだった。
 また、後述のエンディング解説にて詳しく語ることとするが、いくつかのエンディング後日談やソルト王国で疑問を抱いたこと等も判明し、ストーリー面も気になるプレイヤーにオススメ出来る。
 
 DLCトゥルーエンディングでは、待望の主題歌も。記憶の限り、本作のボーカル曲はこれ一曲だつたかと。
 そして、歌詞と作品内容だけでなく、作中会話とエンディングへの入りも一致しているため、直前の会話から注目してほしい。


本作ならではの要素

多数のエンディング

 本作のエンディング数は非常に多い。借金返済エンドや各キャラのノーマルとトゥルーだけでなく、思いもよらないエンディングも実装されている。
 また、追加DLCにて本編エンディング後日談があり、「喫茶ミラクル」とソルト王国を繋いでいる理由、ソルト王国を旅することで見つけた謎、なぜフィリアの前にシステムウインドウが現れたのか……多くの伏線が回収される。

 勿論、ミラさんの夢を二人で叶えるトゥルーエンド、成年向けに限りなく近いシーンが描かれる異世界でのフィリアエンドと満足度が高いものが多かった。 

 

ゲストキャラ登場のファンサービス

 一枚絵のネタとして、経営パートでのVIPキャラとしても『Talesshop』のキャラクターか登場する。
 私はこの手のファンサービスが大好きで、本編と関係ない部分でも楽しめる。
 現状では2作品しかプレイしていなく、理解できるネタは少なかった。それでも、この子の見た目好き、この子はどういう悩みを抱えていてどんな魅力があるのか……と考えてしまった。

 

かき氷へのこだわり

 喫茶の経営ということで、一つ一つのかき氷が丁寧なイラストで描かれている。
 ブルーハワイやミルクかき氷の王道は勿論、たいやきかき氷やチキンかき氷といった変わりものまで登場している。失敗かき氷シリーズもあり、そのときはモザイク描写になっていて明らかにダメだろと笑いそうになったり……。
 特定のかき氷だと一枚絵が表示される。失敗かき氷だと不満そうに、大成功かき氷は幸せな表情で食べてくれるのだ。

 先述の食事シーン一枚絵だけでなく、遊園地や海デートの一幕、キスシーンやベッドに誘うものまで多くあり、非常に満足できるものだった。


気になる箇所

ヒロイン同士の掛け合いが少ない

 複数ヒロインでワイワイするものはまったくなく、他ヒロインへの言及すら滅多になく、常に1対1での会話と言ってもよいほどだ。
 1週間に1度かき氷に食べに来ると冒頭に約束したフィリアだったが、ミラルートに入ると来店の気配を感じられなくなり……。ミラさんにかまっている自分のせいであり、プレイ中は彼女の悩みと向き合いそれどころではなかったとはいえ、初めからフィリアなんていなかったみたいな扱いだったなぁと後から思い返して寂しさがあった。
 他にも、フィリアルートだと、ミラさんの出番は「広告」というゲームシステムを使うときや新作かき氷開発の試食時ぐらいで、定型文的扱いになってしまう。
 強いて言えば、ミラ初登場時にフィリアのことを尋ねるぐらいで、2人のやり取り……主人公含めて3人でワイワイはまったくない。

 また、DLCの話になるが、一瞬だけ脳内にミラを思い浮かべる程度で、常にフィリアとの会話である。結婚を目標としたトゥルーの後日談であるため、それはそうではあるが……。
 
 ハーレム状態を楽しむ、複数人でドタバタするものではないと理解してから遊ぶのが良いだろう。


経営パートはあくまでおまけ?

 「喫茶ミラクル」でかき氷店を経営し、借金返済を目指す……と語ってきたが、経営シミュレーションはおまけ要素と割り切るのが良いかと。
 彼女とのデート費用、新作かき氷の開発費用、広告費をキツキツにやり繰りしてといった必要もなく、ほとんど考えず全エンディングに到達出来る。
 その理由としては、エンディングを解放した数に応じて恩恵が得られ、お金稼ぎが非常に楽になることが挙げられる。
 初回プレイでは、各種フィリアエンディングと借金未返済エンディング(条件満たせば最終日に複数エンディング選択可能、セーブロードでやり直すだけ)でクリア。その後に他エンディングを目指して……とするだけで、経営面で困らずに完全攻略が可能だろう。そもそも、恩恵なしで借金返済及びミラトゥルーエンドは無理な気が。
 シーンスキップ搭載で1周にそこまで時間がかからないのが有り難い。

 私のようなシミュレーション苦手なプレイヤーには有り難いが、「経営ものだと!? そういうのが好きなんだよ」とつられてしまうと拍子抜けだと。


まとめ

 オススメ度★★★★★★★★★★
 プレイ時間は9時間ほど
。2キャラルートとDLCでの追加パート他を考えれば、十分なボリュームだった。
 
 
異世界コミュニケーションと口調の変化を楽しめ、女王としての責務についても考えさせられるフィリアルート。さらに、トゥルールート後の後日談まで楽しめるDLC付。
 等身大のキャラクター設定で、現実でも考えられる問題を描いていてるミラルート。
 彼女と過ごす幸せだけでなく、なぜ王国と喫茶店が繋がっていたのか、驚きのエンディングから始まる怒涛の展開とストーリー面でも満足出来る。

 複数人の会話が少ないことを挙げたが、ロープラタイトルで単独ヒロインに慣れていたため、素直に受け入れられた。
 私のようにシミュレーションが苦手でも簡単に遊べるシミュレーション。ゲーム面でのやりこみが好きな人には物足りないが、攻略で詰むことはないので安心だ。
 どちらの気になる点も、遊ぶ前に「そういうものである」と理解しておけば問題ないだろう。

 本編以外とは直接関係ないが、旧作ネタが多いおかげで、過去タイトルに興味を持つことも出来る。
 惜しいことに大半が日本語未対応のsteamのみと、私のような韓国語や英語の知識がゼロの人は遊べないが……。必死にセルフ翻訳しながらのプレイも良いのかもしれない。
 現状の日本語対応のCS版は、本作と『僕の彼女は人魚姫』、『狐が僕を待っている』とその続編の『花』の4作だけ。
 だが、『SOME SOME コンビニエンスストア』がswitchにて7月末発売予定とされている。本作に近い内容で、日本語未対応だったタイトルだけに期待している私がいる。


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